ヲタッキーズ65 秋葉原ブラックアウト2
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第65話"秋葉原ブラックアウト2"。秋葉原を中心に変電所が襲撃され、停電が頻発w
背後に"リアルの裂け目"の向こう側に潜む異次元人組織の影、政財界を巻き込むスキャンダルも発覚し…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 拝金主義のカスケード
僕は…キスをしながら女の部屋に連れ込まれる←
「テリィたんには借りがアル!返させて!」
「いや!もぉ十分返してもらったから!」
「じゃコレはお釣りだからっ!」
相手は、首都高HPのプルカだ。コスプレの時と変わらない丈のボディコンシャスな超ミニのスーツ。
場所は、外神田にそびえ立つ超高層タワマン最上階のペントハウス。スゴいトコロに住んでるょなw
「絶対内緒にしてね。出会い系でスッポかされたナンて知られたら、首都高の上野線本町上り出口から1歩も出られナイわ」
「HPに楯突く奴ナンていないさ」
「ソレはミニスカポリスみたいなコスプレをしてる時だけでしょ…コスプレを脱げば私は、タダの女」
「え。タダなの?」
「バカ」
プルカは、再び僕の首に手を回すや、手繰り寄せるようにして真正面から赤い唇を押しつけて来るw
「OKなのね?でも、テリィたんはミユリ姉様のTOナンでしょ?」
「え。まぁね」
「元カノで心のバランスを崩したメイドの噂も耳にしてるけど」
「ホントに良く知ってるなw」
「2人続けて、同じメイドと1週間以上続いたナンて、テリィたんもヤキが回ったって噂ょ」←
「ソレを"進歩"と呼んで欲しいな」
僕に巨乳を押しつけ、大きくのけ反るプルカ越しに、窓の下、遥か下界で点滅する電気街のネオン。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その下界にある変電所。
単独作業で変圧器を空地に降ろし、暗闇の中、ヘルメットのLEDライトを頼りに点検を急ぐ作業員。
「あ。どうした?いや遅くなる。メシ?無理。とにかく遅くなるょ。あっ…」
肩に挟んだスマホが地面に落ちる。
「ごめん。何でもない。スマホを落としただけだから。先に寝てて」
その時!
闇を引き裂く急ブレーキの音と共に真っ黒なSUVがフェンスを押し倒し、変電所へ突っ込んで来るw
そのママ、変圧器と激突!次の瞬間、激しい火花と電弧が飛び交って、まるで真夏の花火大会状態←
瞬時に電気街のネオンが次々消えて逝く…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、電気街のネオンと無縁な闇の中でスマホ鳴動w
「あ、テリィです。えぇハイわかりました。直ちに」
ベッドの中で起き上がると責めるような声。
「コスプレを脱がしたママ、私を置いて行くの?」
「新電力で爆発事故だ。コレでも第3新東京電力の社員だからさ。片付けたら帰って来るから」
「あのね、テリィたん。私、明日は早いのょ」
「はいはい。リミットは?」
「午前零時。1分でも過ぎたら、服を着ちゃうから」
「逆シンデレラだね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
変電所の爆発現場。
「神田消防が鎮火を確認しました」
「送電系統はオフラインです。停電規模は数千世帯」
「テロの可能性は低いかと」
「何で?予行練習カモしれないわ」
現場に駆けつけたのは万世橋警察署の敏腕警部ラギィ。部下からビニ手を受け取り規制テープをくぐる。
「点検中の作業員が犠牲になりました」
「こんな真夜中に点検作業?しかも、単独作業だナンて新電力の労務管理はどーなってるの?突っ込んだSUVの運転手は?」
「逃走中」←
ラギィ警部は、ヤレヤレと逝う顔をスル。
大破したSUVをライト片手にノゾき込む。
「…あら?コレを見て」
「おや?アクセルの上に板を置いてありますね?」
「いいえ。押し込んでアルのょ」
と逝うコトは…
「このSUVは1種の車爆弾ね。コレはテロょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
明け方の捜査本部。
「みんな、御苦労様。誰も帰らなかったの?」
「残業手当の加算をお願いします」
「無理。で?」
「死亡した作業員は、ランデ・マルズ。31歳。既婚。子供が2人」
「新電力の社員なの?」
「いいえ。臨時雇用です。新電力は、コストカットで重要な定期点検も、ほとんどをアジアンの素人に頼っています」
新電力には、電気の安定供給への使命感などない。
会社のカルチャーは、拝金主義に支配されている。
「警部!突っ込んだSUVは中古車でした」
「盗難車?」
「YES。昼過ぎに芳林パークの付近で盗まれてます」
「あら。現場からは遠いじゃないの。はるばる秋葉原ヒルズまで運転して、変電所に突っ込んだワケ?帰りはどうしたのかしら。複数犯の可能性は?」
「芳林パーク周辺の聞き込みから始めます」
「何となく異次元人テロの匂いがスル。ジャドーにも連絡しておいて…あら、テリィたん?あ、電力関係だから来たの?飛んで火にいる冬の虫だわ」
運悪く万世橋に顔を出し、ラギィに捕まる僕←
「ねぇ異次元人テロとの関連性を当たるよう、ジャドーのレイカ司令官に言っといてょ」
「無理。今宵のステイタスは第3新東京電力社員だ。ジャドーに御用命なら他を当たってくれ」
「え。何で?何か予定でもアルの?」
「予定?…あ、しまった!」
今頃プルカは服を着てるょ…停電テロリストのバカ!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら急に常連が沈殿スルようになって、実は困ってるw
「コイルがキツ過ぎるわ!」
「巻きが甘いのょ!」
「いやん。触らないで!」
メイド長のミユリさんの流儀で、御帰宅スル女子は全員メイド服着用なのでニワカには良くわからないが…
どうやらジャドーの科学顧問の天才ルイナにヲタッキーズのマリレとエアリ、そして僕の推しミユリさんw
全員がメイド服←
「またまたニギやかだな。今宵の出し物は何?」
「イオンメーヴェょ」
「イオン風の凧?何ソレ?」
「原理は…実は未だ議論中なの。ビーフェルド・ブラウン効果なのか、単なる誘電泳動なのか…とにかく!姉様の"雷キネシス"で発電してイオンリフターを飛ばす仕組みょ」
見るとカウンターの中のミユリさん(メイド服w)から怪しげなコード類が出て、灰皿みたいな小さな円盤に…
「あのね。私はスーパーヒロインなの。電気ウナギじゃナイのょ」
「まあまあ。論より証拠!姉様、テリィたんにも見せてあげたら?」
「え?うん。そぉね、テリィ様に御覧いただくのは良いコトだわ」
ミユリさんは、変身スルとムーンライトセレナーダーと逝うスーパーヒロインになる。
"雷キネシス"は、ムーンライトセレナーダーがココ1番の時に繰り出す必殺の光線技。
「テリィ様。ちょっち電気を流します。見ててくださいね…でも、何だか恥ずかしい」
その言葉とは裏腹に…カウンターから小さな銀色の円盤がピョーンと飛び上がって、空中にピタリと静止w
「コ、コリャ驚いた!"雷キネシス"でコレだけ飛ぶなら最終兵器の"アキバライザー"なら…ミユリさん自身も空を飛べルンじゃないか?」
「ええっ…そっか!その手があったわ!コレでミユリ姉様も私達と同じ、空飛ぶヒロインの仲間入りよっ!」
あ、ヲタッキーズのマリレはロケットガールだしエアリは飛行呪文で空を飛ぶ。ところが、ミユリさんは…
「ダ、ダメょ…オヘソにコンセントなんて」
消え入りそうな声で反対?"アキバライザー"はオヘソから発射ナンだけど、じゃ今は何処にコンセント?
