第5話「新たなステージへ」
都心のホテルラウンジ。いつもの落ち着いた空間の中で、香坂美月は向かいに座る三浦紗江を見つめていた。
今日が最後のカウンセリング。ここまでのセッションを通じて、紗江は会計士の枠を超え、経営に深く関与する道を模索し始めていた。
「三浦さん、今日が一区切りになりますね。ここまでのカウンセリングを振り返って、どのように感じていますか?」
美月が穏やかに問いかけると、紗江は静かに微笑んだ。
「最初に相談したときは、ただ『このままでいいのか?』という漠然とした不安しかありませんでした。でも、カウンセリングを受けるうちに、自分が何を求めているのか、少しずつ見えてきました。」
「それは素晴らしいことですね。」
「はい。私はやっぱり、単なる会計士ではなく、企業の成長にもっと深く関わる仕事がしたいんです。」
美月は頷きながら、メモを取り、次の質問を投げかけた。
「では、CFOと経営コンサルタントのどちらがご自身に合っていると思いますか?」
紗江は少し考えた後、ゆっくりと答えた。
「……やはり、CFOとして企業の内部から経営を支える道が自分に合っていると思います。長期的に企業の成長に関わることができるし、自分の財務の知識を最大限に活かせると感じました。」
「明確な答えが出ましたね。」
「はい。もちろん、今すぐCFOになれるわけではないですが、まずは企業の財務部門で経営に関与できるポジションを目指そうと思います。」
「とても良い判断だと思います。まずは、CFOへのステップとして、経営に近い環境で経験を積むことが大切ですね。」
「そのために、財務戦略や資本政策についてさらに勉強を進めるつもりです。」
「素晴らしいですね。」
美月は満足そうに微笑みながら、封筒を取り出し、テーブルの上に置いた。
「では、最後にカウンセリングの領収書をお渡しします。」
紗江は封筒を開き、中の明細を確認した。
カウンセリング料金明細
・第1回(120分):20,000円
・第2回(120分):20,000円
・第3回(120分):20,000円
・第4回(120分):20,000円
・第5回(120分):20,000円
合計:100,000円
紗江は金額を確認し、少し笑った。
「……結構な額ですね。」
「そうですね。でも、価値に見合っていましたか?」
美月が真っ直ぐな目で尋ねると、紗江は少し笑みを浮かべながら頷いた。
「ええ。これまでの自分では考えられなかった道を見つけることができましたから。十分に価値があったと思います。」
「そう言っていただけると嬉しいです。」
紗江は封筒をしまいながら、ふと目を細め、美月に問いかけた。
「ところで……修士郎さんって、美月さんの特別な方ですか?」
美月は一瞬驚いたが、すぐに笑い出した。
「私と修士郎さん? まさか。」
「でも、なんとなくお二人、息が合っているように見えました。」
「最近の彼はモテ期なのかもしれませんね。」
美月は紅茶を一口飲みながら、軽く肩をすくめた。
「でも、本気で狙うなら、積極的に行った方がいいですよ。彼は鈍感な方なので。」
紗江は目を丸くした後、少し考えるような表情を見せた。
「……ふふ、参考にさせてもらいます。」
美月はその様子を見て、微笑んだ。
「これからのキャリアも、恋愛も、自分から選択していくことが大切ですからね。」
紗江は深く頷いた。
「本当にありがとうございました、美月さん。また何かあったら、相談させてもらいます。」
「いつでもお待ちしています。」
こうして、三浦紗江のカウンセリングは一区切りを迎えた。
彼女の新たなキャリアの道が、ここから始まる。




