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シャーロットの仮説  作者: ariya
代理の打ち合わせ

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10/27

9.


 舞台は現実へ戻される。


 シャーロットの仮説を聞いてアイラは不機嫌な表情を浮かべて叫んだ。


「随分想像力豊かな先生だこと! 証拠がその水筒なの? エリオット様が飲んだという確証はあるのかしら」


「水筒についた唾液成分を検死室に送りつけて確認してもらった。エリオット・ルースと同じ分泌型のB型の血液と判定された」


 ここ数十年で、人間の体は一気に解析可能なものへと変化した。血液型が提唱されて、血痕や唾液から調べることができるようになった。

 唾液に関してはまだまだ困難な場合があるが、分泌型の人間であれば唾液から血液型を調べることが可能である。


 先程検死室から警官が検査結果を持ってきてくれた。

 これに時間がかかってしまったが、有益なデータがとれた。


「血液型? ああ、でもあれって同じ型の人はたくさんいるでしょう?」


 それだけでエリオットの唾液と判断するには弱いとアイラは批判した。

 もちろんシャーロットは他の解析にも着手を開始している。


「後は時間がかかるが、指紋検証だな。この水筒に付着した指紋を照合させる。エリオットの指紋をまず確認する。もしかすると犯人の指紋もあるかもしれない」


 だからここにいる全員の指紋をとりたいと言ったのだ。


「ここにいる全員?」


 シェトラン警部はちらと聞く。

 指紋照合は、顕微鏡で細かく確認する必要がある。

 膨大な作業だ。


「仕方ないだろう」


 シャーロットの言葉にシェトラン警部は深く溜息をついた。監察官が文句を言ってきそうだと頭を抱えた。


「あと、もう一度私が持ち物チェックをさせてもらう」


 シャーロットの言葉にシェトラン警部は止めた。


「すでに持ち物の確認はすんでいる」

「まだ調べてないところがあるだろう。下着とか」


 その言葉に周りの警官は困った表情で視線を逸らした。


 実は、1年前にアシュラム市警はマスコミから叩かれた。容疑者の女性が身体検査を屈辱と訴えて自殺をしたのだ。家族は徹底抗議をして、市民は味方した。それから一部の警官らは女性に対する身体検査には消極的だった。


 アイラはそれを逆手にとり、警官を巧みに操り身体検査をすり抜けた。


 まだ持っている可能性がある。


 コーヒーにごまかしとしていれた毒の容器が。


 捨てられた可能性があるが、あの土壇場で彼女が警官が捜索を外す場所に捨てられたとは思いにくい。


「もちろん、何もなければ私を訴えてくれ。1人の令嬢を辱めた最悪な法医学者として」


 シャーロットの言葉は迷いなくまっすぐだった。

 ルイスは迷いながらも前に出る。

 警官ではないシャーロットがそこまでの責任を背負い事件解明をしようとするのはよくないと思った。


「あーあ、もういいや。面倒くさい」


 大きく諦めの声が響いた。

 そこには可憐な令嬢も、恋人を失った可哀想な令嬢も、犯人に仕立てられて泣く令嬢もいなかった。


 ひどく冷たい人形のように感情が見えない少女がゆっくりと胸元を探った。コルセットあたりまで手を伸ばし、そこから見える素肌に周りが慌てた。


 カラン


 少女は取り出したものを床に落とした。小さな液状薬をいれる容器だ。目薬に利用されている一般的な容疑だった。


「ケリー令嬢?」


 オルガは動揺した。

 今までとは雰囲気が違う彼女に。


「そうよ。私が殺したのよ。その瓶にも毒が入っていたからお調べになって」


 遠慮はいらないとアイラは笑った。

 10代とは思えない酷く歪んだ笑顔である。


「どうして? あなたが」


 オルガの疑問にアイラは答えた。


「答えは簡単よ。復讐よ、復讐! 私はエリオット・ルースに殺されたラリサ・コメットの妹よ!」


 その名前を聞いてオルガは頬を引き攣った。


「誰ですか?」


 シェトラン警部は首を傾げた。オルガは震えた声で答えた。


「私がエリオットと婚約する際にもめた女性です。妊娠したと騒いで、エリオットが話をつけたと言っていましたが……まさか、殺したなんて」


 アイラは高い声で笑った。


「おめでたい頭ね。さすがお嬢様だわ」


 明らかにオルガを馬鹿にした口調であるが、オルガは怒る気にはなれなかった。


「あの男が穏便に話するわけないじゃない。あいつは姉さんに堕胎薬を飲ませたのよ。姉さんは大量の出血をして病院へ担ぎ込まれたけど死んだわ!」


「苗字が違うのは?」


 シェトラン警部は次の疑問を出した。

 やけになっているアイラは気前よく答えていく。


「ケリーは母の旧姓よ。姉さんが死んで両親は離婚したの。私は病がちな母さんが心配でついていった。母さんはいないわ。保険金だけ手元に残った。だから私、復讐に使うことにしたの」


 アイラは今までの長い道のりを思い出した。


 まずは情報収集をした。

 エリオット・ルースの身辺調査をして、同時に彼が好みの女を徹底的に調べた。分析に分析を兼ねてお芝居の研究をしてエリオットの理想の女を作り上げた。

 効果は絶大で、エリオットはすんなりとアイラに靡いた。

 今までギリギリ繋いでいたオルガとの婚約も捨ててしまうほどに。


 アイラは笑いが止まらなかった。

 オルガとの婚約の為にラリサを捨てておいて、アイラの為にオルガを捨てる。

 しかも、少し調べればアイラがラリサの妹だと気づけただろうに。


 この男にとって姉はその程度の存在だったのだ。

 何と滑稽なことだろう。


 アイラは淡々と演じ続けてエリオットへの復讐の機会を狙った。

 

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