表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3. 農村

 それから二十日ほど過ぎたある日。ルーガーは一人で田舎道を歩いていた。そこは一面大きな畑が広がり、建物は遠くにぽつりぽつりと見えるだけで、人気(ひとけ)がなく不気味な感じすら漂う場所だった。このあたりでは大規模農業が盛んと聞いているぐらいで、詳しい事はほとんど何も知らないので、ルーガーは農村ってこういうものなのかなと思いつつ、道を歩いていた。


 しかし目的の集落にたどり着いたころには、懸念はもっと大きくなっていた。どう見ても、村にはだれも住んでいない。想像していたのとはまったく違う様子なので、ルーガーは戸惑った。


 ルーガーは、傾いた門を開け、玄関の前まで入ってみて、さてどうしようかと思案した。そしてそのとき、初めて人の気配に気づいた。ルーガーは急いで裏手にある庭へ回ってみた。


 そこには、埃まみれの椅子にふんぞり返っているドルイがいた。


「げ、なんだおまえ。何しに来たんだよ」

「ドルイ……あんたも来てたのか。わははは」

「なんだよ、悪いかよ」


 苦い顔をするドルイににやにや笑いながら、ルーガーはそのへんにあった木箱をひっぱってきて腰を下ろした。


「なんか、会ってみたくなってね」

「チャルカ」

「そそ。アッコォの自慢の子。でもまさか、あんたが来るとは思わなかったな」

「ちょいとついでの用事で近くまで来てたんだよ。だから、ひょっとしたら待ってるんじゃないかって、思ったんだがね」

「そういやどうなってるの、全然人がいないみたいだけど」

「半年前に死んだってさ」

「え、だれが」

「娘。チャルカ。道でフライヤーに()かれたと」

「えっ……」


 ルーガーは絶句してしまった。ドルイは眉を上げて先を続けた。


「ここら一帯は無人なんだ」

「またどうして」

「最近、雨が降らないんだとさ。水がなくて農業なんてできやしないらしい」

「そうだったのか……」

「村の連中は移住するか破産するか、まあとにかく今はもうほとんど誰もいないとさ」

「どこで聞いたの、そんな話?」

「手前の村にシケた酒場があったろ」

「あったなあ。寄らなかったなあ」

「頭悪いな、お前。情報集めるんなら酒場がもってこいだろ」


 それから二人は、砂ぼこりの積もった床をなんとなく眺めていた。





 ぼーっと、かれこれ十分ぐらいじっとしていた挙げ句、ドルイがぽつりと言った。


「人間ってのはずいぶん簡単に死ぬな」

「いまごろ何いってんの?」





 おわり


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