「ミユリさんが電源なら拝金主義の新電力が停電しても大丈夫だし」
「そぉなのょ!数時間前にも停電したの。電力自由化してから増えたょね、無責任な停電」
「秋葉原ヒルズにある新電力の変電所で爆発があったンだ。ソレで僕も今まで仕事」
「あ。そーいえばテリィたんは第3新東京電力の社員だモノね。しかし、テリィたんがサラリーマンだナンて、今でも信じられない…でも、秋葉原ヒルズって、神田五軒町の方でしょ?あんな遠くの事故がコッチまで波及するモノなの?」
「電気って、生き物で貯めておけないからね。予防的に経路を遮断スル必要がアル。需給バランスが復旧スルまでさ」
「需給バランス?」
「YES。電気は貯めておけない。だから、発電スルそばから使ってバランスを取る必要がアル。新電力は、そんなコトお構い無しに発電したり、電気を売ったりしてるけど、誰かが使命感をもって需給バランスを調整スル必要があるンだ。さもないと、いつも街の何処かで停電が起きてたり、高電圧の電気があふれ出してたりする」
「ねぇ需給バランスが崩れたら、どーなるの?」
「"カスケード停電"が起きる」
「何?美味しいの?カスタード?」
「余り美味しくナイ。ブロックを崩して遊ぶジェンガを想像して。変電所はブロックだ。ブロックの多くは全体を崩すコトなく抜き取るコトが可能だ。でも、間違ったブロックを抜くと…全体が崩れてしまう」
「太平洋の向こう岸の国のNY大停電みたいに?」
「YES。1つの故障で5000万人が暗闇の中さ。後にはベビーブームしか残らない」←
「今宵、誰かが秋葉原でソレを狙ったワケ?」
「だとすれば、犯人は再び試みる可能性がアル」
脳内で変圧器に激突スルSUVがフラッシュバックw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、捜査本部に(なりたての)未亡人が…
「事件が起きる前に話をしたの!パパは、生きてたわ!そんな突然…」
「お気の毒です。奥さん、どうぞかけてください」
「ごめんなさい…信じられなくて。パパが死んだなんて」
「万世橋警察署のラギィ警部です。ご主人は、いつから新電力でバイトを?」
「年末からです。バイトにしては、手当がかなり良かったので。昼、働いて夜も仕事を始めたのは良いのですが、カラダのコトが心配で。異次元人だと思ってコキ使われて…でも、誰かがやらないと停電が起きる。実際、一昨夜も起きているのよ。原因は全て新電力の整備不良と聞いてるわ」
「え。一昨日も停電があったのですか?何処の変電所でしょう?」
「神田山本町」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
未亡人にお引き取り願い、捜査本部で捜査方針会議。
「一昨夜、秋葉原の外で停電が相次いだらしいわ」「最近、隅田リバー西岸一帯に停電が頻発してます。冬場の電力需要に需要調整が追いついてません」
「さらに、新電力では点検の人手が明らかに不足してます」
「ソレって…全て偶然なのかしら?」
ソコへアプリで会議に割り込むルイナ。
「あのね、みんな。偶然も必然も、全て数学的に説明できる現象なの」
「ルイナ。最近の停電頻発には関連性がアルってコト?だとすれば狙いは停電じゃなくて…」
「変電所?」
「でも、変電所に恨むを持つ者って…」
「停電頻発は、電力自由化へのダメージにつながる。送電系統全体が破壊される可能性は?」
「波及的停電が起きる可能性ならアルわ」
「でも、そのためには全変電所の停止が必要なのでは?」
「いいえ。1つで充分ょ。カスタード停電を狙うなら、次の標的は予測出来るカモしれないわ」
「方法は?」
「電力の潮流解析ょ。電力使用量と配電網の情報が必要だわ」
「ソレは、第3新東京電力に勤務のテリィたんにお願いしましょ」
「解析して、最も危険と出た変電所が次の標的ょ!」
第2章 電力自由化の挽歌
どーやら僕は何か頼まれるらしい。
でも…もう既に頼まれてマスけど…
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「ただいま。あ、テリィたん」
「プルカが御帰宅ナンて…珍しいな」
その夜"潜り酒場"に首都高HPのプルカが御帰宅。
"潜り酒場"の流儀に合わせ(超ミニのw)メイド服w
「今宵は忘れモノをお届けに。昨夜の…」
「え?あ、あぁ楽しかった…かな?」
「私も」
ぎゃ!愛用のスチームパンクのゴーグルだ。
プルカのペントハウスに忘れ物したようだw
「ア、ア、ア、アレから結局、夜までかかってさ」
カウンターの中のミユリさんは、めちゃくちゃ愉快そうにヤリトリを見てる。ヤバい。実にヤバい展開だ。
「あ。私、ホントにゴーグルを届けに来ただけなの。コレから万世橋で捜査会議ょ」
「そっか!じゃもぉプルカは逝かないとね」←
「もし機会があれば、また"その時"にでも」
流し目に超ミニのメイド服で回れ右、意味不明かつ全く不必要なモンローウォークでお出掛けするプルカ。
「またね。連絡するわ」
「…あら。プルカちゃん、もうお帰り?せっかく超ミニのメイド服なのに…テリィ様。思い切りウレしそうですけどヨダレふいて」
「か、か、か、彼女は忘れモノを届けに来ただけだょ?あはは…」
チラ見したら…ミユリさんの掌が青白く光ってるw
激ヤバ!ミユリさん"雷キネシス"を放電中だぜ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
("潜り酒場"を危機一髪で逃げ出しw)ジャドーのラボで解析作業中のルイナを激励に逝くとレイカがいるw
