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シャーロットの仮説  作者: ariya
代理の打ち合わせ

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3.

 3日後に喫茶店へ訪れて案内を受ける。

 通りがかりのブースに、前日の婚約破棄のオルガとエリオットの姿が見られた。オルガ側にいる紳士は弁護士のように思える。二人とも機嫌が悪そうに見えた。


 また騒がないで欲しいな。


 指定されたブースに入ると懐かしい香りがする。


「ちょうど来てくれた」


 シャーロットは満足気に笑った。

 ルイスに促す席の方には渋みのある緑の飲み物が入ったティーカップがみられた。

 抹茶だと気づいた。


「君が飲みたそうにしていたからいれてもらった」

「ありがとうございます」


 ルイスは椅子に腰掛けて、抹茶を口にいれた。

 久々の渋みがたまらない。

 探せば抹茶を買えるお店があるかもしれない。


「配慮してくださりありがとうございます」

「なに、私も抹茶が飲みたくなりついでさ」


 彼女が飲んでいる飲み物は抹茶だが、クリームがふんだんに乗せられていた。

 抹茶キャラメルラキアートという名前でかなり甘そうだ。


「小説の方を読ませていただきました」


 ルイスは持ち帰った原稿とノートを取り出した。


「気になる点は、今回の容疑者のソフィアの言葉が少し古い言葉遣いのような気がします。この年頃の女性が使うには難しいかと」

「……それもそうだな。帰って修正しよう」


 シャーロットは頷いた。


 他にもいくつか気になる点をあげて、半分は作家なりのこだわりがあるようなので修正は不要という判断になった。


「修正ができあがればすぐに会社に郵送しておくよ」

「よろしくお願いします」


 ルイスはぺこと頭を下げた。

 このままお開きのつもりだが、シャーロットのことが気になる。


「ひとつ聞いてもいいですか?」

「なんなりと」


 質問を口にしようとすると別のブース席から騒がしい声が響いた。


 例の婚約破棄グループだ。


 書類つくりに難航しているようだ。


「待ちなさい! エリオットさん」


 オルガが立ち上がり叫ぶ。


「少しトイレだよ。逃げたりはしない」


 エリオットはぶっきらぼうにいい、すたすたと出て行った。


 まわりの客はひそひそと話し始める。

 オルガは頭を抱えて椅子に座り直した。


「それで」


 シャーロットはルイスの質問が何か気にしていた。


「いえ、シャーロットさんはアスクレピオン医学校の女医さん第一号ですよね」


 古い新聞を探しているうちに彼女の名前を見つけた。

 アスクレピオン医学校で、女子を受け入れたはじめての学生の一人と。その名を連ねていた。


「アスクレピオン医学校を卒業したが、女医第一号ではないぞ」


 正確には5人目であり、前年に4人の女医が輩出されている。


「それでもすごいですよ。10代で女医になるなんて」


 時々、天才はいるもので10代で飛び級、大学へ入り研究員になった人間もいる。シャーロットもその類だろう。


 そういうとシャーロットは複雑な表情を浮かべた。


「私は君とは2つしか年が違わないつもりだが」


 今、ルイスは25歳である。

 と、するとシャーロットは23歳か。


 少しばかり驚いた。

 いや、待てよ。新聞の年月は5年前だ。

 なら、女医になったのは18歳だから10代で女医になったはず。


「もしかして27歳?」


 そういうとシャーロットはこくりと頷いた。

 自分より年下と思っていたのにまさかの年上で驚愕する。


「あれ、でも記事には10代」

「あれは私の外見を見て勝手に書かれたものだ。後日文句を言って訂正記事を載せてもらった」


 シャーロットは不機嫌になった。


「それはすみません」


 勝手に解釈してしまい。


「別にルイスさんを怒っている訳じゃない。自分がそんなに年齢相応に見られるだけの雰囲気をまとっていないのだろう。色々試してはいるがうまくいかないものだ」


 複雑な表情を浮かべた。


「シャーロット先生」

「先生は不要だ。私は普段は医者として働いていない。先輩同期女医ほどうまく立ち回れず人間関係を作ることが下手で今は父の研究を手伝ったり大学の講義の助手をして、あとは執筆……の手伝いをしていることくらいの女だ」


 医者としては本格的に働いていないという。


「私は医者としてはあまりに未熟、それどころか向いていなかった」


 それでも大したものであるのだが、なんと言えばいいのかわからずルイスは押し黙った。


「ところで短編小説もついでに見て欲しいと持たされたのだが渡してもいいかな」


 シャーロットは新しい封筒を取り出した。


「あ、いいですよ。ここで読んでもいいですか?」


 さすがに前日の推理小説に比べれば枚数は少ないためすぐに読み終われそうだ。


「あら、エリオット様は?」


 明るい令嬢の声が聞こえてきた。思わず例のブースの方をみると可憐なケリー令嬢がきょろきょろとあたりを見渡した。


「トイレに行ったっきり帰ってこないのよ。逃げたのじゃないかしら」


 オルガは苛立っていた。


「ええ、せっかく舞台を見に行く約束だったのにぃ」


 ケリー令嬢の無邪気な声にオルガはぴきっと青筋をたてた。まぁまぁと弁護士がなだめる。


「弁護士さまですよね。私はアイラ・ケリーといいます。お願いです。婚約解消で色々と融通をきかせてください。違約金を払う余裕がなくてぇ」


 ちらちらと色目を使うケリー令嬢にオルガはばんとテーブルを叩いた。


「先生、トイレの様子をみにいっていただけませんか?」


 青筋たったオルガが笑顔でいう。エリオットが本当に逃げたか確認してきて欲しいとのことで弁護士はこくりと頷いた。


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