ライブラリアン、ねぇ。
「キッシュ様。あっしが見えやすかい? ここにその書籍類を仕舞うんでさぁ」
少し大きな声が遠い場所から聞こえた。ジョンケールの声に僕の近くにいた変な生き物たちも一瞬空を見上げたけど、すぐに仕事なのか本を持って行ったり、雑談のような話し声が聞こえて、すぐに視線が元に戻った。
「え? 何、あんな場所なんですか?」
「うん。ちょっと高いけど、いつものことだよ」
そうなんだ。いつもあんな場所に書物を保管しているのか。ここはどんな仕事場だ? 司書にそんな建設現場作業員のように安全性を保障された器具もなしに行けと言うのか、ここは。
「一人で大丈夫?」
「いえ、無理です」
高所恐怖症と言うわけではないけれど、さすがに高すぎる。さっきまでは随分と大きな鳥だと思っていたジョンケールの姿が随分と小鳥のように小さくなっている。
「はっきり言うね? でもだいじょーぶ。落ちても桜が受け止めてくれるよ?」
エルシェさんがジョンケールの止まっている枝棚ではなく、見上げた視界いっぱいに広がる桜の巨木を僕に見ろと視線で言ってくる。
「いえ、そう言うことじゃないと思いますよ?」
どう考えても桜の枝が受け止めてくれる高さじゃない。桜も物凄く大きい。室内空間の半分は占めているくらいの圧迫感すらもある。それでも、ジョンケールのいるのは遥か高み。落ちれば桜の枝を折って地面に落下が目に見えている。
「キッシュ君、初めから諦めてると、何も始まらないんだよ? 私ね、やって諦めるよりも諦めてやらない方が好きじゃないな」
エルシェさんが僕を見る。澄んだ瞳で僕を見上げる。いやいや、その目は反則ではないでしょうか? そんな愛らしい、今にも抱きしめたくなるように見られると、僕に罪悪感と言うものが湧いてくるんですけど。
「可能範囲であるなら、僕も賛意します。ですけど、ものには限度と言うものがあってですね……」
「ここはね、大丈夫だよ。だって、妖精さんがいるんだもん」
だもんとか言われても。僕の仕事は明日からであって、今日から働いても規定遵守事項に則っての給与の支払いがあるわけで、僕は慈善事業に来たわけじゃないし、そんなに人が良いわけでもないんだけれど。
「あの、一つお伺いしても良いですか?」
「ん〜?」
エルシェさんが首を傾げて僕を見る。何も言わない以上、聞いてくれるのだろう。
「この空間にいる動物のようなものは、一体何なんでしょうか?」
ふよふよと取りとは明らかに違うのに空間に浮いているもの。鳥のように自由に空を飛んでいるもの。地を這っているもの。人間と同じように二足歩行しているもの。何かよく分からない巨大なものに小さなもの。不思議と恐怖感と言うものは感じない。どれもこれも妙に穏やかと言うか、ゆったりとしているように見えるんだ。
「妖精」
エルシェさんが実に簡潔に教えてくれる。うん、僕もそれは知っていますよ? だからそれが何なのかをお聞きしたのですけど。間違ってはいないんだけれど、どこか話が通じない。
「はぁ〜もぉ〜、ほらキッシュ。んなことよりもさっさとそれ片付けなさいって。まだまだ仕事は溜まってんだから、何ちんたらしてんのよっ!」
「いたっ」
