私之想
エイプリルフールですね。
けどこの作品自体は嘘じゃないですよ!
また初めての雰囲気なんで、
分からづらい所が多いと思います。
※投稿が不安定だと思いますが御了承下さい。
「た、助けてください!」
「………」
ジメジメとして暗く閉ざされた部屋。隅にある鉄製のボロボロの台には血塗られたナイフが乗せられている。そしてそこに一人。今日の客は薄く白い衣だけを纏わせられた少女でこれまたボロボロの木椅子に縛り付けられている。
「お、お願いです。わ、私、何もしてません!」
椅子に縛り付けられ涙を流す少女は目の前の彼へ懇願するが彼の瞳には全くの感情が宿っていないように見える。彼はその血塗られた手にナイフをとると、少女の拘束された手に鋭い切っ先をなぞらせる。
「きゃっ、や、止めて下さい」
「ダメだ」
深くなり流れ出る血が彼の手を真っ赤に染めていく。斬られた少女は苦痛に顔を歪めた。
「や、止めて…」
「ダメだ」
無表情の彼はなにやら傷口は手を置くとブツブツと何か呟いて、その後傷口へ指を捩じ込んだ。
「やぁぁぁぁっ!」
暗くじめじめとした獄の中には幼い少女の悲痛な叫びが響くが残念ながらそれを聞く者は誰一人いない。彼はそんな悲鳴か表情にかは分からないが薄い笑みを浮かべ捩じ込んでいた手を引き抜いた。
「痛いか?」
「はい。もう、もう…」
「止めないぞ」
僅かな笑みも刹那の間に消え失せ、彼は再びその傷口へと指を捩じ込んだ。
「やぁぁぁぁっ!」
再び響き渡った悲痛な悲鳴。彼の表情には薄い笑みが浮かびまるでその声を楽しんでいるようにも見えた。
「なあお前、ここに来て何を思った?」
彼は近くの木製の椅子へ腰掛けると手元のテーブルへナイフを突き刺し、その隣のグラスへ注がれた深く赤黒い飲み物をクッと喉へ流し込んだ。
「…………」
血にまみれ真っ赤に染まった衣は乾いて赤黒くなってきている。彼女の顔は己の血と涙で濡れていた。
「答えない、か。話はここまでだ。続けよう」
彼は片方の口角を上げると再び傷口へ触れる。先に飲まされていた薬により敏感になっていた痛覚は再び傷口に触れることで大きな痛みをもたらした。
「やぁぁぁぁ……」
悶絶。切り裂いたばかりの傷口を長い間刺激しているせいか反応が薄くなっていた。少女の目は虚ろになりその体は痛みによってか脱力していた。
「気絶してる場合じゃないぞ、」
「んっ!」
それまでナイフしか使わなかった彼は初めてナイフを直すと右手で深く鋭く腹を殴る。その拳は鋭く普通の犬とかなら殺せるんじゃないかと思える。
「…………」
痛さに悶絶し声も出ない少女の顎をひっつかむと彼はその冷徹な瞳を少女の純真な大きな瞳へうつす。少女の目には涙が浮かび彼の表情からは薄い笑みさえ消えていた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「何故ここに連れてこられたか分かるか?」
「い、いえ…」
無表情に落ちたナイフを拾うとその血を拭き取り、その刃を怯える少女に近付けながら問い掛ける。怯えて声の出ない彼女は震えながら首をふった。
「そうか。教えてやろう。お前の罪は領主様御子息に言い寄ったという不敬罪だ」
「わ、私そんなの…」
確かに彼女の罪状は不敬罪。しかし言い寄るという非常に不確定な罪であり本来は注意程で収まるはず。なのにこんな拷問のようなことを受けていた。
「知っている…」
「そ、そうなんですか。た、助けてください!」
「ダメだ。俺の、仕事だ」
彼は少し暗い顔をすると、飽きたかのように顎を離した。そして机の上にあった2つの緑色の液体が入った液体のうち、右側を注射器へ流し込むとそのまま乱暴に少女の首元の静脈へと注入していく。
「っ!」
「ふっ、じゃあな」
大きく目を見開いた後、意識を失った少女。彼はナイフと注射器を机の上へと無造作に置くと、
「あとは頼む」
と言う言葉を残して部屋を出ていった。それから数秒、逆側の扉から今度は顔も手も全て隠した男であろう人物が部屋の中へと入ってくる。
