僕のこと好きになってクエスト 〜初恋は意地でも実らせてみせる〜
一本のヒマワリを持って告白した。
勇気を振り絞ったそれは、あっさり撃沈した。
照れも戸惑いもせず、にっこりと。
「わ、かわいい。ありがとう」
無邪気な顔に、「君の方がかわいい」とは言えなかった。
リエは近所に住む幼馴染の女の子だ。
ずっと好きだった。
小さい頃はたくさん遊んで、手を繋いだりもしていたのに。
最近はどこかよそよそしい。
以前の関係に、いやそれ以上に、と一念発起。
花を添えての告白は、見事に玉砕したのだが。
僕は諦めない。絶対に振り向かせてみせる。
そもそも何が駄目だったのか。
可愛い家に招待して手料理も振舞ってくれたのに、急に会えなくなった。
容姿には自信がある。
女の人にはよく「かわいい」と言われるし。
(は! かわいい男が嫌なのか? リエもお年頃。かっこいい男がいいのかも)
僕はかっこいい男になるため頑張った。
強さを求め、ランニングと筋トレを毎日。
売られた喧嘩は買ってやる。強くてかっこいい男に僕はなる。
そして再チャレンジ。
コスモスの花束とともに愛を囁くが、リエは困り顔だ。
「ごめん、恋愛対象にはならないかな」
またも玉砕。え、なんで?
どうしたら恋愛対象になれるだろう。
(は! 僕の背が低いから? リエより大きくなれば、もしかして)
僕は背を伸ばすため頑張った。
毎日牛乳を飲む。運動もしてる。
苦手な魚もリエを想えば食べられる。
カルシウムのおかげか身長はぐんと伸びた。
今ではリエを見下ろせる。
そして再々チャレンジ。
初めて買ったガーベラのミニブーケとともに「付き合って」と伝えたのだ。
だがしかし。
「私、他に付き合ってる人がいるの。もっと他の女の子も見てあげたら」
リエは言いにくそうだった。
なんだって! リエに男の影が。
しかも他の女の子を勧められる始末。
さすがに落ち込んだ。
もうだめかもな、と周りに目を向けてみると、どうやら僕は結構モテるらしい。
顔は悪くなく高身長で、良い体つき。そしてできる気遣い。
しかしリエより惹かれる子はいなかった。
それからしばらくして、リエが別れたと聞き、思わず家まで押し掛けた。
泣いてる彼女を放っておけない。
「いい男になっちゃって。私なんかよりもっと若い子の方がいいんじゃない」
と笑う姿を見て、幼い日が思い浮かぶ。
ドールハウスにおままごと。年の離れた僕の手を引き、遊んでくれた。
親は仕事でいつも不在。一人だった僕にとってかけがえのない存在で。
──今度はバラを贈ろう。
まだ僕のチャレンジは終わってない。
リエはもう絆されてます。あと一押し。