いきなり背中を叩かれた。いつの間にかラミアさんが戻ってきていた。
「いや、ですから僕は……」
「あーはいはい。男は黙ってキリキリ働く。言い訳無用の寡黙労働従事で万事解決なの。さっさと働く。ほらっ、あんたたちっ! まだ昼休みじゃないわよっ! サボって駄弁る暇があんならとっと働けっ!」
ズザザァと音がしそうなくらいに、ふよふととしていた妖精と呼ばれるものたちの動きが一気に活発になった。静けさの漂っていた室内が急にざわめき立つように慌ただしく稼動し始めた。
「ほらキッシュ。あいつらもキリキリ働いてるんだからあんたも働け」
ラミアさんがもう一度僕の背中を叩いてくる。書籍の整頓をしろと言うことは理解したけれど、僕にはまだまだ理解していないことの方が遥かに多すぎて、僕の置かれたこの状況の把握には混乱を感じてしまい、動こうにも体と頭がついてこない。
「ジョンケールッ」
「ごめんねぇ〜。ラミアちゃん、豪快に見えて意外と繊細な女の子なの。だから、なかなか片付かないお仕事に苛々してるの」
ラミアさんがジョンケールを大声で呼ぶ横で、エルシェさんが僕に耳打ちしてくる。片付かない仕事に対して苛々するのは分かるけど、だからって今日は挨拶に来ただけなんだけど、いきなり仕事を任せるなんて今までなかった。
「はいはい。そこの二人。周りが忙しく働いている中でいちゃいちゃすんなっ。さっさと働けっ」
「い、いちゃいちゃって」
僕はただ話を聞いていただけなんだけど。
「あぅ〜」
そしてエルシェさん。貴女はどうしてそこで顔を赤く染めますかね。そう言うつもりで僕に話しかけていたというのであれば、男として嬉しいわけなんですけど、今の上京としては相応しいものではないと思うのですが。
「ラミア様、お呼びになりやした?」
ジョンケールはやっぱり大きい鳥だ。そして人間の言葉を話している。これは夢なんだろうか? 僕はきっと小鳥の見ている夢の中の登場人物なんだろうかと錯覚を覚えてしまう。
「今日はキッシュの仕事のサポートして。キッシュには明日からあたしが仕事教えるけど、今日は片付けだけなんだからあんたでも出来るでしょ?」
「ええ、そりゃぁまぁ」
「ならよろしく。ほらエルシェ、あんたはさっさとシオリを探してくる。見つかるまでは戻ってくるな。良いわね?」
「ラミアちゃん、キッシュ君を独占するのは、良くないと思うの。むしろ私の方がシオリがどこにいるのか分からないんだから、人では多くあったほうが良いと思うの」
うん、何だろう。少しだけ嬉しく思える発言のような気がする。
「必要ないない。あんたが人前で毒吐けばシオリは飛んでくるんだから。むしろこっちはまだ外にも書籍が残ってんだから妖精たちだけじゃ足りないの。ほら、行った行った」
「あ、あぁん、もぉ〜ラミアちゃん〜」
ドタドタとしている間にエルシェさんがラミアさんに外に追い出された。
「さて、あっしらも行きやしょう、キッシュ様」
「え? あ、えっと」
「大丈夫でさぁ。あのお二人はいつもあんな感じですゎ」
飛ぶ姿にその大きさを感じたけれど、今僕の隣をトコトコと歩くジョンケールも十分に大きい。ジョンケールは一体何類に分類される鳥なんだろう。猛禽類かな?