「?」
男は机の上の瓶を手に取りそのラベルをしっかりと確認する。そしてニヤリと笑うと隣で気絶する少女の頭を撫でる。
「分かりました。主…」
男は誰に言うでもなくそう呟くと少女の拘束を解いて麻袋を被せる。そして少女を肩に抱えると部屋を出ていった。
ガチャンという音と共に開かれた扉。
その向こうには彼が無表情で立ち尽くし部屋の中を見回す。
ピシャピシャピシャ…
足元には地下の獄から流れ出た負の水がたまり、歩くごとに不快な音を撒き散らす。
「飛鳥…」
長い部屋の中を歩いた先、彼は目の前で鎖に繋がれた女を見つめていた。鮮やかで美しいブロンド色の長髪が包帯の隙間から垂れているのを見ると生きているのは分かる。しかしその物言わぬ姿はまるで死んでいるようだった。
「…………」
両手を太い鎖で拘束され吊り上げられた女のいる所はクモの巣が張っており長い間放置されていたことがわかる。しかしその体には汚れのみならず埃一つ被っていない。
「はぁぁ……」
彼は包帯だけで包まれた体に触れると強めの魔力を流す。しかしそれでもなんの変化もない女は静かに沈黙を貫いていた。
「また来る…」
滅多に表情を見せない彼が女の頬に手を触れ涙を流すとその部屋をあとにした。その姿はなんとも言えない悲壮感のみが立ち込め、彼の心情を写し鏡のように表現しているようだ。
「………」
彼は扉の前で一瞬止まると、後ろを振り向こうとした。しかし止めた。涙に濡れた目尻を拭き前を向くとガチャンという音をたてて閉ざされた扉は頑固に部屋を閉ざした。
「…………」
さっきの少女がいた椅子にはもう誰も残っていなかった。机の上には積み重ねられた金色の硬貨と手紙のような物。
「…っ」
彼が机の上の手紙に手を伸ばし中の手紙を手に取る。令状という文字を頭に綴られたその文章はさっきの少女への拷問内容を指定するものだった。
「ふっ、」
ここに来てこれまでで1番冷酷な表情をした彼はその手紙をビリビリに破ってゴミ箱に捨ててしまった。その瞳にはさっきまでナイフで少女を抉っていた姿からは想像できない程の哀しげな感情が宿っていた。
「…………」
テーブル上のワイングラスの中身をそのまま口へ運ぶとグラスを投げ捨てた。不機嫌そうな顔は何を示しているのか分からない。
「いるか?」
「はっ! なんなりと、」
影から現れたのかと錯覚するかのように現れた男。全身を黒布で覆ったその姿は一種の異質感を放っていた。
「処理はどうなった?」
「私が預かっております」
「そうか。感謝する」
「勿体無きお言葉です!」
「ふっ、御嬢様に御報告は?」
「いえ、まだです……」
一瞬。刹那にも満たないほんの一瞬だったが安堵の表情を浮かべた彼はすぐに元の顔に戻ると考えるような仕草をする。
「そうか。これを渡し次第追い出せ」
「はっ、仰せのままに!」
机の金貨に手を置いた彼の行動を確認した男はそう言うと目にもとまらぬ早さで部屋から消える。彼が手を退けるとその下の金貨は無くなっていた。
「…………」
部屋の中には幾人もの血の匂いが漂いそんな血の後が様々な場所に染みとして残っていた。彼は慣れているよう常人なら吐き気を模様しても可笑しくない中でも平然とした表情を浮かべていた。
「また送ってもらうかな…」
壁の鉄製の棚に押し込まれた書類を無造作に取り出すとその中から上の方へ置かれた物の中から適当に1枚をひっつかむ。
「頼む、」
他の書類は出したときと同じように棚へ戻す。彼は右手の書類をテーブルの上にナイフで留めると部屋を出ていった。
あと書きには軽く説明を入れたいと思います。
⇩⇩⇩
彼ーー今作主人公。
暗い過去を持ち「飛鳥」という人物を守っている。
少女①ー今作初のターゲット。
後の重要人物。
配下ー「彼」の正体をよく知る人物。
(男①)彼の部下であり彼を君主として慕ってい
る。
飛鳥ー鎖に繋がた傷だらけの人物。
包帯に包まれていて、
寸分たりとも動かないが生きてはいる。