二人の男
黒いスーツを着た猫背気味の中年男性と、背の高い若い男性が夜道を歩いている。
「先輩、今度こそ捕まえられますよね?」
「さぁ、どうだろうな」
先輩と呼ばれた中年男性は肩を竦めて応える。
会話は直ぐに終わる。
険しい顔をして二人は歩いて行く。
二人の男性は学校の校門をくぐり校舎に入ると、中年男性は直ぐに異変に気付く。
「おかしいな」
「何がですか?」
「幽霊の気配がしないんだよ」
「それって…」
若い男はより真剣な顔もちで中年男性の後ろを付いていく。
一階、二階と慎重に進んでいき三階に着いた。ここまで誰にも会っていない。
三階はこれまでの階と違う空気が流れている。
窓から月が見えるが、光が射して来ない。まるでそこにあるだけの置き物の様に。それだけでも異質なのだが光が届かないにも拘らず淡い朱色に照らされて辺りは優しく明るい。
「これは…」
男性達の前には倒れている少女が一人。
若い男性は直ぐに駆け寄り、息の確認をする。
「大丈夫です。生きています」
中年男性はそれを聞き、少女の倒れている先にある部屋に向かって歩き出す。
その部屋は紅く明るく、紅い花を咲かせた禿げた男性が一体あった。
若い男性も、少女を仰向けにし自身の着ていたスーツを枕替わりに頭の下に敷いたあと、中年男性に続いた。
「これは…いったい…」
「さぁな、被害者らしき少女は気を失っているが生きていて、加害者である人物が死んでいる、ことくらいしか分からねぇが…」
「誰かが殺したか、あるいは契約していた幽霊と何かあったのか、ですね」
「それもあるが、第三者の介入という線もある。取り敢えず報告だ」
中年男性はスーツのポケットから折りたたみ式の携帯を取り出し器用に操作をし報告の電話をかける。
若い男性は処理班が来るまで、現場の惨状を目に焼き付けていた。