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【28】期待に応える者

 パーティー会場からなんとか逃げ延び、ホリタの手引きで酒場の二階に逃げ込んでいた赤池、アラータ、ウエイダの三人は、数時間後には城下町から少し離れた村まで逃げ延びていた。


「ごめんねウエピー、大事な話の途中に…。ホントは全部話したかったんだけど、まさかアタシの身に…あんな悲劇が降りかかるなんて…」

「いや、普通に飽きただけだろアンタ。」


 本に入ってから今に至るまでを詳しく話すつもりだったアラータだが、途中で集中力が切れたため結局話は中断。追っ手から逃れるべく、夜を待って人気の少ない村の宿屋へと移動していたのだった。


「ま、続きはまたいつか聞ければいいさ。それより植田、これからどうしよう?」

「そうだなぁ、何はともあれ情報が必要だな。第一部とやらをクリアするための鍵となるイベントが果たして何なのか…そこに関わる重要人物の情報…求めたらキリが無いが。」

「んー、荒ちゃんは何か感じないの?物語の登場人物なんだからさ、なんかこう、“運命に導かれる”的なものを感じたりは?」

「無いね。からっきしだね。身分とか身体的な制限はキャラの影響受けるみたいだけど、その範囲内で何をするかは演者にお任せ…って感じみたい。さっきも言ったけど“なるようになれ”感がエグいね。アッキーもそうじゃない?」

「いやー、俺は夢絵本読者じゃないからなー。」

「ホントに違うのかなー?車に轢かれたアッキーの血がたまたま落ちてた夢絵本にたまたまかかったことでたまたまアッキーは異世界に飛ばされて、その本をたまたま拾ったお爺ちゃんがウエピーにたまたま渡したって線を推してたんだけど…」

「まぁ確かにありえるけどなぁ。」

「いや、ありえるか?不自然なほど“たまたま”がてんこ盛りだったが…」

「ま、なんにせよ…正解は俺が全部自分で探さなきゃって話だな。」

「んー…だったらお前らが知る、その手の物語のセオリーに沿って動くのがいいんじゃないか?闇雲に動くよりはマシだろ。」

「セオリーかぁ…そうなると、荒ちゃんは俺とは違う道になりそうだよなー。戦闘属性無いんだよね?」

「うん、無いと思うな。“悪役令嬢=聖女”のパターンだったら聖属性の魔法とか治癒魔法とか使えそうだけど、アタシ普通にただの悪女だったっぽい。だから“田舎に逃げてスローライフ”が既定路線かな?」

「敵国の王子に見初められるって展開は?もしくは商団立ち上げて荒稼ぎとか。」

「まぁ旦那は勘弁だよねー。お城にこもって息苦しい生活とかしたくないし、そもそも初めての結婚が異世界とか無いよね。それに読み終えたら終わっちゃう関係だし。まぁお金は稼げるなら稼ぎたいけどね!」

「楽しい展開になればいいな!」

「だね!」

「ワクワクしてるようでなによりだが…いいのかよ二人とも?やっと出会えたのに別行動で…」

「まぁアッキーがこの世界にいるってわかった時点で一安心したしね。あとは誰かがクリアするまでの話なんだから、アタシが頑張らなくても良くない?みたいな。せっかくだから異世界生活満喫しよっかなーと。」