「いや、そうじゃなくて、エルシェさんに説明を受けるはずだったんだけど……」
そのエルシェさんは精霊指定図書庫から追い出された。戻ってきたラミアさんは、なにやらその辺にいた妖精を引き連れて僕に渡したよりも多い書物を抱えて、またどこかおくに消えていった。忙しい人だ。
「それならあっしがお話いたしやしょう。あっしはこれでもこの蔵書の中じゃ、最古参もんも古参もんでさぁ。ラミア様やエルシェ様よりも詳しいでさぁ」
どこに行けばいいのか分からない僕のことを、見透かすようにジョンケールは僕の前を歩いていく。鳥の後ろをついていくなんて初めてだよ。何か違和感を感じるけど、今は致し方ない。僕にはそれしか出来ないのだから。
「とりあえずキッシュ様。こっからはちっとばかし階段を上がってもらうことになりやす」
「あ、はい」
奥の方へ連れて行かれると、木の枝の棚が見えていた部分とは異なって、ここが室内だと分かる建て作りになっていて、普通に階段があった。
「エレベーターもあるんですがね、今は定期メンテナンス中で、明日まで閉鎖なんでさぁ」
「良いですよ。時間もありますし、一通り見ておきたいので」
「そうですかい。そう言ってもらえると、あっしも気が楽になりまさぁ」
さぁこっちでっせ。と、ジョンケールが翼を広げて手すり越しに僕に並んで飛ぶ。翼を広げるとなれていない今だからか、少し恐怖心が湧いた。
「ところで、どんなことからお話しやしょうか?」
階段も木の質感のある優しい作りだ。時々軋む音も少しだけ沈む感覚も、僕には心地よいものに感じられた。今までにないライブラリーの形と雰囲気、そして今までに見たこともない生き物たちの中で働くことに関して、混乱と戸惑いはあっても、僕にはそれ以上に興味と言う感情が強く今は支配しているのかもしれない。
「えっと、それじゃあ、とりあえずこの精霊指定図書庫ってどう言う所なのかからお願いしても良いですか?」
「つまり、最初からってことですゎな?」
「はい。お願いできますか?」
「構いやせん。ここで働く以上、キッシュ様にもライブラリーとは異なるこの書庫について知ってもらう必要性もありまさぁ。分かないことあれば、遠慮なく聞いて下させぇ」
ばっさばっさとジョンケールが羽ばたく度に風が吹く。緑が多いせいか、その風が顔に触れてくる度に爽やかな涼風が心地良い。
「ここは、一般ライブラリーとは別の範疇に収められる、通称森の図書館、ウォルトライブラリーにある精霊指定図書庫でさぁ」
「その、通称と言うのは、どう言う事ですか?」
「ここを見ての通りでさぁ」
ジョンケールが階下を見てくだせぇ、と僕を呼ぶ。僕は言われるがままに手すりから下を見る。
「森の中みたいだ……」
下からだと気づかなかった。桜の木に何かの大樹の枝の棚だけじゃなく、この室内空間自体に森のような木々や草花が生い茂っているのがよく見えた。
「ウォルトライブラリーはアバラン州唯一の精霊指定のされたライブラリーなんでさぁ。そのためゆうか、精霊の暮らしやすい環境として、ここ、精霊指定図書庫は緑が多いわけですゎ」
「それが由来して?」
「ええ、そうです。精霊指定の図書庫をご覧になるのは初めてですかい?」
ジョンケールが僕のことを意外そうに見てくる。それこそ僕には意外なんだけれど。
「はい。通常、このような環境下での書籍の保管は適さないはずでは?」
「一般書物であればの話でさぁ。ここに所蔵された書籍は全て精霊指定された、精霊の宿る本なんでさぁ。故に一般ライブラリーのような保管はかえって、精霊には悪影響なんでさぁ」
知らなかったな。と言うよりも、信じられないと言う方が正しいかもしれない。
「まぁ初見であるならキッシュ様のその訝しげな表情も理解できやすが、事実はここにあるんでさぁ」
「え? ぼ、僕、そんな顔してました?」
「ええ、もうそりゃぁ。あっしのことも不審そうに」
軽い口調でジョンケールは僕を誘導していく。少しだけ書物の重みとどこまで上がるのか分からない階段の多さに疲れてきたのを堪えてついていく。
「す、すみません。今までライブラリー勤務の中では知りもしなかったもので」
