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王道異世界攻略生活  作者: ピペット
8/14

熊とバトルと落ち着こう


「4時の方向です」


クロックポジションなんてパッと言われても解らんわい!


右からぐるりと体を反転させる。

勢いを付けたせいで7時の方向まで回ってしまうが、すぐに3時間巻き戻す。


いた。


熊だ。


距離にして200m。


しかもでかい。

四つん這いの状態で俺(171cm)と同じくらいだ。


ばっちり目が合うし、小走りでこちらに向かってきてる。


明らかに俺が狙いだ。

なぜだ!スライムくらいで勘弁してくれ!


怖い怖い、見てくれこの鳥肌!

手のひらにまでぷつぷつができそうなくらいビビってる、俺。


ピカっと視界が一瞬だけ真っ白になった。

ヒカルが目の前まで近づいてきたらしい。


「逃げましょう

 逃げましょう

 逃げましょう

 逃げましょう」


冷静であるはずのヒカルが壊れたように繰り返している。

普段ではありえないその様子が、より一層恐怖を駆り立てた。


いかん、ぼーっとしてた。

あんな怪物が迫ってきているというのに。

奴にしたら格好の餌食だ。


回れ右をして、手足を動かす。

頼むぞ『神速』!ダッシュだ!




だばだばだばだばだば


足がもつれ、膝が笑い、腰が抜けている。

理由は不明だが『神速』が発動しない。

倒れそうになりながら前進するだけだ。


なんじゃそりゃ!

クソの役にも立たないアホスキルじゃねえか!

あれだ、オワコンだオワコン!(違う)


