なんか気づいたらポトフがありました。
ベッドから立ち上がり、当たりをぐるりと見渡してみる。
西洋のような高貴な家具が目に入った。部屋の大きさといい、窓の外から見る景色といい、この家はかなり大きいらしい。
城や屋敷、そういう範囲。
窓を覗いて見えたのは、この建物がとても高いということ。
そして庭にはたくさんの薔薇が咲いていたということ。
それだけの情報量では、先程の男が誰かわからない。
この建物の持ち主なのか従者なのか、はたまた侵入者か。
グゥ、とお腹がなる。
お腹空いた...。
テーブルに目をやると、そこには湯気の立ったスープとパンが置いてある。
...スープ、というのはポトフである。
しかし問題はそこではない。
先程そこにあったかどうかが問題なのだ。
いい匂いもしている中、私は気付かなかったなんてことあるのか。
そう考え込むが、空腹で何も考えられない。
クンクン、とパンを嗅いでみる。
しかしいい匂いがするだけであり、本のように毒を見分けるなんて出来なかった。
椅子に腰かけ、ポトフをよく観察する。
皿を回してみたり、掻き混ぜてみたり。
そして、持ち上げてみた。
すると、皿の下にメモが貼ってあった。
“I want you to eat”そう書かれた1枚の紙。
食べて欲しいです、か。
そもそも何故皿の下に入れたのだろう?
お盆の上に置いてある訳ではなく、テーブルの上に直置きされていた。
持ち上げない限り、見えないだろう。
ということは、このメモを見つけることを書き主は察していたのか?
そう考察をしてみるも答えは出ない。
はぁ、とため息をついて、スープをスプーンですくう。
そして、口の中に放り込んだ。