第2話「夢と魔法」③
「奏……ルームサービス来たから、起きれそうか?」
「……」
大好きなセナ君の声は聞こえる。
セナ君といるといつもこう……いつ眠ったのかも曖昧なほど、幸せの中で溺れるように眠ってしまう。
「ほんっと……このお姫様はしょうがねーな」
そんな言葉が聞こえてきたかと思うと、身体がふわりと持ち上がる。
「わっ!ちょっ……セナ君!?」
「お、起きたな」
軽々と抱きかかえられるまま、椅子に降ろされると、セナ君が膝をつくように座る。
窓際のテーブルには、頼んでくれたルームサービスが並んでいた。
テーブルからヨーグルトを取り、馴れた手つきでスプーンにすくって口元に運ばれる。
あれ……私、普通に食べちゃってる。
「あ……あの……自分で食べれるよ……」
「ん?お姫様はお姫様らしく、甘やかされてろよ」
もう……食事すらお世話されるとか……
本当にお姫様って勘違いしてしまいそうになる。
なんなら親鳥にお世話される雛鳥の気分。
甘やかし飛び越えて介護じゃん……
「ユーリとマオは、レストランのモーニングビュッフェ行ってるってよ」
「え、いいな!」
「オレは一応起こしたけどな」
「……ごめんなさい」
確かに寝起きは良くないけど……一緒にいる時、起きれない原因のほとんどはセナ君なのに。
「また今度、な」
「うん」
次がいつかはわからないけど、考えてくれていることが嬉しい。
それだけで来た甲斐があったと思えた。
制服に着替えると、夢の国にいたのが嘘みたい。
まるで魔法が解けるように、一気に現実へ引き戻される。
フロントに向かうと、すでに準備万端の真央君と遊里君。
「おはよう〜」
「おはよーさん」
そういえば昨晩のエレベーターで別れてから、何も説明してないけど……
普段通りの二人を見て、少し安堵しながらチェックアウト。
セナ君と一緒に駐車場へ向かい、ドアを開けてもらって乗り込む。
ゆっくりと車が動き出した……途端。
「ねえ!ボクら何も聞いてないんだけど!?」
「あの感じ、昨日からじゃないっしょ!?!?」
「……朝からうるせーなー……」
突然の質問攻めで固まってしまう。
それでも二人の勢いは止まる気配はなく、質問はどんどん飛んでくる。
「え〜〜ボクらカモフラに使っといて!!」
「いつからなん?いつからなん?」
「昨年のクリスマスから」
「私の誕生日から」
「……」
「……」
思わず運転席のセナ君を見つめる。
「えー!?そんな8ヶ月も差あるとかあるん!?」
「その認識の差が、いっそセナ君っぽ〜〜い」
「いや、あれは絶対付き合ってた」
「えぇっ!?」
あんなに……クリスマスから誕生日まで私が悩んでたの、知ってるのに!!
「絶対、誕生日からだもん」
そう言って窓の外へ顔を向ける。
「おい、お前らのせいで、うちのお姫様が拗ねてんだけど。どうしてくれんだよ」
「ってか僕らナニ見せられてるん?」
「そーいうプレイは2人きりの時にしてよねーー」
高速道路を走る車からお城が遠ざかり、徐々に日常が近付いてくる。
あんなに楽しかったのが、嘘みたいで、本当に夢の国にいたのかもしれない。
「学校前で降ろせばいい?」
「だ、ダメ!目立っちゃうよ!!」
「そっか」
学校前まで!?この車で!?
先に降りたセナ君が、助手席のドアを開けてくれる。
わざわざ降りなくていいのに……
嬉しいけど、もう少し自覚を持ってほしい。
「……ありがとう」
「ん、気をつけてな」
もうすぐテスト期間が始まる。次に会えるのはしばらく後。
そう思うと、名残惜しくて、顔を見られない。
「いってらっしゃいのチューはお預けな」
「!?ちょっ……」
「また連絡するな」
突然耳元で囁かれ、一気に体温が上がる。
セナ君は私の言葉を聞かず、車に戻ると中から遊里君と真央君の茶化す声が飛んでくる。
「ひゃーー彼氏ムーブエグッ」
「もうイチャイチャ警察来ちゃうよね」
そんな声が聞こえる中、車がゆっくり走り出すのを名残惜しくいつまでも見つめてしまった。
Instagramには、遊里君がディズニーでの写真をアップしていて、ネットニュースにまでなっていた。
どの写真も楽しそうで……この写真を見ているファンも楽しそうで。
それを見るだけで、私まで楽しくなる。
いつもの日常に戻り、学校や課題、テスト期間が重なる。
アルバムのリリースも近づき、セナ君とはLINEと電話だけの毎日。
2週間以上会えない日々が続いてしまい、恋しさばかり募らせてしまう……
※本作はシリーズ作品です。
1巻から通して読んでいただくことで、登場人物たちの心情や関係性の変化がより伝わる構成になっています。
よろしければ、シリーズ一覧もあわせてご覧ください。
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