「あら、テリィたん。天才ルイナの解析作業を邪魔しないでね。停電テロリストを追跡中ナンだから」
「レイカ。僕は、大学にいた頃に停電生活をしようとしたコトがアル。その経験がルイナの解析に役立てばと思って来たンだ」
「まぁソローの"森の生活"ね?」
「いや。ロビンソン・クルーソーだ。昔、女の子とデートしてたら、突然戦争が始まって…」
「え。第2次世界大戦が?」
「湾岸戦争だよっ…彼女は、電気なしの生活が政治的信条の表明にナルと考えたワケだ」
「で、テリィたんは彼女への愛の表明になると?」
「え。うーん、まぁ、そーゆー見方もあるかな」
「で、付き合ったの?」
「ソレがw当時から進歩的だった僕達は、シェアハウスを…」
「シェアハウス?ソレって昭和な映画に出て来る"同棲"って奴でしょ?」
「違うな。ソレはフォークの世界だ。僕はニューミュージックだから…」
「お風呂屋さんの外で待たされ、小さな石鹸がカタカタ鳴って…」
「見てたのかっ?!とにかく!ストーブ代わりの電熱器…のせいで僕と彼女の同、じゃなかった、シェアハウスは終わった」
「貧しさに負けたのね。君達の失敗」←
ココでルイナがPCからガバっと顔を上げて叫ぶ。
「結果が出たわ!カスケード停電を引き起こす"カスケーダー"が次に狙う変電所はココょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その変電所はアキバの夜景を見下ろす暗闇坂の中腹。
「怪しい動きは?」
「ナイわ」
「ルイナの予測がハズレたのカモ」
万世橋の覆面パトカーの中に、ヲタッキーズのマリレとエアリ、そしてラギィ警部と部下達が三密で待機w
「ルイナの方程式は絶対ょ」
「…ねぇココにもあの2人は来るのかしら」
「どの2人?」
「テリィたんと…目下、テリィたんに猛アタック中の首都高HPプルカ」
「いい加減にその話、ヤメたら?ミユリ姉様が気にしてナイのにコダワリ過ぎょ」
「想像スルくらい自由でしょ?備えょ常にょ!」
その時だ!
「わ、タイヘン!秋葉原を見て!」
「ああっ!ブロック毎にネオンが消えていく?」
「しまった!別の変電所が襲われたのょ!」
夜風にのって、遠くサイレンの音が聞こえて来る。
「ヤラれたわ!」
「停電テロリスト"カスケーダー"のターゲットはココじゃなかったのね?!」
「じゃ何処なの?」
第3章 停電テロリスト"カスケーダー"
ソレは…神田栄町だ。
「手口は?」
「変電所のフェンス越しに、鉄筋の破片を変圧器に投げ込んだ模様です」
「ソレだけで、こんなに広い範囲が停電に?」
現場に駆けつけたラギィ警部は、部下から報告を受けつつ、責めるような口調で僕に質問をぶつけて来る。
「間違いない鉄筋だ。電導性が高く、そんなモンが投げ込まれれば、電力サージが大きい設備の許容量を超えて、下手すりゃ爆発、悪くて…現場は真夏の花火大会だな」
「ソレで…テリィたんも浴衣なの?」
あ!しまったwソコへ…
「テリィたんと"ホテル"で会食してたら、急に停電になっちゃって。状況は?」
「うーん貴女達は"終わり"ょ。最悪」
「待て!僕達は現場直近で"待機"してただけだ!」
あぁバカだなプルカ!ラブホの浴衣で出て来るカナw
ソレにしても厳寒期に浴衣って…メチャクチャ寒い←
「…隅田川の両岸を中心に、推定で6万世帯が停電してます」
「そりゃタイヘンだっ!予想どおり待機してたのに!無念だ!」
「テリィたん…ルイナが予測した変電所は、お茶の水の丘の上ょ。今回、ルイナは予測をハズした。貴方は、誰の予測で首都高HPと"待機"してたのょ(ってかミユリは知ってるのコレ?w)?」
うーん捜査の本筋から話がズレそうだ。
ココは大所高所からの意見を述べよう…
「処女…じゃなかった、諸嬢!落ち着け…」
「警部!犯人の死体が出ました!」
「ええっ?!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
栄町と新幹線ガードを区切る第4秋葉原高架橋下のフェンスに両手を広げ、空に向かってバンザイした姿で…
死体が引っかかっている←
「新電力に聞いたトコロ、今宵は点検作業の予定ナシとのコトでした」
「じゃあ…"彼"が停電テロリストなワケ?」
「失礼、警部。太めですが"彼女"です。感電して焼け焦げてますが、工作員お約束の黒いキャットスーツでした」
「フェンスに登り鉄筋を投げ込んで…逆に電流を浴びたンだ」
「電流を…浴びる?」
「電気は常に行き場を求める。フェンスの支柱に流れて彼…いや"彼女"を感電死させた」
「死体にIDはナシ」
「手が炭化して指紋の採取も無理です。ただし、炭化した血痕は"blood type BLUE"。彼女も…異次元人です」
「車の鍵かスマホは?」
「身元を語るモノは何も持ってない。異次元からの潜入工作員の鉄則ですけどね」
「"彼女"は、発見時と同じ状態?」
「はい、警部」
「じゃ貴方達が来る前に誰かがポケットを探った痕跡がアルわ」
「誰かが"彼女"の身元がバレるモノを処分した?」
「ソレと襟首に…"4B-27"のタトゥ」
「警部。ソレはタトゥではなく、特殊インクのプリントです。コレは、蔵前橋重刑務所の異次元人の囚人用に開発されたスタンプです」
「元・女囚なの?彼…いいえ"彼女"の身元を調べるのよっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部のメイン画面に、ヤタラとポチャポチャ系の女子の画像が写っている。"本名:デブ・フジコ"?
「え。フジコとくれば普通"ミネ"だょね?」
「いいえ。異次元人領事館に問い合わせたトコロ、マネーロンダリングでウチの経済犯罪班にパクられ、蔵前橋の重刑務所で4年間服役。半年ほど前に出所したばかりのようです」
「ウチの経済班に捕まった?ソレは、かなりの…(間抜けねw)」←
"リアルの裂け目"が開いたアキバは、今や異次元経由の"マネーロンダリング天国"と化しているのだ。
「しかし、テロ組織との関係は?せめてルパン一味が噛んでるとか。(異)次元は?」
「確認中だけど…あら?テリィたん、素敵な浴衣ね。寒くないの?」
「ラギィ警部、私語を挟むな!捜査中に白い歯を見せるな!…しかし、なぜ予測と違う変電所が襲われたんだろう?」
「ソレは…私のミスだわ。波及的停電が目的だと思っていたから…あら?テリィたん、カワイイ浴衣!」
今度はルイナだ。わざわざジャドーからお目見え?
「ココはアキバだからコスプレしてる。そーゆールイナもメイド服だろ?…しかし、コレで動機も容疑者も見込み違いってコトだな。どーする、ラギィ?」
「警部!フジコのスマホの通話記録です。3日間で12回以上かけた相手はライル・ドナヒ。電気技師で公共事業委員会の元・委員です」
「元・委員って何ょ?」
「データベースに照合したら、2019年に電力不足を煽った価格操作で一儲けした、とあり…うーん電力価格操作の罪で2年半の服役か。おや?蔵前橋重刑務所にブチ込まれてた時期が停電テロリストと重なりますね。しかも、女囚同士」
「停電の頻発は、電力価格に直接影響スルわ」
「カスケーダーは再犯でしょうか?」
「未だわからない。ただ、カスケーダーが電力価格操作の新しい方法を模索してるコトは間違いナイわ。とにかく!ライル・ドナヒを捕まえて。何もかも調べ上げるのよっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
刑事達はドナヒを求めアキバに散り、後に残された僕とルイナはミユリさんの"潜り酒場"に御帰宅スル。
「おかえりなさいませ、テリィ様。偶然、テリィ様のコトを考えていたトコロですが…あら?カワイイ浴衣ですね」
「え。ミユリさん!考え過ぎないで!」
「シナプスの反射性について面白い論文を読んだけど…テリィたんの認知発現理論に役立つかしら」
ミユリさんと僕とルイナ。テンデンバラバラな会話。
バーだから仕方ないか。僕以外がメイド服なのも変w
「僕の認知発現理論?」
「今度の容疑者は、公共事業委員会の元・委員ナンでしょ?カスケーダーの犯行目的は、公共料金の操作ってコトね?」
「うーん供給停止は、確かに自由化した電力市場に大きな価格変動を引き起こす。ソレは誰かに大儲けするチャンスを与えるってコトだ。投資の仕方さえ正しければね」
「じゃカスケーダーは、自由化された電力市場で大儲けスルために停電を起こしてるの?」
「でも…ホントに価格変動が目的なら、もっと効果的な変電所を狙うハズだな」
「まぁ。では、カスケーダーの目的は?」
「それはわからない。局地的な停電を好むテロリストってナンナンだろう」
「ソレだわ!私、今までは大きな目的ばかりを想定してきた。波及的系統停電や電力市場操作とか」
「その通り」
「カスケード停電は、その副産物扱いでした」
「ソレこそが真の狙いってコト?」
ルイナは(浴衣姿のw)僕を指差し、大きくうなずく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何ゴトかヒラめいたルイナを送りジャドー司令部へ。
「あら。テリィたんも一緒?」
「うん。ルイナが急に産気づいてさ…」
「違うでしょ!ヒラめいたの!」
ソレだけ叫んでルイナは解析作業に超没頭←
「テリィたん、ミユリは御屋敷に残して来たの?」
「うん。ルイナを1人でジャドー司令部に逝かせるワケには…真夜中のアキバは物騒だから」
「ルイナは国家財産級の天才ょ。彼女の動きは、常に衛星軌道から見守ってる。ソンなコトより、最近ミユリとはどーなの?」
「何で?」
「私には言えない何か?」
「ねぇ何のつもりさ」
「別に」
「まるで捕虜の尋問だ」
「実は、ラギィから話を聞いたの。テリィたんにカケヒかけてる子がいるって。スゴいワケありな様子だったって。ホント?」
「だから?」
「前にミユリをどうすれば上手く推せるか、話をしたわょね?でも、テリィたんが真剣になれないなら、全て無駄だと思って」
「悪いな、司令官。今、その話をスル気はナイょ」
交渉決裂?ヤバい…と思ったら、捜査本部と会議アプリでオンラインのルイナのスマホから重大な情報が…
「ラギィ警部!手配中のライル・ドナヒが風俗でカードを使用しました。店はパーツ通りです!」
「全班、パーツ通りへ!」
「了解!万世橋警察署から捜査全班…」
アプリの向こうの捜査本部は騒然となるw
「あらあら。テリィたんも現場に行って。ヲタッキーズも向かわせるわ」
「レイカ。僕は、ミユリさんを真剣に推してるょ」
「何処が?テリィたん、二股でしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
流行りの"おデリ"だw
お出かけ+デリヘルの"おデリ"は、カフェでお目当てがいたら"お出かけ"して、その後は…
古今東西、同じ形態の風俗は何処にでもアルが…もちろんメイドカフェとは対極の世界の存在w
「あら?貴女達、ヲタッキーズ?」
「同じメイド服着てるよしみで教えて。約20分前、カード払いしたライル・ドナヒってどんな奴?このスマホ画面の男ナンだけど」
「え。こんな顔、見たコトなーい。ねぇ誰か?」
客待ちカフェは、鰻の寝床の狭さにメイド服女子と客がゴッタ返してる。
同じメイド服を着ているマリレとエアリには、みんな協力的ではアルが…
そもそも風俗で本名を名乗るバカはいない←
「ヲタッキーズ?アンタ達、ミユリ姐さんトコの子かい?ちょっと待ちな。伝票を見てあげるから」
カウンターの中のヤリ手ババァみたいな大御所メイドがくわえ煙草で伝票を調べ出す。
「あぁコレね。この人だわ。ん?でも、アンタ達のスマホと顔がマルで違うわね。アンタ、誰なの?」
大御所メイドがカウンター席の客の男を指差す。
その瞬間、男は真っ青になって出口へダッシュ!
「キャー!」
「あらあら。ウチの子を突き飛ばさないでょ!傷モンにしたら承知しないよっ!」
「おっと、お出掛けかしら?いってらっしゃいませ、御主人様。万世橋警察署ょ」
男が勢いよくドアを開けたら…ラギィ警部と警官隊w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。
男は覆面パトカーの後部座席にいる。
場所は、地下アイドル通りの路地裏。
「どの車なの」
「向こうの白のセダン」
「警部。私達が見て来ます」
刑事達が目線で拳銃を構えて、セダンに接近スル。
運転席の動かぬ人影に近づき脈をとり…首を振るw
「俺じゃねぇ!もう死んでたんだ!」
刑事達がドアを開けると男の死体が転がり落ちる。
「ライル・ドナヒです。額に1発で仕留めてます」
「こりゃプロの仕事だ。ストリートの連中にはムリですね」
「あの男がカードを盗んだ時には、もう死んでた。死んだデブ・フジコ、ライル・ドナヒ以外に電力の価格操作に関わってる者がいるってコトね」
「自由化された電力市場で大儲けを企む投資家?」
「しかも、そのコトを知られたくない奴等ですね」
「ソレが誰で何人なのか、見当もつかないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところが、見当はつくw
さすがは天才ルイナだ←
「注目する方向を間違えてたわ!」
捜査本部にアプリを通じてルイナの大きな声が響く。
「その前にライル・ドナヒは捕まえたの?彼、何か喋った?」
「ゴメン、ルイナ。殺されちゃってた。自由化された電力市場の闇って奥が深そうょ」
「でも、価格操作は関係ないの!」
驚くラギィ警部。しばし絶句スル。
「どーゆー意味?」
「あのね。関係スルのは停電ょ」
「停電?」
「YES。集合論で考え直したら共通点が浮上した。説明するわ。刑事さん達を会議室に集めて!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の会議室には、今まで何度も難解局面を打開して来たパツキン姉さんへの期待が高まる。
「万世橋警察署のみなさん。いよいよ、みなさんに所轄の意地を見せていただく機会が参りました!」
「おおっ!」
「正面のスクリーンを御覧になって。今までに襲われた3つの変電所と、停電被害に遭った地域のマップです。コレが最初の停電エリア」
スクリーン上の地図の一部に網掛けがかかる。
「そして2件目。拝金主義の新電力が雇ったバイト作業員が亡くなった時の停電エリア。旧町名だと神田山本町の辺りね」
さらに、もう1ヶ所、網掛けがかかる。
「最後はコレ。神田栄町界隈。ココでは、異次元人女スパイが死亡。でね。この3つの停電エリアには、重なる場所があるの。統計的に有意な範囲内でね」
「おおお。でも、姉さん!なぜ3日連続で停電させたのかな?」
「ソレなのょ。そうする必要があったのょね、きっと。でも、ソレが何かがワカラナイ」
「隅田リバー沿いのかなり広いエリアだな。ウチの管轄外だし…でも、秋葉原発の事件だから、ココでウチが所轄の意地を出さないと」
「この停電が重なった地域の何処かで強盗してるとか?証券会社や投資銀行、美術館とかも多いエリアだけど…特に被害届とかは出てないな。姉さん!もう少しエリアを絞れねぇか?」
「今あるデータじゃコレが限界。情報が足りないわ。他に何かナイ?何でも良いンだけど…」
「姉さん!ライル・ドナヒの車の中で、奴の手帳を見つけた。めぼしい情報は全部拾ったが、最後にワケわかんない算数の宿題が残ってて、実は持て余してルンだ」
「あら、算数の宿題は大好物ょ見せて!」
アラフォーの刑事がホッとした顔をして、手帳をアプリに示す。会議室のスクリーンに難解な数式が映るw
「まぁ!ダンツィク・ウルフ分解法、キター!ソレも実に高度に使いこなしてる!うわぁゾクゾクしてきたわ!」
「姉さん、何かわかるか?」
「少し時間を頂戴。その間、みなさんはライル・ドナヒの仲間を探して!」
「合点だ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何か盛り上がる会議室から、僕はラギィを呼び出す。
「ラギィ。少しいいか?レイカに話した件だけど」
「あ。テリィたん、悪かったわ。確かに、私が言うことじゃなかったカモ」
「全くだ」
「ミユリとは上手くいってると思ってた。彼女、いつも幸せそうだし」
「ラギィは何もわかってない。気持ちは嬉しいけど」
「ごめーん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
次にジャドーのラボに顔を出すと…案の定、ルイナが頭を抱えている。やっぱりな。ソンな気がしたンだ←
「あ、テリィたん。実は…ちょっと行き詰まっちゃってるの。助けて」
「だょな?3つの停電は、電気街に直接影響を与えない。しかも、変電所はそれぞれ離れた地区にあり、復旧スルまで街は停電したママ…余りに条件がランダム過ぎる。で、ドナヒは何を計算してたの?」
「彼はね。新電力が事故対応にかかる時間を予測してた。ラギィからもらったデータだと、ホボ彼の計算どおりの時間で、新電力は停電を復旧させてる」
「うーん一向に真の標的は見えて来ないね。つまり、停電の意味は不明ってコトだ」
「そーなの。思いつく限りの順列を試して、何度も計算し直したけど、停電の意味を絞り込めない」
「…ねぇルイナ。今回襲われなかった他の変電所は?」
「え。ドレも計算外だけど?だって…関係ナイでしょ?」
「ソレが間違いだ。ナイ関係がアル」
「何言ってンの?英文法?」
「あのさ。他の変電所は、襲撃してもターゲットを停電させられナイ変電所だ」
ルイナは、突然立ち上がって大声で叫ぶ!
