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ボクは主人公になれない  作者: PurineSan
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第一話 目が覚めたら…"起点"

 そこには白が広がっていた。



 知らない真っ白な天井を数秒眺め、状況の分析を始める。

 体は倦怠感けんたいかんを訴える。覚醒直後の脳の弊害…というよりこれはおそらく別の症状だ。

 顔面を覆うようにわずらわしく巻きついているのは包帯だろう。

 そして何より漂う薬剤の匂い。

 

 以上の事柄から判断するとここは医務室といったとこだ。

 多分、怪我でもやらかして送られたのだろう。


 上体を起こしシーツをずらす。

 あらわになった肉体に視線を落とし、自身の怪我の全容を知る。


 近くのランプに照らされた体は言うまでもなく重症である。

 しかしそれは自身の想定した規模より深刻だった。

 右足の骨折に、靭帯の損傷。

 全身に巻かれている包帯は火傷。


 一人で歩くことすらままならない状態。


「これは少し困ったな」


 独り言を零し、治療術ヒールを受け付けない自分の肉体を呪う。

 

 王国の騎士団に名を連ねているのに回復術を受けられないのは致命的だ。

 他の団員は骨折くらいなら次見た時には跡形もなく直してもらっている。

 

 ある程度脳が活動した所で本題を思い出す。

 「どうしてこんな怪我を負っているか」だ。


 脳裏に蘇るは先刻の光景。

 一方的な力に屈した自分。

 思い出すだけでムカムカしてくる。

 ボクの負の記憶入り決定である。


 さきの戦闘、ボクは己の能力の限界を悟った。

 

 知覚外の豪速に規格外の魔法の瘴気。

 己の練り上げた技を繰り出す余裕すらなかった。

 しかし技を出せれば勝てたかというと…うーん。


 本来技というものは格上の能力を持つ存在に勝つためのものだ。

 格上どころか、格格格上レベルの相手には滑稽な悪あがきにしか見えないのだろう。

 結局、技を出せても結果は一緒だった。


 今まで素の能力なら自身より百倍以上ある敵をも討ってきた。

 騎士の中でも上位であるステージ4の末端に身を連ねてすらいる。

 しかし凡人にはここらが限界なのだ。

 能力の差というものは残酷である。


 そんなことを考えながら対戦相手を思い出してみる。


 黒髪の少年。

 珍しい顔立ちに珍しい髪色である。

 これは極東の国に多いと聞く民族の特徴に当てはまっていた。

 東国出身なのだろうか。


 見た目はおいといて肝心なのは能力だ。

 あの漆黒の瘴気。

 自在に形を変える謎の黒だ。

 魔術の一つなのであろうか。もう少し観察する時間が欲しかったのだが。



 というか世の中の人間はどうやって人と仲良くなるのだろうか。

 コミュ障の定番をなぞり相変わらずの疑問を浮かべる。

 


 付近に置いてある松葉杖を使い移動する。

 この怪我であれば安静に寝ていた方が良い気がするが、気が進まなかった。

 外に出ようと扉の前に移動を試みる。


 しかし医務室の個室の出口の扉の前に立った時、自分の大胆な格好に気がついた。

 全身の至る所を包帯で覆っているがほぼ、裸である。

 シルエットだけ見ると体の境界線ラインはほぼくっきりとしている。


 部屋内を見回すと、そこに鏡台と横の机に召し物があることに気づく。


 うーっと伸びをして、耳より少し高い後頭部の一点で薄桃色の髪をまとめ、ゴムでグルっと縛る。

 男性にしては似つかわしくない首元まである美しい桃髪である。


 白い清潔感のある服に身を包み上半身を隠す。

 成人男性用ふつうの物だと少し大きい。ワンピースのようになってしまう。男性にしては小さく、女性にしては大きめの一六八センチだから仕方がないが。


 ズボンで下半身を隠す。

 女性にしては丈夫すぎる、筋肉質な脚が覆われる。


 最低限の着衣を済ませてから鏡台を後にする。地面を規則的なリズムで蹴りながら扉を潜る。ようやく医務室の外に出られるのだ。

 重くて動かない片足をぶら下げ、廊下に踊り出る。


 普段だったら人が点々といてもいい、多い時には十人近くいる廊下。

 伝達や予定をまとめた掲示板があり、溜まり場となっている廊下。

 そこには誰の一つの喧騒はなしごえもなかった。

 というか、人すらいなかった。

 自身の孤独気質のうりょくもここまで力をつけたのかと死にたくなったが理由はそうでもないらしい。

 廊下の窓から見える団員たちのただならぬ焦りを感じたからだ。


 ボクは急いで…でも、脚が折れいているのでできる限り急いで騎士団施設ホームの入り口へと向かった。

 

 

Hu

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