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【24】荒れる仮面舞踏会(3)

 報酬の話が一通り済むと、次に赤池は、報酬よりも気になっていたもっと大事なことについてホリタに尋ねた。


「ところでさ、ホリタンはなんで荒ちゃんの味方を?二人はどうやって知り合ったんだ?」

「あ~、実は前にうちの商会に、裏で奴隷売買に手ぇ出してた悪党がいやしてね。お嬢が未然に防いでくれてなきゃ、一体どうなっていたことやら。」

「おぉ、やるじゃん荒ちゃん!ちゃんと断罪イベント前に、その後に繋がる種まきしてたんじゃん!」

「ただの偶然なんだけどね。好き勝手動き回ったらこうなっちゃった~ってだけだから、あんまし感謝されても困るんだけどさ。」

「ま、助かったのは事実でやすから。それに、お嬢とは今後も仲良くさせていただいた方がいいと…商人の勘が言ってやしてね。ですからお気になさらず。」


 異世界に来た特にチート能力を身に着けたわけでもないアラータだが、持ち前のコミュ力と強運によりホリタの信頼を勝ち取っていたようだ。


「へぇ~、そうなんだ。じゃあさホリタン、荒ちゃんの今後のことも考えてくれてるわけ?どう逃げればいいのかとか…」

「あ~、すいやせんがその辺りアッシは門外漢でやすねぇ。所詮はしがない商人でやすし…それに、王家を敵に回すのも程々にしないと。」


 ここまでかなりの貢献度だったホリタだが、どうやらこれ以上の助力は期待できそうにない。


「えー、マジかよ冷たいなぁホリタン。なぁ植田?」

「まぁ仕方ないさ、得より損が上回る状況で動く商人は三流だろ。だが一つだけ聞かせてくれよホリタ。ああなることがわかっていて、なぜこの嬢ちゃんを…アラータ嬢をあの会場に行かせた?」


 自分達が上手いこと利用されたことに腹を立てていたウエイダは、アラータもまた利用されたのではないかと疑っているようだ。


「あ、それはアタシのせいだわー。ホリタンはやめろって言ったんだけどさ。」


 アラータが苦笑いで止めに入った。

 どうやら濡れ衣だったようだ。


「アタシのせいって…まさかアンタ、あんな展開になると知ってて乗り込んだってのか?なんでだよ?」

「んー?だって、それが“悪役令嬢としての矜持”…みたいな?アッキーならわかるよね?」

「わかる。めっちゃわかる。山奥の洋館で、殺人鬼がいるかもしれない大広間にみんなでいるより、一人で部屋に戻った方が危険だってことくらいわかる。」

「いや、俺は余計にわからなくなったんだが…」

「オッケー、じゃあやっぱアタシがちゃんと説明するね。んとねぇ…ほら、漫画とかでもお約束があるじゃん?例えば“あの伝説の化け物が復活したら世界が滅ぶ”みたいな展開の場合、“世界が滅ぶ”は防がなきゃだけどさ、“伝説の化け物が復活”は基本的に阻止失敗するじゃん?失敗しなきゃじゃん?そんで、その化け物を主人公達が倒してこそ盛り上がるわけじゃん?復活阻止できちゃったら興ざめじゃん?て感じ。わかるかなぁ?」

「んー、例えは相変わらずさっぱりだが…つまり、悪役令嬢という役が与えられたんだから、立派に演じ切ってこそ…って感じか?」

「そそ。『悪役令嬢系』は不幸な結末を回避する役だけど、あんまり早く回避しちゃうと盛り上がんないじゃん?」

「ふむ…まぁとりあえず、アンタもアカイケと同じでなかなかイカれた女だってことはわかったわ。」


 ウエイダは程よく見放すことにした。


「てなわけで、ありがとねホリタン。マジ助かったし。あ、もう行っちゃう感じだよね?」

「ええ、こう見えて忙しい身でしてね。まぁ大っぴらに動けるのはここまででやすが、できる限り力になりやすんで。あ、そちらのお二人にはいつか何かしらの償いを。」

「お、いいねー。楽しみにしてるぜ!」

「フン、まぁ期待せず待ってるわ。」

「ではでは。失礼をば。」


 ホリタは去っていった。



「…さて、また三人になったわけだけど…今後どうしよっかアッキー?」

「えー?どこ行きたいー?」

「いや、どう満喫するかって話じゃなくて。どう帰るかって話だから。」


 捜していた赤池に出会えたことで目標は達成したアラータだが、それはあくまで第一目標に過ぎない。そう、連れ帰ることができなければ意味が無いのだ。


「あー、そっちかー。まぁ“家に帰るまでが遠足”って言うしなぁ。」

「こっちはそんな気楽なノリで来てないけどね。あっちのウエピーとかめっちゃ憔悴してたよ?でも…どうせ来たなら楽しもうって姿勢は間違ってないわ。ごめん、アタシちょっと血迷ってた。どこ行く?」