「排他的アプローチねっ!そっかー!他の変電所を分析すれば、真のターゲットが浮かび上がるわ!」
「な?実に効果的な方法さ」
「テリィたん、天才!抱いてー」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
もちろん抱かないw
ってか、俄然解析作業に超没頭するルイナにはラボを追われ、レイカにはジャドー司令部自体を追われるw
「テリィたん!」
「あ、プルカ!捨てる神あれば拾う神…いや。今宵も会えるとは運命、いや、もはや宿命を感じるな!」
「フン何ょ毎晩チャンス逃してるくせに。この秋葉原のお調子者!」
真夜中のパーツ通りに放り出された僕を出迎える?超ミニスカポリスは…背徳のスキャンダル、プルカだw
「僕がチャンスを逃す?…おいおい。プルカには、別れ際またの機会に、と逝ったハズさ」
「今度、異次元人絡みのマネーロンダリングを暴くコトになった。政財界の大物も巻き込む史上最大の疑獄事件に発展スル可能性がアルわ」
「まさか、伝説の異次元人洗濯屋タバス・キアン絡みか?確か蔵前橋の重刑務所に収監中だったょね?」
「YES。"リアルの裂け目"のコチラ側で司法取引が成立、捜査に協力するコトになったの」
「そりゃスゴいな。しかし…"異次元のMr.ブラックリスト"と呼ばれた彼のコトだ。彼が証言すれば、アチコチで大勢の血が流れる。タバス自身も命を狙われるぞ?」
「だから、私とタバスは南極の隠れ家に行くの。ソコで全てを供述させる予定ょ」
「出発は?」
「今日。神田リバー水上空港から飛行艇の特別機で移送の予定。向こうに着いたら連絡スルわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「わかったわ!」
そう叫びながら、真夜中の万世橋警察署へと駆け込んで来たのはメイド姿のルイナだ。
国家的天才であるルイナには、完全武装の特殊部隊が護衛に付き恐らく衛星軌道には…
「ルイナ?カスケーダーの正体が絞れたの?」
「あ、ラギィ警部!ねぇ秋葉原にある変電所は、この12カ所。ドレでも電気街を停電させられるわ。そして、ココが3つの停電地域が重なり合うエリア」
「でも、ソレじゃ範囲が広すぎルンでしょ?」
「今宵は未だ続きがあるの。重要なのは、実はドナヒ達が選ばなかった変電所の方なのょ」
「え。ソッチ?」
「そーなの。残り9カ所の変電所では、停電させられないエリアがあって…でね、その停電させられないエリアと、過去の3つの停電地域が重なるエリアに、恐らくカスケーダーのターゲットが潜んでる。地図のこのエリアょ!真のターゲットはココにアルわ、エッヘン!」
「え。ま、まさか。ソンな…」
「あら、ラギィ。ココには何がアルの?」
万世橋の敏腕警部は頭を抱える。
「蔵前橋の重刑務所。コレは…もしかスルと、脱獄計画だわ」
第4章 脱獄と追撃のルンバ
蔵前橋重刑務所。
隅田リバー近くにあり文字通り重犯罪を犯した囚人が次元を問わず収監されている。警戒厳重のハズだが…
「所長。もし刑務所が停電したら?」
「お手上げだ。監房のドアの開閉やロック、監視カメラ全ての自動制御が効かなくなり、囚人は脱獄し放題になる」←
「え。でも、みなさんが止めるンでしょ?」
「無理。仮に戦っても勝ち目はゼロだ。次元を問わない選りすぐりの凶悪犯2200人に対し、請負契約の看守は45人だ」
「ソンな威張られても…しかし、ソレじゃ看守は良くて人質、悪けりゃ皆殺し?」
「そうならないよう、万一の場合には安全に逃げるよう、常に訓練に励んでる」
アンタ達が安全に逃げてどーすんの?!
