解決と説教とお姉ちゃん
中途半端な覚悟と20発ほどの弾丸を携えて目的地に到着。
例の場所から100mというところだ。
ダンジョンの入口を確認。
入口と言っても建物や洞窟があるわけではない。
2m程の盛り上がった岩盤に空いた空洞、そこから蟻の巣状にダンジョンが形成されているようだ。
周りには3頭のワーベアが巡回している。
遠巻きからなのでよく見えないが、確かに前回のやつより一回り小さい。
3頭の熊を凝視。
…すべて黄だ。
攻略難易度Lv.3ということでいいのかな。
距離が多少あるとはいえ、巡回する熊があの3頭だけとは限らん。
上空からの偵察はいるが、万が一も無いとは言えない。
ララさん、顔色が悪いな。
慣れていない人には相当なプレッシャーなのだろう。
しかも彼女は非戦闘員だ。
「ララさんは戻ってください。
ここも結構危険そうなの…で」
と言いかけたところで、電撃が走る。
ぴきゅーん。
あ、閃いた。
ダンジョンは地下生成型。
入口は一つ。
目的はダンジョンの無効化。
「そそそそうだね」
と聞こえた気がするが、意識はすでに向こうにある。
なんでもっと早く思い浮かばなかったんだろうか。
考えれば考えるほど最適解だと思える。
それではスタート。
安全確保のために、土壁でララさんを保護。
弾丸を3つ取り出し、魔力を籠めて発射。
全て熊に命中。ぐしゃりと音を立てて貫通する。
標的の死亡を確認する前に、地面に魔力を注入。
うん、ちょっと遅いな。
遠いからか。
1秒ほどのタイムラグがあり、ダンジョンの周りの土が隆起する。
大きな地鳴りとともに土をドーム状に形成。
隙間ひとつないほどに完全に密封する。
仕上げに壁を固くする。
高密度高密度。
おし、完了。
ダンジョン無効化成功。
その間およそ5秒。
よしよし、熊も絶命しているみたいだね。
ララさんの防御壁を崩し、こちらの無事も確認。
これにて一件落着…じゃダメ?
あれ、ララさん?
ララさん?ララさーーん?
―――
「ダメに決まってるでしょ!」
怒られてしまった。
正確に言うと
「どうしていいかわからない」
なんだそうだ。
じゃあなんで怒ってるの…。
~~~~~~~~~
リョウ君は私から突然視界を奪い、
ものの5秒ほどでダンジョン自体を消滅させていた。
気が付くと、盛り上がった土塊とそこに散らばるワーベアの死骸。
「あの、終わりましたけど」
って納得するはずないでしょ!
―――
一旦ギルドに引き返すことになった。
ダンジョンの入口を見失ったためだ。
正直私にもダンジョンが攻略されたかどうかの判別がつかない。
ギルド長に判断を仰ぐことにした。
道中、何が起こったかをリョウ君から聞き出す。
私には報告義務があるからね。
「何がどうなってあんな状態になったの?」
もごもごと言いにくそうに話し始める。
「えー魔法でダンジョンを塞ぎましてですね」
―
――
―――
はあ!?
一瞬で?あの距離から!?
「えー魔法で熊を撃ち殺してですね」
はあ!?
ワーベアを?あの距離から!?
前回聞いたワーベア討伐の方法と酷似してはいるが、距離がまるで違う。
前は目の前の敵と自分に対して、今回は100m向こうの相手に対してだ。
魔力が届く範囲なんて精々半径30mが関の山。
それを遙かに凌駕する魔法が目の前で行われていたことになる。
(正確には壁に阻まれ見ていなかったのだが)
俄かには信じがたい。
そんなことがあっていいはずがない。
でも、確かにダンジョンは封殺されていたし、3頭のワーベアは死んでいた。
彼は「硬く作ったので安全かと思いますが」とは言っていたが、それも本当だった。
ホントに信じられないくらい硬かった。
小刀で傷ひとつ付かなかったくらいだ。
私から強い口調で言われたからか、しょんぼりしている彼の横顔を盗み見る。
どくどくと鼓動がうるさい。
――
初めて会った時、私はときめいた。
若くしてダブルであり、魔水晶を破裂させるほどの魔力の持ち主。
この平々凡々な街に、ヒーローが誕生するのではないか。
そんな可愛い期待だ。
この街は好きだし、ギルド職員という職業にも誇りを持っている。
でも、正直に言うと変わらない日常に辟易し、退屈に感じていた。
そこに突然現れた年下の少年(特上)。
なにせ、ギルド加入3日目でLv.2になるほどの活躍ぶりだ。
彼には伝えていないが、ギルド内の大半の人がその功績を讃えている。
彼は私の人生まで変えてくれるのではないか。
そんなことまで妄想してしまった。
必死だった。
彼がこの街から出ていくのは目に見えていたからだ。
この街にいてもランクは上がらない。彼が別の街に旅立つのも時間の問題だ。
Lv.4になれば、冒険者は担当者を付けることができる。
そこまではラールバトに居て欲しかった。
担当者になりたかった。そうすれば離れられないと思っていた。
顔から火が出るほど恥ずかしかったが、駄々もこねたし、
通常業務ではない借家の斡旋まで休日返上で行った。
その甲斐もあり、彼はしばらく留まることを約束してくれた。
あとは早急にLv.4まで育ってもらえばいい。
そこに降って湧いたダンジョンの話。
単独攻略ができれば、確実にランクが上がる。
それも二つも三つも一気に。
チャンスだと思った。
この街に、ダンジョンを攻略しようなんて実力者はいない。
彼にいち早く挑んでもらえるよう取り計らった。
彼なら一人でできると思った。
―――
断っておくけど、これは恋愛感情ではない。
尊敬・憧れは多少あるけど、飽くまで(一方的な)損得勘定のもとに成り立っている。
私が彼をサポートし、彼が私を楽しませてくれる。
それでいいじゃないか。と思っていた。
思っていたのだが。
ここまでとは思っていなかった。
まるでおとぎ話に出てくる魔法使い。
自在に魔力を操り、危険を鎮静化する。
しかも事もなげにだ。汗ひとつかかない。
本気になれば天変地異を起こすことも可能だろう。
さすがに胸が高鳴った。愛が芽生えた。
同時に、彼と自分を同等に考えていたことを大いに恥じた。
できうる限りのサポートをして、できうる限り長い時間そばにいる。
そうしなければならないと思った。
損得勘定から慈愛の精神へと昇華し、私の決意はより強固になる。
献身的に尽くし、この人のサクセスストーリーを支える。
この子を愛し、大きく育てる。自分の天命だと思った。
「どうやってお姉ちゃんって呼ばせよう」
そんなことばかり考えている。
ララさんはちょい腹黒だったんですね。
どうやって活かしていこうかな。
ブックマークありがとうございます!
また、お読みいただきありがとうございます!
自分の拙文が皆様のお目汚しにならなければいいのですが。。。。