「良いんでさぁ。精霊指定を受けたライブラリーは、そう多くはありやせん。知らぬ司書官も多いもんでさぁ」
鳥にフォローされる僕って、正直複雑だったりする。
「そうゆうわけゆーか、ここ、ウォルトライブラリーの精霊指定図書庫に蔵書されてるんわ、全てが州立ライブラリーより指定された初版本の蔵なんでさぁ。どの書物にもあっしのような妖精が宿ってるんでさぁ」
この室内にいる人間以外は全て妖精でさぁ、とジョンケールもエルシェさんと同じことを言う。
「あの、その妖精と言うのは何なんですか?」
「妖精は妖精でっせ? キッシュ様、妖精をご存じない?」
また意外そうな声。だから、それが僕には意外なんだけどなぁ。
「書物には妖精が宿るんでさぁ。それも初版本のたったの一冊だけに限って」
冗談で言っている声色じゃないのは分かる。分かるけど、それを信用するには判断材料がなさ過ぎると、僕の頭はジョンケールの言葉を受け付けない。
「それは、処女本ってこと?」
「そうでさぁ。初刷の一冊目。その書籍のみに精霊は宿るんでさぁ。そして、この精霊指定図書庫にいるあいつらも、あっしもみな、その書籍からラミア様とエルシェ様のお力より解妖されたんでさぁ」
「かい、よう……?」
ジョンケールが当たり前のように言う。でも、僕にはそれが分からない。分かる人の話を分からない人にされても、それは意見の押し付けにしかならない。出来ることなら分かりやすい言葉に変換してもらいたいな。
「ああ、すいやせん。ここへ来る人間はラミア様かエルシェ様だけなもんで、どういきやせんね」
ジョンケールが苦笑するように笑いながら先の踊り場の手すりに止まった。
「あっしら妖精は自分の力では書籍から出ることは叶わんのですゎ」
「そうなんですか?」
聞いておきながら、僕は半信半疑と言うよりも八割疑惑の二割理解不能が本音だ。
「ええ。あっしら妖精にはファンタジーで見るような力は何一つ持ってはいないんでさぁ。あるのはただ一つ。あっしらが生まれた書籍に込められた思いを抱き続けるだけでさぁ」
著者の思いを記された書物の思いを抱き続けることが、妖精の力、と言うわけか。うーん、納得しようにも確証を確実に手の内に出来るものがない。
「そんなあっしらを解妖してくれたのが、今から八十六年前の国立ライブラリー司書官ルルエルド・アーモンドなんでさぁ」
「え? あのルルエルド司書官が?」
ジョンケールの口から出てきた言葉に、僕は驚いた。
ルルエルド・アーモンド史書官と言うものは、今から四十一年前に死去した司書歴史の中では最も知名度のある司書官だ。国家司書試験の時には必ずルルエルド司書官の供述や論述が出る。ルルエルド司書官の功績は知っている。図書館学の中で必ず出てくる。この国のライブラリーへの多くの私用蔵書の提供と、教育施設への配本、教育書籍の制作、製本、禁止目録書の選定委員会考案など、ライブラリーに関するだけのものであれば、それはそう大層なものではない。しかし、ルルエルド司書官にはいくつかの司書官としてではない記録が残されていた。
一つは祭祀としての布教活動への従事とそれに伴う布教の為の物語の制作。今から三千年も昔から続くイエス教の祭祀として、ルルエルド司書官は積極的な慈善・奉仕活動と共に、教典の偏見を紐解くための物語を再編成して出版した。その冊数は現在では推定九千万冊と言われている。僕も完全に読んだわけじゃないけど、抜粋された一部は講義で読んだことがある。再編成されたその物語の印税は全てが司書官育成のための費用に寄付され、いくつかのライブラリーも建てられた。
「あれ? そう言えばここのライブラリーは……」
一つ思い当たる記憶に辿り着いた。
「そうでさぁ。ウォルトライブラリーは精霊指定を受けた初めてのライブラリーでさぁ」
そして、もう一つ。ルルエルド司書官には科学解明されることのなかった能力があったと言うこと。俗称で言う霊能者と似たようなものだと聞いたことはある。僕が生まれてからまだ二十数年。どういう人だったのかは記録資料映像などでしか見たことがないから、事実は知らない。それでも、ルルエルド司書官は、人外的な能力があったとされている。