「なるほどな。まぁそういう割り切りもアリか。アカイケは?」

「俺はまぁ、そういうことなら他の仲間を探すよ。もし平針やヤゴっちが戦闘系なら、四人で戦えるしさ。」

「いやいや、なんで俺が“植田枠”で数えられてんだよ。普通に植田も捜してやれよ。」


 見つかってもウエイダが逃げ切れる保証は無いが。


「でもさ、荒ちゃんは一人で平気か?」

「んとね、とりあえず舎弟の妖精がいるから一人ではないかな。それに人脈作りには自信あるしね、なんとかなるよ。魔王軍のド真ん中からスタートでも多分なんとかできる。」

「マジかよヤベェ嬢ちゃんだな…しかも妖精を舎弟扱い…」

「魔王軍か…。なら次に会う時は敵同士かもな、荒ちゃん。」

「フフッ、手加減はしないよ?」

「望むところだ。」

「いや、望むなよ。嬢ちゃんもなんでわざわざ極端な道に…」


 特に冗談で言ってる感じでもない。


「あとは…あっ、親から領地をもらったりはしてない?」

「残念まだだわー。婚約破棄言い渡されて、家に帰って怒られて、その後で領地もらって追い出される想定だったんだけど…あの騒動だったからね…」

「下手に捕まると“皇族侮辱罪”とかで処刑パターンだもんなー。まぁ死ななかっただけマシと思うしかないな。」

「まぁ主に侮辱したのはアカイケだがな。」

「うん、そこだけは巻き込まないでほしいわアタシ的にも。」

「ハハハッ、大丈夫さ。ちゃんと顔だけは隠したし。」


 “顔だけ”なのは“ちゃんと”じゃない。



「まぁなんにせよ、まずは仲間か?どのみち俺とアカイケの二人じゃ何も果たせんだろ。」

「だな。どうせなら強い仲間が欲しいよなー。そうなるとやっぱ、ギルドで探すとかかな?それとも闘技場とか?」

「ちなみにラノベってのでよくある感じだと、どんな奴が強いんだ?物語の登場人物として、頼りになりそうなタイプは?」

「あ~、なるほどね。アタシみたく本の外からやってきた人は、何かしらの主人公属性持ってるかも…ってことだよね?」

「そんなとこだ。もしここが本当に物語の中なら、元からいた奴らよりその辺に狙いを定めた方が成果が見込めるはずだ。」

「そっかー。じゃあ俄然バリー達に期待だね。どんな設定のキャラだったら助かるかなぁアッキー?」

「んー、そうだなぁ…そうなると…やっぱ『追放系』とか?」

「追放系…?簡単に説明してくれよ。」

「えっとさ、ある日いきなり所属パーティーから追放されるんだよ。無能だとか言われて。」

「無能?じゃあ使えない奴なんじゃ…?」

「確かに普段は冴えない奴でさ、目立った活躍はしてなかったんだけど実はメッチャ有能で、裏でとんでもないサポートとかしてたのよ。んで、追い出したパーティーはそいつがいなくなった後に有能さに気付くわけ。追放後の戦闘で全然勝てなくなってさ。」

「あー、あれいいよね。弱くなったそのパーティーが痛い目見るのを“ざまぁww”って見守るのがたまんない。ご飯何倍でもイケる。」

「底意地の悪さを隠さない子だな…」

「あとは…有能って意味だと『劣等職系』『希少職系』もアリだけどな。使えないと思われてたり誰にも知られてないマイナーな職業の奴が、力に目覚めて無双するパターン。」

「『最弱系』もあるよね。最弱とか言われてたくせに実際は最強なやつ。」

「ふむ、なるほど…いろんなのがあるんだな。隠された力が覚醒…ってパターンとかは確かに強くなりそうだ。まぁ精神的にタフじゃなきゃ覚醒の前に心が折れそうだが。」

「んー、でもあれって種蒔きの時間が必要じゃない?年単位でコキ使われた実績が無いと成り立たないじゃん?でもアタシら来てまだそんな経って無いし…」

「あ~…その点なんだが、そこは問題にならないかもしれない。」

「どういうことだ植田?」

「色々聞いてて気付いたんだが、既にアカイケと嬢ちゃんの時点で時間軸にズレがある。」

「え、そうなの?荒ちゃんもこっち来て三ヶ月くらいじゃないの?」

「ううん、アタシは半年以上は…確かにそうだね、気付いてなかったわ。」

「恐らく読み始めの時間が同じでも違っても、どのキャラクターが割り当てられるかで本の中での時間経過は大きく前後すると考えられる。だからお仲間は本の中でもう何年も生きてる…みたいなことがあってもおかしくないんじゃねぇか?まぁあくまでアカイケも読者ってのが前提の話ではあるが。」

「そうか、じゃあ平針はもう何年も虐げられてて、そしてもうじき力に目覚めるわけだな。好都合だ。」

「今頃仲間にこっぴどくやられて追い出されてる頃かな?好都合だね!」

「俺は同情するわ、そのバリーって奴に…」




ガシャアアアアアン!!


 そこはとある酒場。仲間に突き飛ばされた青年が、飛び散った食器類と共に床に転がっている。

 そしてそんな青年を、苦々しい顔で見下ろしているのは、一見さわやかそうな外見だが瞳の奥から性格の悪さが滲み出ている戦士風の男。その両隣には、男の取り巻きと思われる女二人がニヤニヤと笑っている。


「ぐっ、テメェ…いきなり何を…?」


 不意打ちを食らったためダメージが大きそうな青年は、顔を上げることなく男を睨みつけた。影になっていて表情は良く見えない。


「もうお前の無能さにはうんざりなんだよ。お前が俺達の足を引っ張ってる…その自覚は無いのか?なぁ『ラコウ』『エン』、お前らもそう思うだろ?」

「そうそう!『ナカム』の言う通りだよ!アンタみたいなお荷物、今日まで面倒見てあげただけありがたく思ってよね!」

「ですね。身の程というものを知るべきです。」


「チッ、やっぱりこうなんのかよ…」


 話の流れ的に、これはつまり…アレだ。



「出て行ってくれよ、バリー。」



 追放された男、バリーの冒険が始まる。

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