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1・2 激戦!

 女神に指定されたのは都にある大聖堂前の広場だった。宙に浮かぶ私のやや先に、地上に仁王立ちしているムントというタイプの怪物(ウンゲテューム)が一体いる。全身真っ黒で人型に近いけれど、顔の部分はのっぺりとして、お腹に巨大な口がある。背丈は鐘楼に届こうかというほど。逃げ惑う人々に口から吐き出した黒い炎を浴びせようとしている。


 怪物(ウンゲテューム)は二年ほど前に復活した魔王の手先で、魔王の目的は地上の支配らしい。

 この魔王を倒す勇者が、恐らくクリストハルトなのだと思う。


 ムントの頭部に光魔法の攻撃が当たる。相棒のかにんぴょんだわ。

 怒ったムントが丸太のような手でかにんぴょんを捕まえようとする。両の手のひらにひとつずつ目玉がある。


 女神が遣わしたうさぎ型魔法生物のかにんぴょんは、サイズもうさぎと同じくらい。捕まれば簡単に殺されてしまう。


「シュトック!」

 唱えると、目の前に先端がハートの形をした30センチほどのスティックが現れた。右手で掴み、女神の印を空中に描きながら、

「輝く未来あふれる希望 (けが)れし者を退けよ!」

 と呪文を唱える。間髪いれずに印の中央から光の矢が飛び出し、ムントの大きな口に飛び込んだ。


 それとほぼ同時にムントがかにんぴょんをはたき飛ばす。


「かにんぴょん――!!」

 空を切って飛ぶ。

 小さな体が大聖堂の壁に激突する寸前で、手が届いた。

「セーフ!!」

「――じゃないぴょん! 後ろぴょん!」


 振り向こうとしたところに、ムントの拳に背を叩かれ墜ちる。

「ホッフン!」

 力を振り絞り宙で一回転し、足から地面に降り立った。そこにムントの拳が落ちてくる。

 すんでのところで交わして飛び上がる。


「私は大丈夫!」全身バラバラになりそうなくらいに痛いけど。それよりも――「攻撃が効いていないわ!」

 以前は口の中への一撃で倒せたのに。炎を吹くことはできなくなったみたいだけど、ムントの打撃は普通の人ならば、潰れてしまう。


「また強化種なのね!」

「さっきアイツの姿があったぴょん!」

「まずいわね」

「かにんぴょんが最上級技をやるぴょん!」

「ダメよ! かにんぴょんはボロボロですもの!」

 抱えているかにんぴょんは、明らかに右の前足と後ろが不自然にダラリとしている。きっと折れているのだわ。


 と、ムントの向きが変わった。逃げ遅れたひとを見つけたらしい。


「やるぴょん! 市民が危ないぴょん!」

 かにんぴょんが私の腕の中から飛び出す。だけどフラフラして、飛行が安定しない。

 女神の御使いであるかにんぴょんは、市民の犠牲を出すのが大嫌い。それでいつもムリをしている。


 ドスンドスンと音を立てて広場を横切るムント。その前に、脇道から走り出てきた数人が立ちはだかる。中のひとりはクリストハルトだわ。


「ロートトルペよ! 今日は間に合ったのね!」

 我が国の精鋭魔法戦士たちで構成される、怪物(ウンゲテューム)を討伐するための部隊、ロートトルペ。

「連携してくる。かにんぴょんは体力回復を優先して!」


 ムントが口を大きく開く。受けた攻撃から、もう回復したのかもしれない。

 ロートトルペは精鋭ではあるけれど、数人集まってようやく魔法少女ひとりぶんの力しかない。


 急いで呪文を唱えて、ムントの背中に攻撃を当てる。急所でないから、吐火をやめさせることしかできない。でも気はそらせるわ。


「ムント! こっちよ!」

 ヤツの注意を引いて、その間にロートトルペに攻撃魔法の準備をしてもらう。


 ムントの口の奥に黒い炎の火種が見えた。 



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