4 ジェイムズ視点
さきほどまでの決意はどこへ行ったのか、またもやミーシャは婚約者候補になりたくないモードに突入してし、布団にぐるぐるとくるまって、ナメクジのようになっている。
ミーシャは自分が勘違いしていたと気がついてすぐに、ミーシャのお母様へ宣言を撤回しに走った。
…だけど時すでに遅し、だったんたよね……
ミーシャが誤解を解きに行ったときにはすでに、婚約者候補になる、という返事を持った使用人が家をでてしまった後だった。
さすが、ミーシャのお母様、行動が早いなあ。と僕はまたちょっと感心してしまった。
そう思っていることがミーシャにばれたらまた怒られそうだから、もちろん次は心の中の声に留めたけれど。
それにしても、どうやってこのナメクジ幼なじみを励まそうかな…
本物のナメクジのような、じめじめした雰囲気を放っているミーシャ。
王子様の婚約者になりたくない理由はなんだったっけ。
たしか、王子様のことが恋愛的に好きじゃない、8歳で結婚なんか考えられない、とかだったかな…
たしかに、ミーシャのいうこともよくわかる。
貴族だから自由恋愛は難しいにしても、8歳で婚約者がいる、というのは他の貴族に比べてもだいぶ早いと思う。12歳くらいで婚約を結んで、16歳以降に結婚する、というのが平均的なケースだから。
まあ、王族のことだからとにかく足場を固めるために、有力貴族の令嬢達を早めに押さえたんだろうなあ。ちょっとミーシャがかわいそう…
これで他の人と結婚するっていうことが難しくはなっちゃうもんね…
僕が何も言えずにナメクジのミーシャを見つめていると、
「グスグス、、、わたし、全然恋愛になんか興味ないもの、、、。社交界のデビューだってなるべく遅くにしたいし、婚約だって、なるべく遅くにして、のんびりこの家で過ごしているつもりだったのに、、、どうしてこんなことに、、グスグス、、、」
と、貴族にしてはあるまじきぐうたら発言が聞こえてきた。
僕はなんだかそののんきさにクスッと笑えてしまった。
「もう、ミーシャってば、そんなこと………!!」
そんなこと貴族の娘には叶わない、そう言おうとしたとき、僕は気がついてしまった。
「それって、王子様の婚約者候補だったら、叶うんじゃない…?」
「、、、どういうこと?」
思わず呟いた僕の言葉にミーシャが布団から顔を出す。
「あのさ、王子様の婚約者って正式に決まったわけじゃないんだよね?」
「ええ、さっきお母様が、何人かが候補として選ばれて、そこから正式な方が決まるって聞いたわ」
「なるほど…」
ミーシャの言葉を聞いて、僕はもう一度自分の考えが正しいかを振り返る。
「ちょっと、黙ってないでさっきの言葉の意味を説明してよ!」
しびれを切らしたようにミーシャが僕の顔を覗き込んできた。
いつもより心細そうに見えるキラキラしたオレンジの瞳。
大丈夫だよ、ミーシャ。
心配しないで。
僕はニッコリ笑ってミーシャの顔を見つめ返した。




