第4話「クリスマスと初詣」④
「セナ君!明けましておめでとうございます」
「ん、おめでとう」
お正月の空気に触れ、少し冷えた耳にそっと手が触れる。
「着物、めちゃくちゃ綺麗」
耳元で囁くように言われ、寒いのに一気に体温が上がる気がした。
「おいで」
差し伸べられた手を取り、参拝に向かう。
貸切と聞いていたけれど……さっきまでカウコンに参加していたアイドルが勢揃いしている。
右を向いても左を向いてもアイドルだらけ。
こんなイケメン神社が存在するなんて……!
「奏ーー!あけおめ!!」
「今年の着物も似合ってるね」
「なんか、久々な気ぃするな」
久々でも気さくに会話をしてくれるのが嬉しくなる。
「ありがとう。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「奏ちゃん、明けましておめでとう。これから事務所のみんな全員でメディア向けの撮影しながらの参拝だから、遊里と少し向こうで待っててくれる?」
「えー、マジかよ。奏と一緒に参拝できねーの?」
セナ君がボヤきながら参拝に向かうのを見送って、遊里君と社務所へお守りを見に行く。
「今年もカウコン、映れなくて残念だったね」
「ホント!ボクのファンが可哀想なんだけど!!」
ズラリと並ぶお守りや縁起物……
まずは『合格祈願』のお守り。今年の干支の小物も買ってしまおうか。
なんて考えていると、境内の方から大きな柏手の音が響く。
振り向くと、大勢のアイドルが参拝している姿。厳かな神社の雰囲気と相まって壮観だった。
いつかみんなの曲を和風にアレンジしてみたいかも……
雅楽を意識して、ドラムじゃなくて太鼓、琴の音や三味線を効かせて。
こんなにたくさん格好良い人がいるのに、私の目はすぐにたった1人に吸い込まれてしまう。
他のグループの人と談笑しながら階段を降りてくるセナ君。
私を見つけて、表情が変わる瞬間が大好き。
私だけに見せてくれる表情だから。
「参拝、行くぞ」
「え、私1人でも……」
「さっきのは仕事の参拝」
セナ君の後ろをそっとついて行く。
チラリと横を見ると、相変わらずのキレイな顔で、思わず参拝するのも忘れそうになる。
何も起きずに受験が終わりますように。
みんなの曲がもっとたくさんの人に聴いてもらえますように。
私の大切な人、みんなが怪我や病気をしませんように……
あと、セナ君とずっと一緒にいたいです。
年々わがままになるお願いを、神様にそっとお祈りした。
「あけおめー」
「んだよ」
G∀MEのKAIさんが話しかけてくる。
庇うように、セナ君が前に立つ。
「奏ちゃん、まだ専属になってないってきーたけど?」
「……だから何だよ……」
「俺らならとっくに専属にしてるけどねー。お前、意外と手ぇ遅いのな」
「あぁ?」
「『Éternité』だっけ?フィジカルで負けたけど、あれも俺らならもっと売ったけどねー」
セナ君をかわすように、私の方を見て続ける。
「いつでもG∀MEは奏ちゃんを受け入れるってこと、覚えといてねー」
言いたいことだけ言って去っていくのは、相変わらずだった。
「奏、大丈夫か?」
「あ、うん。思ったよりは……」
それはきっと、さっきのカウコンでみんなが観せてくれた『Ignition』のパフォーマンスのおかげ。
私の曲は誰が歌うのか、一番似合うのか、相応しいのか……みんなが証明してくれた気がしたから。
「奏ちゃん、はい甘酒。ちゃんとノンアル」
「わぁ!嬉しいです!」
信さんから甘酒を受け取る。
冷えた身体に、ホッとする味と温かさが染み渡る。
「奏、こっちむーいて!」
いきなり自撮りを始める遊里君。
突然のカメラにも顔の良さがブレないのは、やっぱりさすがとしか言えない。
※本作はシリーズ作品です。
1巻から通して読んでいただくことで、登場人物たちの心情や関係性の変化がより伝わる構成になっています。
よろしければ、シリーズ一覧もあわせてご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/s5099j/
ブックマーク、☆☆☆☆☆、リアクション
よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ




