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拷問官之狂想録  作者: すけ介
3/8

抉傷刃

ポタ、ポタ…

まるで彼の心情を表すかの如く聞こえる水音。暗く湿ったここには時間の為か壊れた箇所が多く水漏れなどはしょっちゅうだった。

「主、罪人を拘束いたしました!」

「ご苦労だった。礼を言う」

「はっ、勿体無きお言葉!」

彼が片目を開けて書類を眺めているといつの間にか現れた男が報告を済ます。罪人、昨日彼が頼んだ件だった。

「早速尋問に掛ける。お前はどうする?」

「はっ、私は先日の件が御座いますのでご遠慮致します」

「処理は頼んだぞ、」

「はっ、それでは!」

直剣片手に部屋を出た彼。その隣で風のように消えた男。尋問の為に必要な物を取った彼は尋問室へと足を運んだ。

「離せ! 俺は無罪だ!」

尋問室に入った瞬間響き渡る愚かな罪人の声。薬品数種類とナイフ、注射器と鞭をテーブルの上へ置くと彼は元々置かれていたグラスにワインを注ぐ。

「お前が相手か…」

「ひひ、俺は何もしていない。だから早く外してくれ!」

「仕事だ」

彼は罪人の言葉に眉の1つ動かさない。透明な薬品を注射器へ入れボロボロの床へ向け空打ちすると罪人へと向き直る。

「や、止めろ止めろ止めろ。俺は無罪だ!」

「仕事だ」

彼は静かに罪人の頭を掴むと顎下から首元の静脈へと薬品を流し込む。意識にフィルターを掛け痛みを引き出すこの薬は前日の少女にも使われていたが彼女の場合は経口摂取だった。と言うことは直接入れられたこの罪人の痛覚はもう狂った状態ということだ。

「痛てえ、痛てえよ!」

即効性の高いこの薬はすぐに体にまわり罪人の痛覚を引き上げる。今の罪人には服の擦れる感覚ではえ刃で抉られるような感覚だろう。

「ふっ、まずは…」

「は、な、せー!」

彼の眺めた資料にはこの罪人への尋問内容が書き込まれていた。違法組織末端の容疑の掛けられているこの罪人から聞き出さなければならならないことは3つ。

「お前の所属先は?」

「ただの商売人だ!」

グサッ…

その噛み付くような言葉に彼はナイフを取ると罪人の親指を切り落とした。飛び散る血が拘束された椅子を汚すが彼の表情は眉1つ変わらない。

「ふざけるなよ。もう一度聞く、お前の所属先は?」

「…………」

うつむき無言を貫く罪人。彼は面倒臭くなったのかナイフを膝へ突き刺す。

「掻き回すから言いたくなったら言えよ」

「や、止め…ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

グチャグチャと気持ち悪い肉が抉れる音と共に罪人の膝は壊れていく。薬により引き上げられた痛覚はとっくに罪人の意識を飛ばしている筈なのだがその度に新たな痛みにより目覚めさせられていた。

「もう片方もいこうか、」

グサッ…

本当に面倒臭くなったのだろう。腰元にある予備用のナイフを取り出すともう片方の膝へと突き刺す。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

「始めるぞ、」

グチャグチャ…

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

「………」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

「………」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

「………」

響き渡る悲鳴。飽きたのか彼は血塗れのナイフを引き抜くとまるでナイフを片付けるように罪人の肩へ突き刺した。

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

「そろそろ言ってくれるか?」

「言う言う、だから、抜いてくれ…」

「仕方ないな、」

歩み寄る彼はナイフの柄へ手を重ねると、

グサッ…

「ぎゃぁぁっ! ど、どうして…」

「先に言え」

「わ、分かった。お、俺はスラムのデッドレインっていう組織の幹部だ。お、お願いだ。外してくれ…」

「次だ。その組織とはどんなものだ?」

「く、薬や人の売買だ…」

「そうか。次だ。お前はこれまで何人売った?」

「3‥」

「調べれば分かるんだぞ?」

「す、すまん。13人だ…」

「そうか。よく吐いてくれたな…」

「な、なら?」

「じゃあな…」

肩に突き刺したナイフを机の上へ置くとテーブル上にある薬品の内、昨日とは違う緑の薬品を注射器へ入れる。

「そ、それはなんだ…?」

「知る必要は無い」

バキッ…

彼がごちゃごちゃと喋る罪人の顎を殴ると酷い音と共に罪人の顎は砕け醜く酷い状態となる。そしてそれでも目で訴える罪人の眼球へと注射器を射し込むと薬品を流し込む。

「…………」

罪人は暫く痛みで悶えたが数秒もしない間に糸が切れたように息絶えた。彼はチッと舌打ちすると注射器の針を折るとゴミ箱へと捨てた。そして机の上のナイフの血を拭き取ると腰へと装備し直した。

「軽いな…」

さっきまで面倒臭かったかのように見えていた彼は急に表情を変えると書類へ供述内容を記述した。

「いるか?」

「はっ、主!」

「この書類をお嬢様の元へ」

「はっ、お任せください!」

急に現れた男は急に消えると彼の書類をお嬢様と呼ばれた人の元へと届けに向かった。そして彼自身は死骸を部屋の隅に置かれた穴へ投げおとした。

「そろそろ戻ってきているか?」

「はっ、ここにおります!」

「あの少女はどうした?」

「まだ寝ております。薬の過剰反応でしょう…」

「そうか。案内してくれるか?」

「はっ、しかし良いのですか?」

「俺のせいだ…」

「………。畏まりました。それでは参りましょう」

サッと風に消えた2人。その部屋に残されたのはジメジメした雰囲気と濃い血の香りだけだった。


「主、これをどうぞ…」

「ん、いいのか?」

「はっ、主は民に見られてはなりません!」

「そうだな。礼を言う…」

いつの間にか男は自分と同じ黒コートと取り出し彼へと渡す。突然の森の中へ現れたこんな2人を誰かが目撃したならば危険人物と見なされるのは確実だろう。

「行きましょう!」

コートを羽織りフードを被った2人。再び風のように消え入ると森の中を音をも超過したスピードで移動する。

「ここか?」

「はっ、私の支配する民家です。アレはまだ寝ているようです」

「そうか。行こう…」

誰も住んでいないのか中からは全くの物音もない。男の指示で階段を上ると脇の扉に手を掛ける。

「良いのですね?」

「俺の責任だからな…」

ガチャッという音と共に扉を開けると中では心地よい風が吹き抜け、明るい陽光が部屋の中を照らしていた。

「私は退出しております…」

彼がそう呟く男に頷くと男は風の中へと消えていった。その風が真っ白なシーツを揺らす。血塗れだった服が純白にされているのは今朝の女の仕事なのだろう。

「脈は…、通常だな…」

首元へ指を当てても脈に変な動きはなかった。と言うことはやはりショック薬が抜けきれていないのだろう。

「痛かっただろうな…」

白いワンピースから見えている小さな手には昨日彼がつけた傷が跡として残っている。もう痛くも無いだろうが彼の心を締め付けるには十分な傷だった。

「せめて、これくらいはやらせてくれ…」

傷付いた手を手に取った彼は目を閉じると静かな静寂だけが流れる。すると暫くして彼の手の中が輝きだすと何かの流れがそこに生まれる。

「………」

手を離すとそこには傷の跡さえ綺麗になくなっていた。それに安心したのかポンポンと頭を撫でると彼は立ち上がる。

「ん?」

彼が振り向くと何も無い。しかし彼は不思議そうな顔をしていた。

「ん……。いるか?」

「はっ!」

「帰ろうか…」

「はっ、それでは!」

サッと消えた2人。その風がシーツを揺らす。

「悪い人じゃ、なかった……」

どうやら少女は起きていたようだ。傷の治った手のひらを胸に抱き締め布団へ潜っていた。

罪人ーデッドレインの幹部。尋問の後死亡。

配下ー「彼」の元へ残る配下の1人。

(男②)内政、情報操作等を得意とする。


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