第2話「夢と魔法」①
「……奏」
車を降りると、ふいにセナ君がニット帽の上をぽん、と軽く叩いた。
「顔、こわばってる。大丈夫だって」
「え、そんなに……?」
「うん。まぁでも、どんな顔しててもお前は可愛いけどな」
「ちょ、待っ……!!」
後ろから、遊里君と真央君の「きゃーーーーー!!!」という盛大な茶化しが飛んでくる。
「なになに?今の録音してないの!?」
「やば、奏ちゃん今すっごい真っ赤になってたー!!」
「うるせぇ後部座席。全員置いてくぞ」
セナ君の声は冷静なのに、口元はとても楽しそう。
駐車場を出ると至る所にキャラクターのモチーフが目に入る。
はしゃぎたい気持ちと、緊張から胸がドキドキしてしまう。
ゲートの向こうに足を踏み入れた瞬間……
ふわっと甘いキャラメルの匂いと、賑やかな音楽が耳を包み込む。
セナ君、遊里君、真央君。
3人が並んでアーケードを抜け、視界がパッと開けた先……
シンデレラ城を背景に立っている姿は、まるで雑誌の1ページみたいだった。
キャストさんがハロウィン仕様のコスチュームで挨拶していて、人混みでわちゃわちゃしているはずなのに……
3人の立ち姿だけが、不自然なほど際立って見えた。
え……なにこれ、やば……
「奏ー?どした?」
振り返った真央君が声をかけてきて、ハッとする。
「あ、あの!!写真撮ってもいいかな??」
慌ててスマホを取り出し、カメラを起動する。
ほんの数秒前まで普通に喋っていた3人が、すっと姿勢を整える。
セナ君はポケットに手を入れたまま、いつものちょっと斜に構えた余裕そうな表情。
遊里君は少し顎を引いて、目元だけ笑っていて。
真央君はいつも通り明るいけど、カメラを向けると自然に表情が引き締まる。
ちょ、ちょっと待って……このビジュでディズニーって……
服装は普通の服なのに……三人とも顔面が凄くて、リアルの王子様に見えてしまう。
息を飲んで、シャッターを切る。
「……凄い。ビジュと世界観が合いすぎてる……」
画面に映った3人は、本当に『現実じゃない』みたいだった。
パークの雰囲気とも、背景の城とも、ちゃんと調和している。
だけど、その場に馴染みすぎない『スター感』が滲んでいた。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「だって!3人ともカッコよくて可愛くて!!」
興奮気味に話す私のスマホを取り上げてカメラのシャッターを切る。
「いーから、お前も写れよ」
声を潜めるために、耳元で囁く声にすらドキドキしてしまう。
写真には、見慣れない自分の姿がセナ君に寄り添っている。
それすらも、すごく楽しく思えた。
ランドに入ってから、まだそんなに時間は経っていないのに……
気づけばカメラロールには、写真がどんどん増える。
パレードに見とれている後ろ姿。
チュロスを持ってはしゃぐ真央君。
マスク越しでもわかるほど、目元が笑っているセナ君。
その横で、やたらとソワソワし始めた人がひとり。
「ねぇ、そろそろインスタ用の写真撮っとかないとボク忘れちゃう!」
遊里君がバッグから小さめのカメラを取り出しながら宣言するとすぐに撮影会が始まる。
「は?今から?もう何枚か撮ったやん」
「それは『オフショ』であって、『載せショ』じゃないの!」
「えぇ……なにそれ……」
真央君がチュロスをもぐもぐしながら引き気味に答えるけど、遊里君の勢いは止まらない。
「このへん逆光いい感じ〜♡ 背景ちょっとズラせばシンデレラ城も入る〜!セナ君、半歩右!」
「んだよ……オレ、オフなんだけど……」
そう言いながらも、素直に動いてくれるセナ君。
スッと動くだけの姿ですら、サマになっていて。
マスクとサングラスを外す仕草にすら見とれてしまう。
「真央君、あんまり前出すぎると身長差でセナ君が小さく見えちゃう!もっかいポジション!」
「えぇぇ!?セナ君の圧に負けて引いただけなのに!」
「うるさい、自然体で立って!はい、こっち向いて〜!顔作らなくていいよ!作らないでね!?」
……それ、どっちなんだろう。
※本作はシリーズ作品です。
1巻から通して読んでいただくことで、登場人物たちの心情や関係性の変化がより伝わる構成になっています。
よろしければ、シリーズ一覧もあわせてご覧ください。
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