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新世界魔導士セリナ  作者: 葵彗星
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第57話 野外演習の結果発表

 だがそのセリナの思案を遮るかのように、一人の女子生徒の声が響き渡る。


「いつからここがあなたの家になったの?」


 聞こえてきたのは、ロゼッタの声だった。あまりに時間が経っても洞窟から出てこないセリナが気になって、引き返して来ていた。


「あぁ、ロゼッタ。ごめんなさい、もう大丈夫よ!」


「あなた走れる?」


「大丈夫よ、集合地点までそう遠くないでしょ。身体強化かけて、全速力なら……」


「私も同じことできるけど……」


「え?」


 ロゼッタもセリナと同じ方法で戻ろうとした。そしてその直後に、セリナは妙な対抗心を燃やしてしまう。


「……競争する?」


「けっこう」


 ロゼッタは無粋に断り、直後助走もつけず全力で走り去った。


「あぁ、ちょっと!」


 あまりのロゼッタの行動に呆気に取られたが、セリナもジッとしているわけにはいかない。ロゼッタと同じく、身体強化を脚に集中して掛け、全力で集合地点まで走って行った。


 しばらく走っていたがセリナは驚愕した。自分も相当全力で走っているにもかかわらず、ロゼッタに追いつくどころかその姿すら捉えられないでいた。


(ロゼッタ速すぎ! 身体強化まで得意なの?)


 とても自分の身体強化では追いつけないと感じ、またもロゼッタの評価を上げた。しかしそんなセリナは気づいていなかった。この時のロゼッタは、密かに自分に対し力量の差を誇示していたことに。



 セリナ達含め、10組の生徒は全員集合地点まで戻った。やや時間が切れた後で戻った生徒も多数いたが、野外演習用の全敷地となる森全域はかなり広く、戻るまで20分近くかかった生徒もいた。


「全員戻ったようですね。では討伐数が表示された板を出して!」


 アグネスが指示し、全生徒が灰色の板を手に持った。そしてアグネスが右手を添えると、それに連動するように、全ての板が生徒達の頭上に浮かび上がり、模擬戦でも活躍した審判鳥ジャッジオウルがその板を一つ一つ確認する。


 個人での最多討伐数はフィガロで数は31、ペアでの最多討伐数は57でロゼッタの組であることを審判鳥が告げた。


(やっぱりロゼッタ組に負けたか。私が23で合計で54、たった3体の差って。もっと真剣に戦ってたら……)


 カティア達もその数字を確認するものの、あまりの数字の大きさにセリナとは違う感想を抱く。


「いくらフィガロとロゼッタでも、多すぎじゃね?」


「そうね、そもそも30以上の数を出しているのがフィガロとロゼッタだけっていうのは……」


「私達は精鋭級の討伐に時間取られたから、しょうがないでしょ」


「でもセリナの討伐数も23とかになってる!」


「え?」


 遅めに到着したセリナの討伐数をカティア達はここで初めて確認する。それを見たセリナも、どう返答すればいいか迷った。


「あの、これはね。その何というか……」


「私達の平均が15よ、最多でミリアの18。ちょっとあなた達だけ、飛び抜けすぎじゃない?」


 だがそんなカティア達の疑問には、アグネスが答えることになる。


「皆さんの中には、鍾乳洞の中に入り多数の災魔を倒した生徒もいます」


「鍾乳洞……って、そういうことか!」


「あぁ、もっと早く気づいていたら」


 しかしカティア達の評価が上がるポイントもあった。


「では討伐数成績はこれで終わり。討伐数と同数のポイントを各生徒に付与します。なお討伐数上位3名の生徒には、ボーナスで10ポイント付与します。次は特別賞の該当者を言います」


「え、特別賞?」


「何それ?」


「討伐数とは別に……ってこと?」


「も、もしかして……」


 ここでカティアは内心ほくそ笑んだ。そしてその予想は的中することになる。


「カティア・クラン・リスパ、精鋭級のライノを討伐したことで、プラス30ポイント授与します」


「本当ですか? やったー!!」


「はぁ? ちょっと待ってくださいよ。俺は!?」 


 ザックスが当然のように異を唱える。


「ザックス、あなたには20ポイント授与します。準特別賞です。オルハの支援もありましたから、あなたにも20ポイント授与します」


「いや、それは……嬉しいんですが、その、俺があの犀を……」


「ザックス、あくまでとどめを刺した生徒が優先です。それにあの高さから大瀑布スプラッシュフォールを、岩に命中させたのは見事です」


 アグネスはカティアの戦いぶりをちゃんと見ていた。入学後初めて教師からべた褒めされたカティアは、嬉しさでたまらない。


 その様子にザックスだけでなく、ミリアも不満げな表情を隠せない。内心は対抗心で溢れていた。


(くぅう……次は絶対私が倒すから!!)


「ザックス、さっきも言ったようにあなたの戦法にはいささか問題点があります。解毒薬を忘れた点も大いにマイナスです」


 ザックスは悔しがる表情が消せない。隣にいたホークは小声で「ドンマイ」と肩を叩いた。セリナはカティアの健闘を称えた。


「凄い、精鋭級の犀倒したの!?」


「ま、まぁね。私の大技、あんたにも見せたかったなぁ」


「調子に乗らないでよ、カティア。あくまで3人がかりだからね」


「何言ってんのよ、ミリア。討伐数は一番稼いでたくせに」


「言ったわね。私が精鋭級に逃げ惑うと思ってんの?」


「もう、二人とも落ち着いて。先生が……」


 当然そんな諍いを認めるほどアグネスは寛容ではない。すぐさまカティアとミリアに忠告した。


「二人とも、いい加減にしなさい」


「は、はい……」


「いいですか、いくら精鋭級を倒したといっても自惚れてはいけません。それと、一人で倒せてないとか、複数人で倒したとか、そんな下らないことで言い争って、肝心の敵を倒すという目的を忘れては元も子もありません。最終的に、強敵相手には複数人で協力して倒す。それが実戦で大切になっていきます。特に……」


 最後の最後でアグネスは全員に強調して話した。


「一昨日の模擬戦で現れた将軍級の災魔なら、尚更です」


 アグネスの忠告に全員真剣に耳を傾ける。ミリアも冷静を取り戻し、顔を引き締める。そしてアグネスの説明が一通り終わると、一同は校舎へ戻って行った。

第57話ご覧いただきありがとうございます。次回もまた一週間後となります。


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