「そして、ルルエルド司書官は解妖の能力を持っていらしたんでさぁ。そうして初めて解妖された妖精が、今は国立ライブラリーにある精霊指定図書を取り纏める、神霊享受指定図書館の司書総括長をされているんですゎ」
「神霊享受指定図書館?」
そんなものが国立ライブラリーにあったのか? 初耳だ。
「まぁ一気に話したところで、この辺りの話は難しいもんでさぁ。とゆうことで、話をウォルトライブラリーに関してに戻しやすが、良いですかい?」
「あ、はい。続けてください」
衝撃的な告白の連続に、僕の頭は情報処理に追いつかない。
「このウォルトライブラリーの精霊指定図書庫はアバラン唯一で、ラミア様とエルシェ様も元は国立ライブラリーから転属された特別一等精霊指定ライブラリアンなんでさぁ」
「ライブラリアン……?」
司書官と言うことなんだろうけど、そんな役職はあったかな? 少なくとも僕の記憶には新しく組み込まれた言葉だ。
「キッシュ様の取得された国家資格の司書官というものとは別にある、もう一つの司書官の資格でさぁ」
「そうなんですか……」
聞いたことがない。そんな資格があったなんて。
「ライブラリアンの資格は一般では取れんのですわ」
次第にしんどくなってくる足と腕を見計らうようにジョンケールがゆっくりでいいでっせ、と時々小休止を挟んでさらに階段を上がる。その間も妖精が僕に挨拶をしてきた。変な気分だった。ジョンケールとの会話も違和感が拭えないのだけれど。
「それじゃあ、どういうものなんですか?」
「ライブラリアンはルルエルド司書官の能力である解妖の技術を身に付けた者飲みに与えられる特級の資格なんでさぁ。その為、通常は公にされない資格なんでさぁ」
だから僕も知らないのか。まだまだ僕の知らないことも多いと言うことなんだろう。
「それはどこかで研修とか履修会とかがあるんですか?」
ふと休憩がてら手すりからどれほど上ってきたのを見下ろしてみて驚いた。
「いえ。適応条件審査はありますが、細かいものはありやしないんですわ」
「そうなんですか?」
ふくらはぎも少しパンパンになってきたと思ったら、もう随分と上階まで上がってきてた。見上げていた桜の巨木の天頂部が僕の視線に並んでいた。
「はい。ただその条件は厳しいもんなんですわ。ラミア様とエルシェ様は幼子よりの知り合いでして、当時から書物に触れていた影響もあってか、解妖順態式で見事にライブラリアンの能力を得られたのでさぁ」
「解妖順態式?」
ジョンケールの口から出てくる言葉はどれもチンプンカンプンだ。
「ああ、すいやせん。解妖順態式ゆうんは、ライブラリアンになるための儀式ですゎ。あっしらも式の様子までは分からないんですが、不思議なものらしいですわ。ラミア様もエルシェ様もその式を無事に終えられて、あっしら妖精を解放してくださる恩人なんでさぁ」
どこかから時折聞こえてくるラミアさんの指示を飛ばす声を、ジョンケールはどこかおかしそうに小さく笑いながら僕を誘う。
「ジョンケール、さん?」
「ジョンケールで良いでさぁ、キッシュ様。あっしらは妖精ゆうても出来ることは少なく、あっしらの生みの親は作家で人間なんでさぁ。だからゆうわけやないんですが、妖精たちは、人間を敬うんですわ」
本から生まれた妖精だと言っていた。それは端的に言えば本を作るのは人間。その原作を書くのも人間。だから妖精たちにとっては人間は親も同然と言うことなのか。それは信憑性がないんだけれど、信じるしかないよな、こう言う光景を目の前にして、現に僕は鳥と言葉を交わしているのだから。
「じゃあ、ジョンケール。あなたたちは本から生まれたと言っていましたけど、それはどう言うことなんですか?」
僕の前をパタパタと飛んでいたジョンケールが僕の問いかけに、手すりに止まって二本の爪足で僕に振り返った。
「キッシュ様。貴方はこの世界に誕生した瞬間の記憶と意味をご理解されてますかい?」
「え?」
問いかけに問いかけで答えられ、予想もしてなかったから返し言葉がすぐに出てこなかった。