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新世界魔導士セリナ  作者: 葵彗星
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第49話 ディアナとレギオス

 彼女が現場に辿り着いた時、数名の騎士団がその災魔を相手していた。将軍級と報告を受けていたので、彼女自身も魔導筆を構えて現場に急行した。


 しかし到着して愕然とした。その姿は何度も見慣れた精鋭級の竜だった。大きさは確かに成人の数倍ほどはあり、巨大な翼を携え口から炎も吐く。選りすぐりの騎士団なら数名程度でも倒せるはずだった。


 にもかかわらず現場にいた騎士団数名は負傷し、苦戦を強いられていた。


 ディアナはそんな彼らに愕然としながらも、すぐ筆をしまい、片手で火球を放ち一瞬で竜を焼き尽くした。すぐさま負傷し倒れていた団員を治癒した。


 団員達の自分を見る目は、人を見るそれではなくなっていた。自分達で大苦戦した精鋭級の竜を、片手で焼き尽くした事実は彼らにとって簡単に呑み込めるものではなかった。


 もちろんそんな視線も彼女には慣れていた。学園内でも彼女の強さは規格外なのだ。 


(精鋭級ごときでここまで苦戦するとは、騎士団もおちぶれたか……)


 彼女にとっては、彼らの実力の低さに落胆せざるを得ない。すると一人の男性の声が彼女の耳に入ってきた。


「相変わらず、万全な構えですね。ディアナ殿」


 声を掛けてきたのは、団員の一人。だが胸にある銀の徽章が、彼が今回の討伐の任における騎士団の責任者であることを示していた。


「……えぇっと……」


「レギオスです。副騎士団長、レギオス・バル・サファテ」


「あぁ、ごめんなさい。私……」


「気にしないでください。昔から自分、顔と名前が覚えづらいってよく言われていますから」


 レギオスと名乗る茶髪の男は、ディアナが自分の名前を思い出せなかったことを気にもとめなかった。


「何か用なの?」


「いえ、あなたが一晩中見張らなくてもと思いまして、そろそろ交代をしようかと。自分も邪気探知イビルサーチの距離には自信がありますから」


「お気遣いありがとう。だけどもうしばらくは大丈夫よ」


「そうでしたか。ただ、それよりも謝らなければいけないこともございまして」


「謝る?」


「午後の件は申し訳ございませんでした。実は報告をした団員は、魔導学園エルグランド出身でなく、中途で採用した若者でございまして。それまで精鋭級の竜ですら見たことがないんです」


「そんなことだろうと思った」


「今の騎士団員の層の薄さを露呈させてしまいましたね。日頃から鍛錬は積んでいるのですが、やはり実戦ともなると……」


「確かに失望したが、気に病む必要もないよ。むしろ……」


「あなたにとっては、足手まといですよね」


 その言葉を聞き、ディアナもレギオスを睨んだ。彼女の本心を暴いていたからだ。


「いえ、その……なんというか。申し訳ございません、軽率な発言でした……」


 レギオスも動揺してしまった。うっかり口に出してはいけないことを、口にしてしまった感が否めない。


 ディアナにとっても気まずい空気になったので、なんとか話題を変えようと空を見上げた。


「あなた、虹海って知ってる?」


「あぁ、ラングランの花が、紅月に照らされた時に虹色に光り輝く現象ですね」


「見たことあるの?」


「一度だけ……ありますよ。実は子供の頃はよく、ラングランを訪れていまして」


「あなた故郷は?」


「ルオーディア出身です。私の実家からラングランまではそこまで距離も離れていませんし、飛馬車フライキャリッジに乗れば小一時間で着きますから」


「ここに来る目的は?」


「はは、それはその……」


 レギオスはどことなく言い辛そうな素振りを見せた。


「別に言いたくなければいいんだけど」


「実は、私が中学生の時に知り合ったある少女に会いたくて。彼女の家族も温かくもてなしてくれるものですから」


「そうなの……」


「その少女が、今年学園に入学しましてね。もう嬉しい限りですよ」


 レギオスが言う少女とは一体誰のことなのか。気になって聞こうとしたが、それよりもレギオスが先に質問した。


「そういえば、ディアナの妹さんも確か学園に入学したんですよね?」


「……そうね」


「あ、申し訳ございません。今のは……」


「いや、いいのよ。気にしないで」


「そうでしたか。あの差し支えなければ、お名前何と言いましたっけ?」


「……ロゼ」


 その会話を中断させたのは、僅かな邪気の反応だ。咄嗟にディアナは立ち上がり、身構える。


「どうしたんです?」


「災魔よ!」


「え!?」


「……兵士級が2体、距離約1km!」


「まさか、そんな遠くに!?」


「あそこの木々の間よ!」


 ディアナが指差した地点を、レギオスも注視する。


「何も見えませんよ?」


「あなた、気配探知の最大距離は?」


「……200メートルです」


 その数字を聞いてディアナも内心がっかりする。道理で話が通じないはずだ。ディアナは何も言わず、右手の人差し指から光矢ダーツを1kmほど離れた木々に放った。直後光矢が着弾した場所から煙が立ち、人とも獣とも思えない、呻き声が微かに響いてきた。


「た、倒したんですか?」


「あなたに見張り役は不向きかも」


 ディアナの交代を申し出たレギオスだが、彼女の並外れた邪気探知の前には歯が立たないと嫌でも認識させられた。


「……申し訳ございません。お力になれず」


「気にしないで、護衛も今日で終わりだから」


「随分前向きですね。あぁ、そうだ!」


 ここで突如レギオスが何かを思い出したかのように、左手に一枚の小型の筒を取り出した。


「それは?」


「学園からの伝言メッセージです。あなた宛てに先ほど届きました」


 その小型の筒の中にディアナは右手の小指を突っ込んだ。その小指の先端に微小な棘が刺さり、彼女の脳内に一人の長い茶髪の女性の姿が映し出され、一方的に話しかけてきた。


「ディアナ、エドワード国王陛下の護衛の任お疲れ様。明日には戻ると思うけど、あなたにとても大事なお話があります。もちろん午前はゆっくり休んでいいから、午後の昼休みが終わったら、生徒会室に来てね。お話の内容は、まぁ簡単に言うと、【将軍の試練】とそれに参加する生徒の件よ。あなたにちょっとお手伝いしてもらいたいこともあるから、そのつもりで……」


 ディアナはその内容を聞いて、小指を筒から取り出しレギオスに返した。


「アグネス殿といえば、確か魔導学園エルグランドの教職員ですね。自分も何度かお相手したことあるのですが、歯が立ちませんでしたよ。あの方の風術は圧倒的すぎて……」


「静かに!」


「え、どうしたんです?」


 ディアナはその質問に答えず、後ろを振り返り光矢を先ほどと同じ場所へ飛ばした。そして再び同じ呻き声が聞こえた。


「仕留め損ねてたわ」


「……油断していました、あなたがいなければ」


 ディアナは今晩一睡もできなかった。

第49話ご覧いただきありがとうございます。文字数少なめですがキリが悪くなるのでここで区切らせていただきます。次回は再び学園パートです。


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