ラギィは同行した僕と顔を見合わせるw
「停電のバックアップシステムは?」
「もちろん完備だ。30メガワットの4つの発電機が電力が低下すれば自動で作動する」
「何処にありますか?」
「地下2階で囚人は近づけない…おや?貴方は国民的ヲタク作家のテリィたん?息子が"地下鉄戦隊メトロん5"のファンです。ぜひサインを…」
チョビ髭の刑務所長は、途端に相合を崩しマイホームパパの顔になって僕とラギィはますます不安になるw
「自家発電機を地下に置くのは、竜巻の多いアメリカンな設計思想で、むしろココなら隅田川の氾濫を警戒し高台に設置すべきです。ダムバスターズ617中隊の攻撃で堤防が決壊、自家発電機が水を被ったら福島原発の二の舞ですょ?」
「え。テリィたんってRAFヲタなの?ま、カタいコト言わズに息子にサインを…」
ラギィ警部がエヘンエヘンと咳払いし話を元に戻す。
「所長。至近の1週間で変電所事故に伴う停電が頻発しましたが、停電の夜に何か変わったコトは起きませんでしたか?例えば、何者かが忍び込み、発電機に細工したとか?」
「あ、警部さん。未だいたの?いや、何もなかった。脱獄や潜入のための停電だとすれば、明らかに空振りだ。影響は皆無」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕とラギィは刑務所を出る。
徒労感に押し潰されそうだ←
「どーやらタバスの脱獄は無さそうね」
「確かに、殺されたドナヒにつながる囚人はいなかった。仲間も見つからなかったね…でも、何でラギィは仲間がいると思うワケ?」
「え。だって、現にドナヒは誰かに殺されたじゃない」
「確かにソコまでは、ホボ確実ナンだけど…」
「え。テリィたん、どーゆーコト?」
ラギィは、僕の顔を下から覗き込むように見上げる。
妹キャラ全開?珍しいょ。よっぽど困ってルンだな←
「ラギィは、いつもボトムアップで考えるょね?始まりを拝金主義の新電力が雇ったバイト作業員においてるだろ?」
「ランデ・マルズね?」
「そして、ライル・ドナヒに行き着き、今はその線上で捜査を展開してる」
「うーんソレが犯罪捜査のセオリーだけど」
「そのセオリーさ、アキバではひっくり返してみなょ。1959年、ファインマンが講演して以来、世界中の科学者の考えがひっくり返って、猫も杓子もミクロの世界に目を向けるようになったょ?」
「テリィたんは、ヲタクの世界に目を向けろと?」
「YES。常に上位の関係性ばかり追求してると疲れナイか?最下位の廃人になるつもりで、捜査の向きも逆にしたら?」
ラギィは、急に腕を組んで何ゴトかを考え出す。
「ランデ・マルズと変電所の関係性を洗い直してみたりってコト?」
「考える価値、ナイかな」
「…テリィたん。やっぱり貴方は最高のオタクょ」
突然、ホッペにキスされるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
全く同じ時刻。万世橋の捜査本部では…
ヲタッキーズのマリレとエアリの会話。
「どうも蔵前橋重刑務所は、カスケーダー一味のターゲットじゃなかったみたい」
「何で?」
「現場でテリィたん達が停電のバックアップシステムの存在を確認した。ターゲットは別ね」
「そぉかな。絶対、刑務所だと思うけどな」
「でも、3回とも停電時にシステムが作動して全く問題はなかったそぉよ」
「ルイナが、影響は必ず閉鎖系の中に現れるって言ってたけど…」
「難しい数学の蘊蓄はNG。とりあえず、ミユリ姉様に経過報告だけしとくわ」
「…数学の蘊蓄じゃなくて、ヲタクの常識ナンだけどな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じく同時刻。ジャドー司令部では…
「レイカ司令官、タイヘンょ!」
「どぉしたの、ルイナ?」
「テリィたんに言われて考え直してみたら…蔵前橋重刑務所とカスケード停電の関係性がわかった…よぅな気がスル」
「ライル・ドナヒでしょ?」
「いいえ。最初の感電作業員ランデ・マルズょ。さっき、異次元人領事館のデータベースをハッキングしたら、マルズは異次元で大規模マネーロンダリングを行う資金カルテルと密接な関係にあるコトが判明」
「ソレって、近々司法取引する予定の大物洗濯屋タバス・キアンと同じ組織じゃないの!」
「そぉナンですか?」
「タバス・キアンは今、蔵前橋重刑務所の誰1人近づけない独房に収監されてる。証言を条件に司法取引をスルためにね。確か桜田門が南極のセイフティハウスに移送予定だとか」
「そぉ言えばラギィ警部が、停電に乗じて脱獄計画がアルって言ってたけど…刑務所には自家発電機がアルから停電の影響は皆無で思い違いだったって」
「ソンなバカな。何か影響は出てるハズょ」
「警部は、刑務所まで行って調べた結果、影響は皆無と言い切ってる」
レイカ司令官は考えをめぐらす…実は彼女はゲーセン店員のコスプレでSFスーツ姿ナンだけど…萌えるなw
「自家発電機は、3回の停電とも正常に作動したのね?燃料は何かしら」
「ディーゼルって聞いてる」
「アレだけの巨大施設だモノ。燃料の消費量は相当なハズょね。3回使えば4回目の停電では、燃料切れになるカモ」
「そっか!そうならないように、急いで燃料補給するハズだわ」
「タンクローリーだわ。刑務所に入構スル臨時のタンクローリーがカスケーダー一味の真のターゲットょ!」
「ソレでタバス・キアンの脱獄を?」
ルイナの推測に、レイカ司令官は首を横に振る。
「あのね。タバス・キアンは、仲間を裏切って司法取引に応じたの。裏切者を助け出すために脱獄計画ナンか立てナイわ。前提が逆ょ」
「じゃ…裏切者を"消す"ため?」
「タバス・キアンが危ない。彼を殺しに、異次元からの殺し屋部隊がタンクローリーに潜んで乗り込んで来るわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「4th gate open!4th gate open!」
「quickly!quickly!」
「alright?let's go!」
蔵前橋重刑務所の両開きの鉄扉が重々しく開き、大型タンクローリーが構内に入場スル。
直ちに大勢の看守がタンクローリーに殺到、手に手に電子機器やミラー片手に点検開始。
「OKだ!タンクローリーに異常ナシ」
「入構を許可!」
「ん?どうした?エンストか?」
ココでまさかのエンストだ。親切そうな看守が入構証を挟んだ画板をドライバーに渡しながら声をかける。
「どーした?何か手伝おうか?」
「あ、ドライバーは異次元人だ。言葉は通じないぞ」
「私も異次元人です。通訳しましょう」
さらに輪をかけて親切そうな看守が、ドライバーに声をかけようとスルのを見て、助手席にいた男が叫ぶ。
「やっちまえ!」
彼が手にスル銃は、銃口がラッパ型に開いた音波銃。
さらにタンクローリー上部ハッチから黒装束の男が…
異次元人の特殊部隊だw
たちまち看守全員を打ち倒すが、タンクからゾロゾロ出る男達は数を増やし、バックパックを受取り整列。
「ゲートの看守全員を無力化」
「戦闘工兵は警報をカット」
「マッドマックスΟ作戦、発動!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。別ゲートからプルカも刑務所に入構スル。
「首都高HPのプルカょ。タバス・キアンの移送手続きに来たわ」
「御苦労様です。武器の携帯は禁止ですので、ココでお預かりします」
「愛用のベレッタょ。よろしくね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
少し遅れ僕とラギィは 4th gate に到着スルと屍累々w
「ああっ!看守は全滅だ!」
「遅かったわ。テリィたん、非戦闘員の貴方は私の影に隠れて」
「タンクローリーのタンクは空だ。中に異次元人の傭兵が隠れていたに違いナイ。映画のパクりだw」
タンクを叩くとガンガンと空っぽの音がスル。
「手際が良過ぎるw特殊部隊の仕事だね。既に潜入したみたいだ」
「ジャドーの特殊部隊を要請スルわ。看守45人が味方だけど…かなり数が減ってるカモ」
「時間を稼ぐんだ。ヤルしかナイ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、プルカは厳重な手続きを経てタバスと会う。
「首都高HPのプルカ。私が貴方を目的地まで護送スルわ」
「何とミニスカポリスとは。期待以上の出迎えだな。さすがは秋葉原だ」
「全所員に警告!武装侵入者あり。今から全施設の封鎖を開始スル。繰り返す…」
突如、大音響の警報ブザーが鳴り響き、アチコチの鉄扉が黄色いライトを点滅させながら自動閉鎖。
プルカは、反射的に腰のホルスターに手をやるがソコに銃はナイ…唇を噛んだ次の瞬間、殺人音波!
