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第21話 【リリー視点】なんだか最近攻略対象たちがそっけないです



「リリー、また間違えてるぞ。『強靭(きょうじん)』の花言葉を持つ花はミツマタだ。リリーが持ってるのは蝋梅ろうばいだろ」

「あっ、そうでした。ごめんなさい」


 呆れたようにリリーにたしなめてくるレイスに、リリーはついうっかりといった様子で謝る。

 ここは花継ぎの乙女の任務で来た町外れの森で、リリーたちは森で発生した瘴気を浄化しにきたのだ。

 攻略対象の彼らは瘴気にあたった魔物を退治しなければならず、その彼らにバフをかけるのもリリーの仕事だった。

 レイスがリリーを叱責したのは、リリーがレイスにバフをかけようとした花魔法が間違っていたからだった。


 リリーは、2年以上も花継ぎの乙女として勤めているにもかかわらず、いまだに花魔法についての知識がおぼつかない。

 それは、これまでも先ほどのように、自分が間違えても攻略対象の誰かが正しい効果のバフを教えてくれたからだ。

 自分が正しく覚えなくても、攻略対象の誰かが教えてくれる――。

 そんな怠慢から、リリーはいまだにまともに花魔法の効果を覚えていなかった。


「……あのなリリー。リリーのそういうおっちょこちょいなところも愛嬌があって可愛くはあると思うが、さすがに命のかかっている場所で間違い続けるのはどうかと思うぞ」

「…………、ごめんなさい、ギーク…………」


 ギークがレイスの言葉に追い討ちをかけるように真っ当な指摘をしてくるのに、リリーは二の句も告げずにただ謝ることしかできない。

 いつもならば、「仕方ないな、リリーは」と笑ってすませてくれる攻略対象たちが、なんだか今日は違った。


(……なんなのよ。今までだったら、『リリーはいてくれるだけで意味があるからな』とか言って笑って許してくれてたのに)


 今日の任務の同行者はレイスとギークだけで、ティエルは留守番だ。

 ティエルがいたら、少しは取りなして場を和ませてくれたかもしれない、と歯噛みしながら、しかしリリーはそれとは別に危機感を感じていた。


(……最近、攻略対象たちがみんな、なんだかそっけないのよね)


 今までの2年間、ヒロイン補正なのか多少リリーがミスをしても可愛く甘えて好意を示せば許してもらえてきたのだ。

 それがなぜか――この数週間でがらりと様変わりしてしまった。


(今までは、レイスもギークもちょっとむっとしそうなことがあっても、甘えてくっついたらとろんとした顔になってすぐに許してくれたのに)


 リリーの読みはおおよそあたっていた。

 これまでは彼女に付与されたヒロイン補正が彼らの好感度を下げることなく上げ続けていたのだが、それが今、無くなろうとしているのだ。


 心の中で、リリーはちっ、と舌打ちをする。


(……仕方ない。面倒だけど、好感度をチェックしに行かないと)


 驚くべきことに、この世界では攻略対象の好感度を見ることができた。

【花継ぎの正殿】と呼ばれる場所に行き、そこにある【花継ぎの石板】に手で触れると、各攻略対象の現在の好感度ステータスが見られるようになっているのだ。

 ちなみにこれは、原作ゲームの仕様と同じである。


 半年ほど前に現在の攻略対象の好感度がカンストしたために最近では見ることがなくなっていたが、今の状況を鑑みると再確認しておいたほうがいいとリリーは思った。

 

 任務を終えたリリーは、レイスとギークと別れて花継ぎの正殿へと足を向ける。

 いつもだったら、リリーとの別れをしつこく惜しむ攻略対象者たちが、今日はやたらとあっさりしていることも、リリーの心を余計に焦らせた。


 そうして――、花継ぎの正殿に入り、その最奥にある花継ぎの石板を見た時。

 リリーの胸は、とたんに不安でいっぱいになった。


 石板には、当代の乙女の名前が記されるようになっている。

 これは、人の手で書かれるのではなく、神によって書かれるものだ。

 この石板に名前を書かれた人物が、花継ぎの乙女の神託を受けた人間ということにあたる。

 なので、今はそこにリリーの名前が記されている、のだが――。


(……なんだか、文字が薄くなってない?)


 リリーが見た石板に書かれた名前は、なんだか以前よりも薄くなっているような気がした。


「……あのっ、誰かこの石板を磨きすぎて字が薄くなったとかありませんか?」

「え……? いえ……」


 リリーは正殿にいる神官にそう尋ねてみたが、誰も「そうだ」と言ってくれる者はいなかった。

 そもそも、石板に書かれた文字は人の手によって書かれたものではないのだ。

 多少磨いた程度で薄くなることなどあり得ない。

 それをわかっている神官たちは、口には出さなかったけれど『何を言っているんだろうこの乙女は?』という思いを胸に抱えた。


 神官たちからの答えを聞いたリリーは、釈然としない表情のまま石板に手を当てる。


 ヴン……、とやたら機械的な音を立てながら、リリーの目の前にゲームのステータス画面のようなものが浮かび上がる。


(毎度毎度思うけど。このステータス画面、ザ・中世ラブロマンスみたいなこの世界に急に似つかわしくなくなるのよね……)


 しかも、ステータス画面はタッチパネル式で、リリーはぴっぴっと目当ての項目まで画面遷移する。


 この画面は、リリー以外の人間に見えることはない。

 なので周囲からすると、リリーが何もない石板の上の宙空に指を滑らせているようにしか見えない。


 そうして、いくつかの画面を遷移して、リリーが目的の項目にたどり着いた時。


(えっ……)


 そこに記されていたデータを見て、リリーは思わず声に出さずに驚愕した。



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