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プライベートカウンセラー  作者: Ohtori
第11章「公認会計士・三浦紗江(34歳)」
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第3話「経営視点を持つ会計士とは」

都心の高級ホテルラウンジ。重厚なソファが並び、控えめな照明が落ち着いた雰囲気を醸し出している。香坂美月は、テーブルの向こう側に座る三浦紗江を見つめた。


「三浦さん、今日は特別なゲストをお招きしています。」


美月が穏やかに微笑みながら言うと、紗江は少し緊張した面持ちで頷いた。


「こんにちは、三浦さん。」


低く落ち着いた声が響く。スーツをきっちりと着こなし、端正な顔立ちを持つ男性が美月の隣に座っていた。


「ライジング・ストラテジー・パートナーズの鳳修士郎さんです。」


「初めまして、鳳です。」


修士郎は名刺を差し出し、紗江もすぐに名刺を取り出して交換した。


「お会いできて光栄です。以前は会計士をされていたとうかがいました。」


「ええ、もともとは監査法人で会計監査をしていましたが、その後M&Aアドバイザリーを経て、今は経営コンサルティングの仕事をしています。」


「会計士からコンサルタントに転身されたきっかけは何だったのでしょう?」


紗江は興味深そうに身を乗り出した。


「シンプルに言えば、企業の成長にもっと深く関わりたかったからですね。」


修士郎は、コーヒーカップを持ちながら続けた。


「監査や税務業務は、企業の財務状況を適切に管理するために必要不可欠な仕事です。でも、当時の私は、クライアントに『この財務戦略では持続的な成長が難しい』と気づいても、アドバイスする範囲が限られていました。」


「なるほど……確かに、会計士としての役割には制約がありますね。」


紗江は頷きながら、自分の悩みと照らし合わせていた。


「ええ。クライアントのビジネスの成長をもっと直接的に支援したいと思い、M&Aアドバイザリーの業務にシフトしました。そこでは、企業の買収・売却、資本政策の設計、成長戦略の立案など、より経営に踏み込んだ仕事ができました。」


「でも、そこからさらに経営コンサルタントへと進まれたのは?」


美月が促すと、修士郎は少し笑みを浮かべた。


「M&Aに関わるうちに、結局、企業の成長は単に財務面だけの話ではなく、『経営戦略そのもの』に行き着くことを実感したからです。どんなに資本政策が優れていても、事業戦略が甘ければ成功しません。逆に、明確な成長戦略がある会社は、多少の財務的な課題があっても乗り越えられることが多い。」


紗江は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「私も、最近になってそれを実感するようになりました。ただ、今の私は会計士としてのスキルはありますが、経営戦略に関する知識や経験が足りないと感じています。」


「それは当たり前のことです。」


修士郎は静かに頷いた。


「でも、会計士としてのバックグラウンドは、経営コンサルティングの世界でも非常に大きな強みになりますよ。」


「……本当ですか?」


「もちろん。経営戦略を立案する上で、財務データの分析力や資本政策の理解は不可欠です。特に、企業の成長戦略を支援するコンサルティングでは、単なるマーケティングやオペレーションの視点だけでなく、『財務戦略』を絡めた提案ができるかが重要になってきます。」


「なるほど……。」


紗江の表情が少し変わった。


「つまり、会計士の経験を活かしながら、経営戦略に関する知識を積み上げていけば、私にもコンサルタントとしての道が開けるということでしょうか?」


「そうです。そのために、まずは今の業務の中で、『経営の視点を持ってアプローチする』ことを意識してみるといいでしょう。」


美月が頷きながら続けた。


「実際、三浦さんは前回のカウンセリングで、クライアントに財務アドバイスをする際に経営の視点を加えてみたとおっしゃっていましたね。」


「はい。売上を伸ばすための投資という視点で、マーケティング費用の再配分を提案しました。」


「素晴らしいですね。それこそが、コンサルティングの第一歩です。」


修士郎も満足そうに頷いた。


「もし本格的に経営コンサルティングに進みたいのであれば、財務分析だけでなく、競争戦略や事業計画の立案についても学ぶといいでしょう。M&Aや資本政策の知識も役立ちます。」


紗江はメモを取りながら頷いた。


「そうですね……経営戦略についての知識を深めることが、今の私に必要なのかもしれません。」


美月は微笑みながら、最後にこう問いかけた。


「三浦さん、今日のお話を聞いてみて、今の気持ちはどうですか?」


紗江は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。


「……私は、単なる会計士で終わりたくないんだと思います。」


「はっきりしましたね。」


「はい。会計士のスキルを活かしつつ、経営コンサルティングの視点を持って企業を支援すること……それが、私が本当にやりたいことなのかもしれません。」


修士郎は満足そうに頷いた。


「その方向性が見えたなら、あとは実践ですね。」


「次回までに、どんな準備をしておけばいいでしょう?」


「まずは、現在のクライアントに対して『単なる財務アドバイスではなく、経営視点を加えた提案』をいくつか実践してみてください。そして、その反応や課題を整理してみることです。」


「分かりました。やってみます。」


美月は静かにカップを置いた。


「これからのキャリアが、より充実したものになりそうですね。」


紗江は少し微笑みながら頷いた。


こうして、彼女は会計士としての枠を超え、経営コンサルタントとしての視点を養うための次のステップへと踏み出した。

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