「待て待て待て。血迷ってるのはまさに今だぞ嬢ちゃん?惑わされないでくれよ面倒なことになるから。」

「フッ、おいおい何言ってんだ植田?こと楽しむことにかけては、時として荒ちゃんの方がヤバいぜ?」

「だよ?」

「そうか…すまん、じゃあ俺が間違っ…てはいねぇわ!危ねぇ危ねぇ、危うく洗脳されかけたわ!」


 厄介者が増えてウエイダの負担がヤバい。



「でもさぁアッキー、楽しむことは忘れないとしても…やっぱ帰る方法を考えとくのは大事じゃない?」

「俺もそう思うぜアカイケ?いつか来るチャンスを逃さないためには、準備は必要だぞ。」

「あ~、確かにそうだな。“元の世界に戻れるのは●年に一度の満月の夜”みたいなパターンもあるし。でも正直、何を目指せばいいのかサッパリなんだよねー。」

「ぶっちゃけアタシもだわ。ウエピーは?何かない?」

「ここで一番関係無い俺に振るか…?そうだなぁ…名案は無いんだが、とりあえず気になったことはあるかな。」

「気になったこと…?それってまさか、俺と植田が初めで出会った日の“血の新歓コンパ事件”の…三日後にあった“裏切りの全裸合宿”…?」

「何それアッキー詳しく。」」

「いや、詳しくじゃねぇわ。まぁ確かに気にならんではないが。」


 ウエイダは若干染まってきた。



「まぁ荒ちゃんに悪いけど、長くなるし昔の話は一旦置いとくね。で?植田は何が気になるんだよ?」

「ん?そうだなぁ…まぁお前らに聞いたところでって話だが…」


 ウエイダは赤池に通じるよう、少し頭の中で整理してから話し始めた。


「お前らはさ、同じ世界から来て、いま同じ世界にいるわけだ。で、嬢ちゃんの話が本当ならここは本の中の世界ってことになる。だとしたら物語の結末…ゴールはどうなるんだ?って話だよ。」

「…アッキー、わかる?」

「ゴールはどうなる…それはつまり、ゴールがスタートになると?」

「難しかったか。すまん、俺の説明が悪かった。」


 ウエイダは何も悪くないのに謝った。


「いや…やっぱ俺悪くねぇわ。」


 そしてすぐに撤回した。


「えっと…普通はさ、物語ってのは主人公を中心に進むわけだろ?てことは、アラータ嬢が入った本の主人公は彼女で、その悪役令嬢系ってやつの流れに沿ってゴールに向かうってことになるわけだ。」

「んー?何の話かよくわかんないけど、荒ちゃんが主人公ってことならそうなんじゃないか?」

「そう、主人公ならな。だが…アカイケもいるって時点で話は変わってくる。」

「フッ、まあな。よく褒められるよ“変わってる”って。」

「そういう意味じゃない。いや、まぁ確かに変わってるがとりあえずそれ褒めてないぞ。」


 話がなかなか進まない。


「あ~…つまりウエピーはさ、アタシの行く末は普通の悪役令嬢系とは違うって言いたいんだよね?」

「ああ、そうだ。この世界から見たら異分子である二人…正確には他の夢絵本読者も含めて、そいつら全員が向かうべき共通のゴールが存在しなきゃならない。だとすると、嬢ちゃんが成功したらハッピーエンド…ってわけにはいかないだろう。それともアンタが主人公なのか?」

「んー、そんな説明は無かったからわかんないなぁ。でもアッキーはアッキーで主役っぽいことできてるみたいに聞くと、この世界…いろんなキャラが初期設定だけ与えられてて、あとは“なるようになれ”っていうか?もしかしたら、主人公達によるバトルロイヤル…“結末の決まっていない物語”なのかも…?まぁアタシ的には、ここは本の中じゃなくて別の異世界に飛ばされたって線も捨ててないけど。」

「ま、今の情報量じゃなんとも言えんな。もっと何か無いのか?」

「俺も何も浮かばないわ。もっと情報が欲しいなぁ…。悪いけど荒ちゃん、状況も落ち着いたことだし…ここに来るまでの細かい話を聞いてもいい?確か平針んとこの教授とかのツテで、変なコミュニティに入って色々聞いたって言ってたよな?」

「あ~、『~夢の彼方まで~』?そうだね、じゃあその辺りから話そっか。」


 そしてアラータは、詳しく話し始めた。

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