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三話完結予定です。
わたしの国の王子様はずっと婚約者選びを渋っていた。聞いた話によれば、王家特有の黒い瞳に憂いを浮かべて、マイナスイオンでも出そうな素敵なため息をついて「結婚なんてまだ考えられない…まだ僕は運命の人に出会っていない気がするんだ…」なんて言っていたらしい。
ちょっと思い浮かべてみるけど、非常に絵になる。素敵だわ。わたしは王子様のそんな様子を思い浮かべてウンウンと頷く。
しかし、あんなふうに婚約者選びを憂いていた王子様は一週間前に婚約者を見つけだし、なんと今すぐにでも結婚したいモードに入ってしまったらしいのだ。
一週間前に貴族のお偉方によって半ば無理矢理開かれた婚約者候補お披露目のパーティーにて、とある一人の令嬢をみそめられたとか。
そのご令嬢は今までご家庭の事情で、(わたしはたぶん再婚した義理の家族にイジメられてたんじゃないかって踏んでるんだけど、)社交の場にはほとんど参加したことがなかったらしくて、その一週間前のパーティーが初参加。そこで初めて王子様とご対面。からの王子様の一目惚れ。ご令嬢はなぜか身分も明かさずに帰ったんだけど、帰るときに脱げてしまったガラスの靴を頼りに王子様がご令嬢を大捜索。王家の力を大活用しご令嬢を見つけだして婚約まで至ったとか。
あの時のお二人のダンスは素敵だったわ、、、今思い出してもため息がこぼれるわ、おっといけない、
本当にため息が出ちゃったわ。
「ちょっと、ミーシャ、ちゃんと考えているの?あなたの婚約者探しの話をしてるのよ!王子はもう結婚間近になってしまったんだから、あなたはまた一から婚約者を探さなくてはいけないのよ?」
「もちろんです、お母様。どんな方が良いのかわたしも考えていたたところです」
それならいいのよ、そう言ってお母様はまたたくさんの婚約の申し込みの書類に再び目を落とした。
危ない危ない、自分の婚約者のことなんて全く考えていなかったことがばれちゃうところだったわ。いまさら婚約者を探すなんて面倒過ぎる~
王子様とそのご令嬢が結ばれたことは大変喜ばしいんだけど、そのせいでわたしの婚活は継続となってしまった、それも本格的に。
今までは王子様が正式な婚約者を選んでいなかったから、有力貴族の年頃のご令嬢達は婚約者候補という空気があって、婚約者を探したり選んだりする必要がなかった。わたしも、自分でいうのもなんだけど、そこそこの有力貴族の娘だから、他のご令嬢達と一緒に妃教育みたいなもの受けたりもしていて、婚約者探しなんて全くのノータッチ。
しかし!!王子様が婚約してしまった今、婚約者候補なんていう建前は失われてしまった、、、なんてことだ。
そのせいでお母様は張りきって婚約者選びを始めているわけ。そしてわたしももちろん一緒に申し込みの書類を見させられてるってわけ。
わたしは正直王子様と結婚できるなんて思っていなかった。でも結婚自体も全然興味が湧かないし、王子様の婚約者候補として、婚活をしないでいられるなんてラッキー!くらいに思っていた。
浅はかだったわ、、、王子様と結婚しなかったらいずれこうなることは決まっていることだったのに、、、
マイナスイオンなんてでないけれど、再びはーっとわたしもため息をついて、婚約の申し込みの書類に目を落とした。