「プルカ、伏せて!」
「ラギィ警部?テリィたんも?どーして…」
「おい、ミニスカポリス!俺は取引したんだ!パンツ見せてないで俺を守れ!」
突入して来た異次元人の特殊部隊は10数名、対するコチラの武器はラギィの拳銃だけだw
たちまち撃ち負けてラギィは弾切れ、冷静に発射音をカウントしていた異次元人が叫ぶ。
「おい、ヲタク!お前達はゲームセットだ!コチラにはロケット弾もある!降伏しなければ、殲滅だっ!」
「おい、ミニスカポリス!俺の上に覆い被され!」
「え。嫌ょ」
この期に及んで、プルカの巨乳狙いでタバス・キアンは法外なリクエスト。最後の願いって奴か?
おいおい。でもさぁタバス、男としてお前の気持ちはワカルけど、何となくソレってズルくない?
「待て!先ず僕がアンタに覆い被さる。プルカはその上に覆い被さるってのはどーだ?」
「ダメだ!それじゃミニスカポリスの巨乳はお前の背中で潰れるだけだろ?」
「でも、アンタへのカバーは二重になるんだぜ?」
「わかってねぇな。コレは死ぬ前の最後のお願いって奴だ。カバーの問題じゃねぇんだょ!」
「じゃ同じ最後のお願いになりそうなプルカの願いも聞くべきだ。プルカ、君の巨乳を推し当てるのは僕の背中?それともタバスの背中(何か金の斧、銀の斧みたいだなw)?」
「ソレは…テリィたんの背中」
やった!ところが、僕が歓声を上げるより早く、天上より凛とした声が響くw
「私のTOに手を出さないで!異次元人の特殊部隊も…ソレから、プルカもw」
見上げたら…ムーンライトセレナーダー?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。蔵前橋重刑務所には万世橋のみならず、近隣の警察、消防からのパトカーや救急車で大混雑だ。
潜入した異次元人特殊部隊員の数だけ黒焦げになった重傷者?が、次々と担架で運ばれて逝くのを見て…
「ムーンライトセレナーダーの"雷キネシス"ってスゲェ威力だな。一撃で特殊部隊がイチコロだ。ウチのシンジケートに欲しいくらいだ」
「タバスさん、あのね。彼女は金じゃ動かないょ。しかし、今回は室内とはいえ空中からの発射だったから、確かに破壊力がハンパなかった。彼女もイオンリフターで空を飛べるようになったンだなぁ(遠い目w)。こりゃ暫くは無敵だね。な、プルカ?」
「今回は…彼女に救われたわ。素直に認める。でも、私は借りは返す性分なの。ムーンライトセレナーダー、いつか必ず借りは返すから!」
そう逝って、プルカは僕の胸に拳を当てるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「ミユリさん。ムーンライトセレナーダーが空を飛ぶ仕掛けだけど、アレってイオンリフターだょね?」
「えぇ。まぁ実はジャドーに作ってもらったのですが、コスプレに仕掛けがあって…」
「ソレで、いつもの黒のヘソ出しセパレートが白に変わったワケ?あのコスプレの何処にイオンリフターが?」
「えっとボトムに仕掛けてアルのですが…ソレと白に代えたのは、黒だと確か私のTOが悪の女幹部みたいだとおっしゃるので…」
「え。ソ、ソ、ソンなTOは即刻…と、とにかく!僕は、この御屋敷のオーナーだ。メイド長は口を出すな」
ココでナゼか常連からヒューなんて冷やかしが入るw
「はいはい。メイド長と逝ってもレジ担当者みたいなモノですから。私のスタンスなど…」
「あ。ソレ、レジスタンスにかけた洒落?ソレから、
イオンリフター仕掛けのボトムなら、コレからは"ロケットパンツ"って呼んだらどーかな?」
「却下。でも、テリィ様が絶対そうおっしゃるハズとレイカが逝ってましたクスクス」
「え。ジャドーの沈着冷静な司令官とも思えない戯言だな。他に何か逝ってた?」
「テリィ様の巨乳好きは気にするなって」
「あのさ。今回は、襲われなかった変電所から解析を始める"排他的アプローチ"が功を奏したワケだ」
「ハイ」
「つまり、僕がアプローチしない微乳こそが真実の推し…ぎゃ!」
「あ。ごめんなさい!"雷キネシス"が勝手に放電して…私、電気ウナギなモノで。まぁ!テリィ様が真っ黒焦げだわ!どぉしましょう!でも"後悔、先に立たズ"です」
瞬時に"焦げた"僕は、カウンターの中のミユリさんを睨むが、彼女は涼しい顔をしてるw
実は、お詫びの言葉も考えてたけど逝うのはヤメだ。だってこの雰囲気じゃ逝えナイだろ?
"巨乳、役に立たず"なんてさ。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"停電"をテーマに、系統停電を狙う異次元人組織、その手先のバイト作業員に女スパイ、彼等を追う首都高ハイウェイパトロール、地元警察、防衛組織の司令官や顧問の天才、そしてヲタッキーズ、逃げ惑うお出掛け風俗のメイド達、カード泥棒、拝金主義の新電力などが登場しました。
さらに、首都高美女の巨乳騒動、ヒロインが空を飛ぶようになる顛末、本シリーズに頻出する蔵前橋重刑務所の様子などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、コロナ第6波で"まんぼう"下にある秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。