街とカイジとギルド
城下街なのだろうか。
街を囲うようにぐるりと高い塀で覆われている。
5階建てのビルほどの高さだ。
これはちょっとやそっとじゃ落ちそうにないな。
「ラールバト。
ラールバト・レッド家が城主を務める小規模の城下町であり、人口は16000人ほど。
穏やかな気候と気風が特徴であり…。」
いきなり始まったので面食らってしまったが、どうやらこの街の説明をしてくれているらしい。
名産は、名所は、と続けた後「当面の拠点として最適でしょう」と締めくくった。
「ありがとうヒカル、助かるよ」
ふよふよと上下。
こいつもどうやら教えたがりのようだ。
「城門からそのまま入っちゃっていいのかな」
「問題ありません」
本当かなあ。
後ろめたいこともないが、どうもオドオドしてしまう。
悲しきかな、小心者の性だね。
「待て」
足を踏み入れるや否や門番に呼び止められた。
ここで初めて言語が通じることを確認する。
良かった。言葉が通じないなんてその時点でアウトだからな。
なんて悠長なことを考えてる場合じゃない。
ほら見ろ!やっぱり捕まるんじゃねえか!
あーあ、豚箱行きだよ。番号で呼ばれてクサイメシを食わされるんだ。
ガシャンと重そうな音をたて、門番がこちらを向いている。
豪華とは言えないが、見るからに分厚そうな鎧を身にまとい、身の丈の倍ほどあるハルバートを構えている。
つ、強そう。
「お前、何者だ。身分証を出せ」
おーいヒカルー助けてくれー。
「私の言う通りに話してください」
了解。
俺は傀儡。操り人形。パペットマペット。
「えー、オホン。
私はリョウ・フルカワ、旅の者です。道中山賊に襲われて路銀を失い、命からがらこの街へと辿り着きました。
田舎の出ですので、身分証といった類のものは持ち合わせておりません」
ろぎんて…。
「む、災難だったな、リョウ・フーカー。
少し身体検査をさせてもらうぞ」
おもむろに体をまさぐられる。
おお、結構キますね!門番!
「薬草に毒消し草だけか。目的と職業、出身を言え」
体を一通り触診しつつ、質問を投げかけてくる。
「ええと、薬剤師見習いです。
南のコリト村出身です。1人前になるために村を抜け、こちらの街にやってまいりました」
「コリト?聞かん名だな。
まあ良い、嘘を言っていても後に判明するだろう。
危険物も持ち合わせていないようだ。
カイジ!ギルドまで案内してやれ!」
うむ、予定通り。
実はこの辺はヒカルと打ち合わせ済みだ。
①門番チェックを受ける
②ギルドに案内される
③ギルドにて身分証明書の発行&薬草を売却し当面の資金をGET
なんでも、身分不明の旅人はそう珍しいものでもないらしい。
そういった輩は、門番によってある程度検査を行い、それをパスした者はギルドという自治団体に案内される。
ギルドでより細かいチェックを行った後に身分の保証がされるのだとか。
門番のチェックを無事通過した俺は、カイジなる人物にギルドへ案内されるわけだな。
お、門の内側から出てきた。
おそらく門番見習いというこ…と…なの…。
身の丈2メートルを優に超える巨人だ。
ずんずんとこちらに近づき、止まる。
付いて来いってなことだろう。顎をくいと動かし、のっしのっしと歩き出した。
あっけにとられながらも後へと続く。
いやいやビビった。この世界には巨人族がいるのか。
「いません」
~~~~~~~~~~~~~
「あのーカイジさん?」
よく見たら身長は高いが横に太いわけでもなく、なかなか端正な顔立ちをしている。
並んで歩きつつ、恐る恐る声をかけた。
地元の人間の情報は喉から手が出るほど欲しいものだ。
目だけをこちらに向けてくる。
「カイジでいいよ」
え?
「カイジでいい。同い年くらいだろ、キミ」
あ、ああ、呼び方の話ね。
ぐわっ、なんてむず痒い青春の瞬間!
呼び捨てでいいなんてやり取り何年ぶりだろうか。
実は一回り以上年上ではあるが、それは前世の話。
俺は17、俺は17。この状況を喜んで受け入れよう。
「ありがとうカイジ。
俺はリョウ。宜しく」
ふんと鼻息を一つ。
彼なりの了承の意なのだろう。
会話はそれきりになってしまったが、不思議と居心地は悪くなかった。
程なくしてギルドに到着した。
ギルド館を見上げる。
大きいな。
さしずめ町役場といったところか。
大通りに面しており、宿や道具屋、武具屋も並列している。
なるほど、ギルドを中心に生活圏が一つ形成されているのか。
必然的に人通りも多くなるだろうしね。
カイジに続いてドアを抜ける。
なかなかの喧騒だ。
中学生くらいの女の子から、胸元に届くほどの白いひげを蓄えた老人まで、やいのやいのと好きに話している。
町役場というより集会所なんだな、ギルドってのは。
造りは至ってシンプル。
丸テーブルと椅子がところ狭しと並んでいて、向かって左の壁に受付が、右に飲食の注文カウンターが設置されている。
奥に螺旋階段があり、その他いくつかの部屋へ通ずるであろう扉がある。
「あらカイジ。珍しいわね、身元確認の依頼?」
受付から若い女性が顔を出し、ハツラツとカイジに声をかける。
誰からも愛される人なんだろうな、カイジもどことなく嬉しそうだ。
「ああ。田舎から出てきたそうだ。
身分証を発行して欲しい。
悪いようにはしないでやってくれ」
と言い残すと踵を返し出ていこうとする。
「ありがとう!」と、考える間もなく口から発していた。
初めてこの世界で世話になった人だ。
照れくさいが、友達になんてなれたらいいな。
と、道中考えていたが、結局口にすることはできなかった。
ひらひらと手を上げ、一瞥もくれずに出ていった。
また会えたらいいな。
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