死にたい人、あるいは作家になりたい人
小説、それは小なる説。フツーでは考えられないようで、でもある状況において成り立つ理論。その立場におかれた人にしか分からない理論。
小説家、それは小説を紡ぎ出す人。ある立場におかれた主人公を理解しようとする人。いわば、人間を研究する人。
だから、人は誰しも一度は、小説を書きたいと思う。そうして、自分を投影した主人公を研究し、論理化し、結局は正当化したいのだ。自分は間違っていないと。
多分、僕もそうだったんだ。
その日は朝から雨だった。しとしと、ありふれたそんな表現しかあてはまらない雨。
濡れるのが嫌で、寒いのが嫌で、外になんか出たくなかった。でも一人はもっと嫌だった。
どーしよう。お金もあんまないし。…
僕のだした結論は、多分フツーは考えない。でも、その状況の人間なら分かるかも。山手線一周。
秋葉原で電車にのる。多分この駅ほど、多彩な人種が同時に行き来するところは無いだろう。オタク。ロリ系の姉ちゃん。カップル。サラリーマン。じっちゃん。ばっちゃん。よっぱらい。外人。ひとつの車両にこんだけ乗り込んだ。
東京。駅がどこまでだかわかんない。周りを人間が本当に建てたのかってほどビルが取り囲んでて、間を人がゴキブリみたいに歩いてる。きっとエリート会社員が多いんだろうけど、やっぱりゴキブリに見える。なんか面白い。
浜松町。東京タワーが見える。昔は東京じゅうから見えたっていうけど、今じゃ見える方が珍しい。モノレールが羽田につながってるから、コロコロ持った人が多い。旅立つ人も、途中の人も、帰る人も、ごっちゃごちゃ。フフフ
恵比寿。駅メロがいい。秋葉で一緒に乗った最後の外人が降りた。これで僕一人。なんか嬉しいような寂しいような。
渋谷。車内の人間が一気に入れ替わった。怖い兄ちゃんが隣に座った。ヒョエー。
原宿。ギャルが前にきた。牛みたいなカッコしてる。幼なじみが自衛隊に入って頑張ってるらしい。
「でもさ、自衛隊って戦争行くんでしょ!」
(いかねーよ。憲法イハン!)
「彼氏だったら心配で嫌だよね。」
(君みたいの相手にしないから大丈夫)
「でもさ、偉いよね。昔ゴロツキだったのに。頑張ってほしいな〜」
(テメーも頑張れ!!)
新宿。また人が入れ替わった。よくもまた一気にこれだけ。なんか感動した。
池袋。キライ、ここ。いつも、ろくなことおきない。さっさと通過!
上野。今度、動物園行こう。(一人でフラミンゴ見てる自分を想像して泣いた)
疲れた。と思ったら一周した。秋葉原。終点の無い電車の終点。そのまま家に帰った。
夜も雨だった。暇だった。ホントは今日、死ぬはずだった。何でって、いろいろ疲れたから。
でも、止めた。グルッとしたら生きようと思った。何でって、…多分分かってくれない。
小説。小なる説。
あなたがどんなに頑張っても、多分フツーじゃないから誰も分かってくれない。でも、嘆いちゃいけない。だって、あなただけじゃないから、小説書きたいのは。みんな、書きたい。みんな、人に理解されたい。でも無駄だって、みんな分かってる。
人に理解される必要なんてない。自分で小説書いて、自分で自分を理解できたら、多分それだけで生きようと思える。もう一人じゃない