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くだらない私の日常 新人なろう作家の日常妄想系エッセイ

朝からやらかしました……


 その日の朝はそれまでの暖かさが嘘のように、そう……まるで真冬に逆戻りしたような……そんな朝だった。


「う、うーん……」


 意識が浮上してくるが私は朝が弱い。


 お医者さまにも言われているが、生きているのが不思議なくらい血圧が低いのだ。


 手足が動かせるようになるまで通常三十分ほどかかる。


 起き上がれるようになるのは目が覚めてから一時間は必要。それも比較的健康状態が良い時の話で、悪いときは半日以上寝たきり状態のこともある。 



 嫌な予感がする……



 私は時計を見なくてもほぼ時間がわかる。誤差は大体五分以内。


 起きた瞬間にわかった。


 

 あ……ヤバい、寝坊した。



 普通なら跳ね起きてバタバタ走り回るところだろうが、私にそんな芸当は出来ない。朝の私はもしかしたらナメクジやカタツムリと良い勝負になるほどの速度を誇っている。


 動かない手に嚙みついて刺激を与え強制的に動かす。まるでゾンビのように身体を引きずりながら着替えをすませる。


 私は寝る前にすべての準備をすませている。着替えや荷物は枕元にあるので、最短距離の移動で準備を済ますことができるのだ。


 問題は食事だ。私が使っている花粉症の薬は食後服用なので、何かお腹に入れなければならない。


 食べ物は冷凍した食パンとパスタしかない。


 冷凍食パンをかじるのと、固いパスタをボリボリするのはどちらがマシだろうか?


 私が出した答えは冷凍食パン。パスタは以前試して口の中に刺さったトラウマがある。


 顔を洗いながら凍ったパンを口にねじ込んで咀嚼する。冷たい……美味しくない。悲しくて涙が出る。


 顔色は最悪だ……血の気がなくて人形のように見える。


 だが時間は待ってはくれない。家をよろよろと飛び出す。



 私の体内時計が正しければ通常時刻に三分遅れ。行ける……十分リカバリーできたはず。


 駅までは早足で二十分、信号が赤になって、そこで初めて時刻を確認する。


「ふふふ、なんだ余裕じゃないか」


 思わず変な笑いが出る。三分遅れだと認識していたが、実際はいつもより一分早かった。


 心が軽い。足取りも自然とスムーズになる。



 高架に差し掛かるともう駅まではわずか。駅舎や接近する電車を見下ろすことが出来る。


「な、なんだと……馬鹿な……まだ時間があるはず」


 電車が接近してくるのが見える。くっ、もしやダイヤに乱れが生じているのか?


 職場までは乗り換え四回、片道三時間かかるのだ。影響は計り知れない。


 それもあって、私は一時間余裕をもって職場の最寄り駅に到着するようにしているのだが。


「ここが最後の頑張りどころ」


 私は最後の力を振り絞って駅へ走る。


 ひざは笑っているし、頭痛も酷い、倦怠感で手足は鉛のようだ。


 正直間に合うかは微妙。自動改札のタッチをミスしても間に合わないし、階段での位置取りを間違えても同様だ。そして何より、最短ルートを邪魔する人間がいないことが絶対条件となる。  



 走りながら定期券を取り出し、高く掲げる。


 焦ってはいけない。一秒以上しっかりとタッチすることが肝要。


 よし、クリア!!


 下り階段へのルートは身体に染みついている。目をつぶっていても間違えることがないほどに。


 電車はすでにホームに入っている。


 扉が開き、乗客が降りてくるから降りるための道幅は狭いのだ。ギリギリ二人通れるかどうかというところ。


「あはははは」


 学生とおぼしき男女五名のグループが下り階段を占拠している。


 その格好ですぐにわかる。ディズニーだ。夢の国へ行くつもりだ。


 道をあけてくれ……私に悪夢を見させるつもりなのか?


 間に合わない――――そんな思いが脳裏をよぎる。


 ここで私は選択を迫られる。


 ①学生たちに声をかけて通してもらう


 ②次の電車を待つ


 

「すいません、急いでいるので通してもらえますか?」


 言えるわけがない。夢の国へ向かう途中が一番楽しいのだ。そんな彼らを押しのけてまで乗る価値はない。いや、正直に言えば、下り階段で走るのは非常に危険な行為、仮にも社会人たる私が学生に手本を見せなくてどうするという道義的な問題もある。さらに本音を言えば、そこまでして降りて行って万が一間に合わなかった場合、彼らの視線に耐えられる自信がない。


 ②だな。ここは次の電車を待てばいい。別に一本ずらしたところで遅刻するわけではないのだから。


 そうと決まれば後はアリバイ工作だ。


 めっちゃ急いで駆け下りたのに電車に乗れなかった可哀そうな人にはなりたくない。そういう目で見られるのは避けたい。


 できるだけ涼しい顔を作り、呼吸を整える。背筋を伸ばし所作は優雅にゆっくりと。


 完璧だ。どこからどう見ても急いで乗り遅れた人には見えないだろう。


 余裕が出てくると視野まで広くなる。


 学生グループを観察して、なぜ男女同数ではないんだとか余計な人間関係に思いを馳せる余裕すらある。



 そして気付く。



「あ……今日休みだった……」



 そんな昨日の朝のお話。

言い訳をさせてもらうと、隔週土曜日休みなので、たまにやらかします(;'∀')


一度は気付かず会社の近くまで行ったことも……(;´Д`)

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― 新着の感想 ―
[良い点] や、休みで良かった(ホッ)。 働いていると、曜日感覚なくなりますよね~。 [一言] 職場まで片道三時間?!でもって低血圧って……。無理はアカンですよ(>_<)ご自愛くださいね。自分も低血圧…
[良い点] 乗り換え4回、片道3時間は凄いですね……(; ゜Д゜) 自分も昔片道1時間40分を通ったことがありますが、今は出来る気がしません(汗) お休みで良かったですが、無理はなさらないようにしてく…
[一言] え、僕は昨日スマホ忘れてるのを出勤中に気付いて、取りに戻ろうか悩んだなぁ、諦めました〜
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