第4話「クリスマスと初詣」①
「……なんか、色々準備してくれてたみたいで、ありがとう」
「ん?気にすんな」
振り返ると、少し照れたように目を逸らし、立ち上がったセナ君は、キッチンへ。
その背中に、去年も似た景色を見た気がした。
でも……今年は、少し違う。
テーブルには、さっきよりもさらに料理が増えていた。
カプレーゼやローストビーフに加えて、チキンのハーブ焼きやグラタン、添えられた焼き野菜たち。
「えっ……このチキン、もしかして……」
恐る恐る聞くと、レンジからスープを取り出しながら、なんでもないように答える。
「焼いただけ。オーブン任せ」
「……それでもすごいよ。すごいいい匂い……」
「ん、よかった。ローズマリー?とか、それっぽいののせといた」
「ねぇ、この焼き野菜も……玉ねぎなんてちゃんと飴色になってる」
「マジ?じゃあそれは、オレの勝ちってことで」
勝ちって何の勝負?と笑いかけると、彼もいたずらっぽく笑った。
「あと、スープ。冷める前に飲めよ。お前のために作ったから」
「うん、いただきます」
一口飲むと、あたたかさと優しさが胸まで染みる。
「美味しい……ほんとに」
そう呟いた瞬間、セナ君が少し真面目な顔で言った。
「だろ?オレ、奏の彼氏だからな」
……もう、なんなの。その一言で、また胸いっぱいにされる。
「彼氏……と言えばね。友達に『彼氏できた』って話したら、セナ君にガチ恋してるって勘違いされちゃった」
「ガチ恋?」
「あ、勘違い……でもないのかな?でも、まさか友達がアイドルと。なんて信じられないよね」
「ふーん。やっぱ、行けば良かったな」
「ダメだってば……」
食卓の温もりと、向かいに座る彼の存在。
どっちも、世界でいちばんあったかい。
「どれも美味しくて、食べ過ぎちゃう」
「お前はもっと食ったほうがいいんじゃねーの。軽すぎて心配になる」
「えー?そうかなぁ……」
食事がひと段落すると、セナ君がそわそわと立ち上がる。
「……まだ食える?」
「うん?」
言われるまま座って待っていると、キッチンから運ばれてきたのは小さめのホールケーキ。
白いクリームの上に、小さな星形のチョコプレートが乗っている。
「ケーキ、食えそ?」
「わ!可愛い!!」
ロウソクの火が揺れ、彼の表情をオレンジ色に染めた。
「……ありがとう。また、一緒に写真撮ってもいい?」
「いーよ」
ケーキを切り分けたあと、ポケットから小さな青い箱を取り出す。
「あと、これも」
「え……?」
もう恒例のように、見覚えのあるブランドカラー。
おそるおそる白いリボンをほどき、箱を開けると……
繊細なチェーンに、控えめなデザインのネックレスが揺れていた。
「……なんで、こんな……」
「いや、ずっと考えてたんだけど、お前って、あんまアクセとかつけないじゃん?
でも、オレが選んだやつなら……つけてくれるかなって思って」
ぎゅっと箱を握りしめ、うつむいたまま頷くしかなかった。
「つけようか?」
「お願いして、いい?」
後ろに回ったセナ君が、髪を肩にかけるように手でまとめる。
首に触れる手の暖かさとチェーンの冷たさが、少しくすぐったい。
カチッと留め金が閉じる音がすると、胸元で、ピンクがかった金色のハートのネックレスがきらきらと光った。
「……お前さ、無防備すぎんだろ。わざとなの?」
「え?」
指先が首筋から肩へ、すべるように動く。
耳からうなじに、そっと優しくキスが落ちてくる。
「……ここも……オレのだって痕つけちゃいたい」
「……んっ……」
次の展開が想像できてしまい、恥ずかしくなる。
でも……
「あ……あのっ、シャワー行きたいかも……」
「……一緒に?」
「……ひとりで……」
※本作はシリーズ作品です。
1巻から通して読んでいただくことで、登場人物たちの心情や関係性の変化がより伝わる構成になっています。
よろしければ、シリーズ一覧もあわせてご覧ください。
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