第6話「誕生日と卒業式」②
動画の端に、小さな頃のセナ君の写真。
……ビスクドール?ってくらい可愛い。
こんなに可愛い男の子に、あのお母さんはあんな酷い言葉をずっと投げつけていたなんて。
「私もこの写真ほしいな」
「……勘弁して……」
動画が終わると、セナ君がスマホを取り返そうと手を伸ばしてくる。
「……もう一回観たい」
「いや、やめとけって」
「やだ。笑ってるセナ君、好きだから」
「じゃ、奏ちゃんの小学生の時の写真と交換な」
え!?私の写真を渡すだけで、この写真もらえるなんて!?
「いいよ!?嬉しい!!!家に帰ったら探して来る!!」
「マジか……」
少し照れたように笑って、肩に頭を預けてくる。
「じゃ……とりあえず今の奏ちゃん、抱きしめていい?」
静かに囁かれたその言葉のあと、セナ君の手が、そっと私の腰に回される。
肩に頬を寄せていた彼が、ゆっくりと私を押し倒すようにベッドへと倒れ込んできた。
お互いの体温が重なるたび、胸の鼓動が早くなるのがわかる。
「……奏、好きだ」
耳元でささやかれる声が熱っぽくて、それだけで、身体が溶けそうになる。
さっきも、あんなにたくさん嬉しい言葉をもらいながら、たくさん抱き締めてもらったのに。
唇が重なると、最初はそっと、次第に深く……
指先が、頬から首筋へと辿るように滑と、囁くような吐息と一緒に、セナ君の指がシャツの裾に触れた。
「……やば、我慢できなくなる……」
「っ……」
さっきの熱を思い出すように、びくりと身体が反応すると、セナ君の手が、すぐに止まるけど、雨のように柔らかいキスが頬、額、首筋、胸元……に振り続ける。
「……でも、ここまでは、いい?」
苦しげに微笑んだセナ君の横顔が、あまりにも愛しくて。
そっと指を伸ばして彼の柔らかい髪に触れる。
「……全部、終わってからな。それまで、おあずけ」
本当は止めないでほしい……何度でも欲しくなるのに。
私を気遣ってくれる気持ちもやっぱり嬉しくなってしまう。
「……わかった。楽しみにしてる」
私の回答が予想外だったみたいに、セナ君は目を見開き、最後にもう一度だけ名残惜しそうに唇を重ねた。
三年間通った校舎を背に、胸のコサージュを撫でる。
最後のホームルームを終えた体育館は、入学式の日よりも広く見えた。
卒業証書を受け取ると、拍手が胸の奥まで響く。
校庭は記念写真を撮る生徒でいっぱい。
「まーじで、今日で卒業とか実感湧かない!」
「ホント、まだ本番これからなんだけど……」
「え~打ち上げしないの~?」
「推薦組めーーー!」
「やだ、写真撮ろ!ほら真ん中行って!」
「ちょっと!リボン曲がってるよ~」
笑い声とカメラのシャッター音が重なる中、進路が決まっている子たちは完全にお祭りモード。
一方で、まだ試験が残っている私は、その輪に加わりながらも心の奥は静かだった。
写真を撮る笑顔の下で、次の本番に向けた緊張がずっと脈打っている。
笑い合いながら校門を出ると、ふいに名前を呼ばれる方を向く
「奏!」
タクシーから降りてくるスーツ姿。
柔らかい金髪に赤メッシュ……
こんなに格好良くスーツ着る人、他にいるのかな……
私に向かって歩く姿が、まるでどこかのステージのランウェイに見えてくる……
こんな姿見たら、私じゃなくても誰だって恋に落ちちゃうよ。
※本作はシリーズ作品です。
1巻から通して読んでいただくことで、登場人物たちの心情や関係性の変化がより伝わる構成になっています。
よろしければ、シリーズ一覧もあわせてご覧ください。
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