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外見のコンプレックスって?


(舞台は大学の哲学教室。教壇にサルトルの肖像画が飾られ、部長がホワイトボードに「存在は本質に先立つ」と書いている)


野田:(真剣な表情で)…というわけで、今日はサルトルの実存主義について、考えていこうと思います。


富澤:(ふわっとした服装でスマホをいじりつつ)え〜また難しそうなやつぅ。でも、「背が低い」とか「太ってる」とか、そういう外見のコンプレックスから入るってのは、わかりやすいっすね。あたしも鼻がちょっとコンプレックスで〜…。


亀田:(カップにコーヒーを注ぎながら)まーまー、誰だってなにかしらあるわよ。あたしなんて、しわ一本一本に生き様刻まれてるって思ってるもの〜。でも、それと「実存」がどうつながるのかしら?


副部長:今回の文章では、「とかげ」がキーワードになってるんですよね。ほら、敵に襲われたときに、尻尾を切って逃げるあの特性。サルトルが言うには、人間以外の動物は「本質」や「属性」が先に決まっている存在なんです。


部長:そうですね。動物や道具は「用途」や「機能」があらかじめ決まっていて、それを満たすために存在している。たとえば「とびばこ」は跳ぶためにあるし、「とかげ」は生き延びるためにそういうふうに生まれてきた。


野田:でも人間はそうじゃない、というのがサルトルの主張です。神様も親も社会も、「あなたはこういう人間ですよ」って定義してくれない。自分で自分を定義しなければならない。つまり——


野田・部長(声を揃えて):「実存は本質に先立つ」!


富澤:あ、それってつまり……「あたし、何者かわかんなくてもOK」ってこと? これから何者になってもいいよ〜的な?


副部長:そのとおり。人間は最初から「意味づけ」や「本質」がない存在。けれども、だからこそ、自由に「何者かになろう」とする自由が与えられている。


亀田:(頷きながら)なんか、思春期の子どもに言ってあげたくなる話ねぇ。あんたはまだ何者でもない。でも、これから何者にでもなれるんだよ、って。


野田:ただし、それは「選ぶ自由」と同時に「選んだことに責任を持つ自由」でもあります。自由とは、気ままで楽しいことじゃなく、**「不安」と「選択」の連続」です。


富澤:うへぇ、なんか急に重くなった。でもさ、じゃあ「自分は美人じゃないから彼氏できない」とか「高学歴じゃないから就職できない」とか思うのって……ダメってこと?


部長:サルトルはそれを「自己欺瞞(self-deception)」と呼びます。「自分はこうだから無理」って、固定されたイメージに自分を押し込めて逃げる行為。それは、「自由」を放棄することになるんです。


副部長:本当は、現実の制約があっても、それを超えて「なりたい自分になろうとする」姿勢こそが、実存主義の根本です。


野田:そして、サルトルはこの思想を実践しました。小説家として、劇作家として、ジャーナリストとして、さらにはベトナム戦争への反対運動にも参加して、まさに「言葉と行動」で「自己」を選び続けたのです。


富澤:え、外見コンプレックスからそんなにアクティブに!? なんか意外っす。てか、かっこよすぎません? サルトル。


亀田:あたし、ちょっと勇気もらえたかも。「自分はこうだから…」っていう口癖、もうやめるわ。


部長:まとめると、サルトルのメッセージはこうです。


「人間は何者でもない。だが、何者かになろうとする限り、そこに意味が生まれる。」


野田:だから、「あたしはただの平凡な大学生」って思ってもいい。でも「そこから何かに挑戦する」ってことこそが、実存を肯定する行為なんです。


富澤:(ちょっと真顔で)あたし、今週末、写真コンテスト出すの、やっぱやめようと思ってたけど……出すわ。ありのままの自分で、いく!


副部長:(笑顔で)それが、「実存の選択」ですね。


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