第2話「夢と魔法」②
「……もう撮った?まだ?」
セナ君が眉をひくつかせながらカメラのレンズをちらっと見る。
「まだ!あと3枚!」
「3枚って言って3枚で終わった試しないじゃん……」
後ろでやり取りを聞きながら、少しだけ距離を取って見守る。
離れているのに、3人の声ははっきり届いてきて、思わず笑ってしまう。
パークの音楽に乗って、夢の国のざわめきに紛れて……
『いつもの3人』がここにいることが、なんだか不思議で、ちょっと感動的だった。
……それにしても、やっぱりこの3人のビジュは強すぎる。
数歩下がって、スマホでもう一枚、そっと撮る。
遊里君のカメラの中には、どんなふうに映っているんだろう。
私の目に焼き付いたこの光景と、同じくらい綺麗だといいな……
「お腹いっぱ~~い」
レストランで食事を終え、ホテルの部屋に向かうためエレベーターへ向かう。
「本当に楽しかった。遊里君も、服とメイクありがとう」
「セナ君に出してもらったチケットと、ご飯とホテル代は働いたでしょ~?」
「あー……まぁ、ギリな」
「あ、6階で降りな」
遊里君と真央君に続いて降りようとした瞬間、セナ君に抱きすくめられるような体勢になり、『閉』のボタンが押される。
「オレらは8階な」
「え?」
「ユーリ、マオ、今日はありがとな。また明日」
「えーーーずるーーーい!!」
「……え!?そういうことなん!?」
さりげなく腰に手を添えられたまま、流されるように部屋へ案内される。
エレベーターを降りてすぐの角を曲がった先。
セナ君が手慣れた様子でカードキーをかざすと、電子音とともに扉が開く。
中へ入ると、ほのかに木とリネンが混ざったような香り。
『ガチャン』とドアが閉まる重い音と共に、ホテル特有の静けさが広がっていた。
「わ……すごい、綺麗な部屋……」
自然と足が窓際に吸い寄せられる。
奥にはふたり掛けのソファとローテーブル。
壁際には大きなテレビとミニバー。
ベッドサイドには柔らかく照らす間接照明。
そのすべてが妙に静かで、大人っぽくて。
自分にはまだ少し早い気がして、落ち着かない。
窓から見える外の景色は、お城がライトアップされていて、さっきまでの楽しかった思い出がすぐに蘇ってくる。
「……凄い!ベッドも2台あって広い……」
「2台あっても、どうせ片方しか使わないのにな」
やっとの思いで口にすると、セナ君は悪びれもせず、口角を少しだけ上げた。
まるで『当たり前だろ』と言うみたいに。
片方のベッドに荷物を置き、もう片方に腰を下ろす。
「奏、おいで」
呼ばれるまま近づくと、ぐいっと抱き寄せられる。
「お前さー、この格好なんなの?」
「あ……遊里君が……私がバレないようにって考えてくれて」
やっぱり変かな……でも、気兼ねなく楽しめたし、結構気に入ってるんだけど。
「もうさ……こんな格好してても可愛く見えてくるとか……
オレが変な性癖に目覚めたらどーしてくれんの?」
「えぇ!?」
性癖って……え、私が男の子でもいいってこと……?
それでも好きでいてくれるの?
「うーん……そっか……その時は……責任取ろうか……な?」
言いかけた瞬間、ベッドに押し倒される。
窓から入ってくるライトアップの光に照らされて、セナ君のキレイな輪郭が浮かび上がる。
さっきまでずっと少し距離を取っていたせいか、いつもよりセナ君の香水の匂いを意識してしまう。
「お前……マジで煽るの上手いのな」
「煽ってなんか……」
あ……いつも私だけに向ける目だ……
それに気が付くだけで、手が震えるくらい心臓が高鳴るのがわかる。
「……責任……取れよな」
頬に添えられた手が、とても優しくて。
愛しくて、今日ずっと触れられなかったせいか、いつもより緊張してしまう。
緊張しちゃうのに、早く触れて欲しくて仕方がなくなる。
「……いいよ……」
これ以外の返事は考えられなかった。
こっちこそ、こんなに好きになってしまった責任取ってほしいんだけど……
少しづつ手が降りるのと同時に、今日の思い出をなぞる様にセナ君の唇が降りてくる。
さっきよりも香水の匂いを強く感じながら、お互いの匂いが重なるように身を委ねる。
※本作はシリーズ作品です。
1巻から通して読んでいただくことで、登場人物たちの心情や関係性の変化がより伝わる構成になっています。
よろしければ、シリーズ一覧もあわせてご覧ください。
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