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プロローグ:魔女
老婆──魔女は、鴉のような嗄れ声で笑った。
「なるほど、お前さんの望みはよぉく、わかった。……そして、それを叶えてやるのも吝かではない」
矮小な体を収めた椅子の上から相手を見下ろし、彼女は続ける。
「ただし、わかっているだろうが、条件がある。──対価だ。お前さんが相応の対価を差し出すと言うのなら──大切な者を守る術を、お前さんに与えてやろう」
再び、鴉の鳴くような哄笑。
と、同時に、魔女の住まう城の外で雷光が閃き、その主の醜い横顔を、雨打つ窓ガラスに浮かび上がらせた。
──それは、今から約五年前。“ユグシル”の世界は、全種族を巻き込んだ大戦のただ中にあった。