熊が近づいてきている。

何か行動をとらなければ、確実に殺られる。





覚悟を決めろ。


走れないなら戦うしかない。


転びそうになりながら、もう一度反転。

熊と対峙する。


こちらの(お猪口程度の)覚悟を察したのか、熊は歩みを止め、少し体制を低くした。


その距離20m。


ああ、近い。

なんだよあれ、絶対食べられるじゃん。

グルルルルってやめてくれ。


なんなんだよ、あの「うち、腕力ありまっせ」みたいな顔。

くそ、学生時代の嫌な奴とかちょっと思い出しちゃうじゃん。


もうみじめに生きるの嫌なんだよね。

一回死んだだけで充分だろ、俺は。生まれ変わるには。


大きく息を吸い、両手を高く広げる。

目を見開き、心を整え。咆哮。


「うううおおおおおおおう!」


慟哭といっても良い。

涙出てるし。


殺意と怒りを相手にぶつけるつもりで叫んだ。


相変わらず足はがくがくだが、それなりに効果はあった様子。

熊が後ずさったのだ。


ただ、追い払うことはできない。

再びこちらに向かってくるのも時間の問題だろう。


ぐっと丹田に力を籠める。

ぐぐぐと地面を見据え、念じる。


ここだぞ、ここしかないぞ。


もはや哀願だ。

頼むぞ俺よと、しっかりしてくれと。





キラッと後頭部に電流が走るような感覚。

魔力を感じた。


「あ、できた」


そう思った。


その瞬間、ごごごごごと大きい地鳴りとともに地面が盛り上がる。

瞬く間に俺を包むように、土がドーム状に形成され、すっぽりと隠れてしまった。


できたあああああああ。

ありがとうございます、土魔法様。


ふはははは。

こうなってしまえば熊も襲っては来れまい。

咄嗟の判断にしては上出来だ。命拾いした。


ああ、よかった。なんという安心感。

土臭いがヒカルのおかげで明るいし、ここにいれば安全だ。

とりあえず一安心。このまま引きこもっちゃおうかな。


ぐわるるるる


あ、ダメダメ。

だめだよこっちに来ちゃ。


がりがりと土を削る音が聞こえる。

バスンバスンと不可解な爆発音もだ。


よく考えたら、壁といっても土の壁だ。耐久力はあまり期待できそうにない。


どうしようかな。


「ヒカル、土魔法での攻撃ってどんなのがある?」


「最も簡単かつポピュラーな攻撃方法は岩石を操り、ぶつけることです。

 一定以上の威力が期待できます。

 他には地割れ・土砂崩れ・砂嵐などありますが、使用魔力量の関係から現実的ではありません」


ふむ。

せっかくだし、この機に乗じて使ってみるか。


俺は、一度成功した土魔法に妙な信頼感を持っていた。

さきほど感じた「キラッ」を忘れなければ、どんなことでもできそうな気がしていた。


地面に転がっている石、餃子くらいの大きさだ。

それに魔力を籠める。


浮き上がらせ、削り、硬くする。

イメージは弾丸だ。


さあ、こんなもんで良いだろう。

素人にしては上出来なんじゃなかろうか。


同じく作成した弾丸が5個。

これでダメなら他の手を考えよう。


あとは全身全霊の力をアイツにブッ放すだけだ。


弾丸をひとつ手に取り、壁に向かう。


気配のする方向の一か所に、野球ボールほどの穴を開けた。


うわ怖!

いるよ、まだいる。


真っ黒な眼でこちらを確認し、穴を広げようとガリガリとデカい手で削っている。




「よし」


落ち着け。


右手を前に向け、親指の腹を発射台に中指の爪を撃鉄に見立てる。

左手で右手前腕部をつかみ、震えないようにする。

左目を瞑り、右目で照準を合わせる。

ふうと息を吐き。


「ゴオシュゥウゥゥッツ!」


魔力を注ぎ、超高速度で、且つ可能な限りの回転をかけて放つ。




ばすん、とか、ぶつん、とか。

そんな音をたてて命中。

着弾箇所が破裂し、弾丸が突き抜けた。


ええ、グロテスクぅ。


もう一発弾丸を拾い上げ、穴から様子を窺う。


熊は壁を削るのを止め、ゆっくりと伏せの状態に。

そのまま動かなくなった。


眼の光もなく、呼吸している様子もない。

が、怖いのでヒカルを偵察に向かわせる。


部活動の怖い監督の様子を見に行かせる先輩のような気分だ。

ちょっとアイツの様子見てきてくれない?


「絶命しています」


息絶えたようだ。

さらば監督。


…ふんっ。

俺を冷静にさせたのがお前の運の尽きだ。

なんつってな。


でも凄くない?

この大きな魔物を一人で、しかも初戦闘で傷ひとつなく撃破できたのは!

初登板完封勝利!


土の壁を崩し、熊に近づく。


ふっふっふ。

さあ、好敵手の屍をじっくりと拝見しようかな。


息絶えた熊の横に立ち、大きな腕や顔を観察する。


おお、額に角と、眉間にもうひとつ眼があるのか。

よくよく見たら俺の知ってる熊と結構差異があるんだな。

ほら、こんなところも…

「ワーベア

 凶暴な性格をしており、人を襲う。

 額の角は薬の材料として大変重宝されており、高値で取引される」


っとぉ、ビックリした!

いつも説明ありがとう!


「ちなみに

 討伐依頼が出されていることも多いので、頭を切り取り持ち帰ることをお勧めします」


なるほど、頭部が討伐の証拠として扱われるのか。少し面倒くさいが従おう。


お金くれるかもしれないしね。


角をへし折り、ポケットへ。

ナイフを使い、首を切り落とす。

とりあえず門までは裸で持っていくか。


死体は埋めたほうがいいらしいので、土魔法で地中の結構深くまで埋めておいた。

「頭部を無くしているため可能性は低いですが、アンデッドとして活動する恐れがあります」

なんだそうだ。

もう土魔法はお手の物だぜ。


さて、今日はこのくらいにして帰ろう。

大きな成果も得た。スキルに魔法に戦闘経験。十分だ。


大きく背伸びをし、青空を仰ぐ。

相変わらずいい天気だ。


「ん?あれは」


先ほど殺した熊の子どもと思しき子熊が2頭。

森からひょこひょこと出てきた。


かわいいけど害獣は害獣だ。


撃破。


お読みいただきありがとうございます!


他の方の小説を見てると、このストーリーのチープさに泣ける。

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