第5話「母と息子」①
「この後、ロケバスで生配信の動画を撮ったら、各自の自宅まで送迎するから、バスに移動するように」
八神さんに促され、ロケバスに向かう。
遊里君以外のメンバーは後部座席に座り、配信が始まる。
井上信:「はい!スターライトパレードの……」
全員:「あけましておめでとうございまーす!!」
井上信:「2027年もよろしくお願いしまーす!」
椿翔平:「今はですね〜、初詣の帰りのロケバスでございます」
御影怜央:「……で、目の前には遊里がいるんですけど」
天野蓮:「そう!いるんだけど映れないんだよね」
椿翔平:「まだ未成年だからねー。午前5時前はカメラNGなんすよ」
柊真央:「ちゃんといます!安心して!」
椿翔平:「この辺にね、めっちゃ手振ってる」
御影怜央:「声だけ入れる?」
豊田遊里:(あけおめーーー!!)
全員:「おめでとう!」
椿翔平:「あ、外でも先輩とかがライブ配信してる声聞こえた?」
天野蓮:「え、それ突撃するってこと?」
御影怜央:「いや、ダメでしょ」
諏訪セナ:「どこのならイケる?」
柊真央:「Aegis兄さんならイケるんちゃう?」
井上信:「お願いだからやめてっ!」
諏訪セナ:「マオ、シンを困らすなよ」
柊真央:「僕のせいなん!?」
井上信:「とりあえず年明け一発目のあけおめでした!」
全員:「今年も!よろしくお願いしまーす!」
「もー!早生まれだから来年も映れないし!」
配信が終わるなり、そう言いながら後部座席に移動する遊里君。
みんなのおしゃべりをBGMに、ゆっくりバスが発車する。
私はそのまま友達からのLINEに返事をしたり……さっきの配信のコメントを読んだり……
「セナ、着いたぞ」
「そんじゃ、お先ー」
私、どこで降りよう……
遊里君と真央君にはセナ君とのことはバレちゃってるけど、ここで一緒に降りたら、怜央さんにも他のメンバーにもバレちゃう……
「奏、ほら」
そんな私の考えなんて気にする様子もなく、セナ君は手を伸ばしてくる。
その手を取らないなんて選択肢は、私にはもちろんなくて。
手を取るだけで胸に温かい気持ちが広がる。
セナ君が笑ってくれるだけで、私も幸せになる。
目が合うだけで、何度でも恋してしまう。
みんなの顔を見れずに、その手を取り、バスを降りる。
「セナ、午後に迎えにくるからな。くれぐれも軽率な行動はするなよ」
「はーい」
恥ずかしい。間違いなくみんなに気が付かれてるし、八神さんに釘まで刺されるなんて……
次に会った時、どんな顔をしたらいいんだろう。
セナ君に手を握られたまま、部屋に戻った瞬間、暖かい空気が頬を包み、ほっと息が漏れた。
「初詣、誘ってくれてありがとう」
「ん……着物、似合ってる」
「セナ君にそう言ってもらえるのが、一番嬉しい」
繋いだ手が離れたそばから、コートも脱がないうちに、ぎゅっと強く抱きしめられる。
「……二年前の初詣の時も、こうしたいと思ってた」
「え?そうなの?」
「……ちっとは自覚しろよ」
「……はい」
そういうセナ君だって、いつだって格好良くて、私はいつだってドキドキしてしちゃう。
セナ君こそ、私をいつもドキドキさえてるって自覚してほしい。
「ね、着物……脱がせていい?」
「手伝ってくれるの?実は1人で脱ぐの大変なんだよね」
「……じゃあ、手伝わせて」
髪飾りを外し、ひとつひとつ装飾を解いていく。
「……パズルみてぇだな」
「確かに。何本あるのかわからないかも」
「でも、プレゼントのリボン解いてるみてぇ」
「ふふっ……プレゼント?中身は私なのに?」
「……それ、最高のプレゼントじゃん」
帯が外れ、ふっと体が軽くなる。
「奏……可愛い」
あ……この声色。艶を帯びた響きに心臓が跳ねる。
見上げた瞬間、髪、瞼、頬、唇にキス。
耳を甘噛みされるたびに、喉の奥から声がでそうになる。
「……っ……!」
「ピアスも、ネックレスも……指輪も、全部似合ってる」
肩に手が滑り、着物がするりと床に落ちると、薄い桃色の肌襦袢だけの姿にされる。
「寝てなくて疲れてるだろ。……でも、いい?」
右手を取り、指輪にキス。
もう、そんなの……本当にズルい。私が拒否しないって知ってるくせに。
小さく頷くと、セナ君は満足そうに寝室へと手を引いた。
ドアが閉まった瞬間、熱を増したキスが落とされ、その熱に強くしがみつくしかなかった。
※本作はシリーズ作品です。
1巻から通して読んでいただくことで、登場人物たちの心情や関係性の変化がより伝わる構成になっています。
よろしければ、シリーズ一覧もあわせてご覧ください。
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