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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第七章 最終決戦キャンプファイヤー編
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剣術の名前は使用者のセンスが問われる

「水無月か」


腕組みを解いて、水無月は懐から長剣を抜いた。


「お前を倒さないと通してくれないみたいだな」


豪健も望月から借りていた短剣を取り出そうとして、その手を押さえられる。


「けんちゃんが出るほどでもないっしょ。あたいが行きます」


言うや否や、トンと地面を蹴って望月は飛び出した。


「もちもち剣第一巻、望月斬り!」


懐から引き抜いた一本の短剣を両手で握り締め、空高く飛ぶ。

背景の空には満月が、剣を振り上げた望月に光を浴びせる。


「青い鳥もち弾!」


ドシャン、と何かを発射する音。


「危ない! 横だ!」


豪健が叫ぶ。

空中で短剣を持った望月の横から、白い塊が襲い掛かった。


「わわっ」


とっさに短剣の軌道を変えて、横に振り払う。

しかし、その短剣ごと白い塊は飲み込んだ。

勢いに押され、横に墜落していく望月。


「ぐっ」


足と膝を地面につけて、どうにか着地する望月。

しかし、身体全体を白いネバネバに覆われていた。


「あらら、可哀想な彼女さん」


横から青いバズーカを持った有泉が出てくる。


「有泉! モッチーナに何を」

「人間捕獲用の青い鳥もちよ」


望月が膝をついたまま身体を起こそうとするが、

地面に白い塊が望月ごと張り付けて自由がきかない。


「くう、身動きが取れないっしょ」

「当然だわ。鳥を捕獲する悪しき道具として、

博士が研究していた鳥もちの失敗作を集めて、強力に改良したんだもんね」

「相変わらずセーラは品性を疑う道具を作るな」


水無月が呆れてため息をついている。


「良いじゃない悪役っぽくて。一発こっきりを当てたんだもん。むしろ褒めてよ」


悪びれる様子もなく、どうだと笑みを見せる有泉。


「ありがとうセーラ」

「え? う、うん」


素直にお礼を言われて戸惑う有泉。

それを他所に、水無月は長剣の先を豪健に向けた。


「おかげで豪健とようやくサシで剣を交えられそうだ」

「やるしかないか」


豪健も短剣を構えた。


「けんちゃん、気をつけるっしょよ!」

「随分と短い剣に変えたんだな」

「ほっとけ。お前なんてこれで十分だ」


腕を上げ、剣先を垂直に水無月に向けて、駆け出した。

水無月は迫る豪健の剣を流れるように横にいなして、剣柄で脇腹を叩く。


「ぐへっ」


喉が詰まる。

前方によろめいてこけそうになるが、どうにか踏み留まった。


「弱くなったか? お前」

「ちっ」


涼しい顔の水無月に、豪健は剣を構えなおして飛び掛る。


「うらああ!」


キンキン、と突かれる剣を弾いていく。


「遅い。遅過ぎる」


キキン、と剣を横に払うように弾いた。

大きくよろめいた豪健の隙を見て、水無月は長剣を叩き込む。

それを身を翻して、とっさに剣で防いだ。


「いつも女の子に守って貰っているようではな」

「なに?」


つばぜりあいに持ち込むも、水無月が徐々に押していく。

剣の圧倒的な短さ、体勢の不利さのせいだろうか。


「お前が悠長に物売りしている間も、俺は鍛錬を積んでいた。

悔しかったら押し返してみろ」


剣に力が込められ、長剣が額に迫る。

水無月の力は本物だ。日々積み重ねてきた鍛錬の重みが長剣に宿り、

ビクともせずに圧し掛かってくる。


これを押し返すなんて、今の僕では到底……。


「けんちゃん!」


モッチーナが叫んだ。僕の名前を。

そうだ、僕は見られている! 最愛の女の子に。

ここで恥ずかしい姿は見せられない!


「ふぬぬ。てやあああああ!」


気合いの発声。足に力を入れ、剣を持つ手に力を入れ、

身体の中心を貫く軸に力を入れて、前へと向ける。


押し込まれていた短剣は、その動きを止め、

さらに長剣を水無月の方へ押し戻した。


「ここまでの潜在力。何もしていなかったわけでは無さそうだ」

「ずっ、ずりゃああ!」


勢い任せに長剣を押し込んでいく豪健。

水無月は短剣を横に受け流し、二歩下がって距離を取った。


「そろそろ本番といこうか」


水無月は長剣を斜め左に傾けた。

剣術が来る、と過去の何度も行った手合いから直感する。

ならば先手必勝!


「勇者剣、豪突き!」


剣を降ろしてがら空きになった胸にめがけて、剣をつきたてる。

しかし、水無月はそれをひらりと容易にかわした。


「剣士でない格好だけの剣術が、俺に効くわけないだろう」

「勇者剣、豪突き!」


続けざまに豪健は短剣で突く。

水無月はため息をついて、突きを屈んでかわす。


「水無月剣、水面めくり!」


低姿勢のまま、地面から水平に長剣で斬った。

目で追えない剣の速さ。

豪健は急いで地面を蹴ってジャンプする。


そのすぐ足元から斬撃による風圧を感じた。

突っ立っていたら膝から下が綺麗に切断されるであろう鋭さ。

剣の動きを知らなかったら確実に食らっていた。


豪健はほっと胸を撫で下ろしかける。

しかし、水無月の小さな笑みが目に映った。


「水無月剣、鯉の滝登り!」


シャリ、と地面を長剣が擦る音。

そしてアッパーのように、下から上へ剣が昇ってきた。

短剣を構えるも、下からの勢いに敵わない。


ギンッ、と短剣は弾かれて、手から離れる。

さらに長剣は豪健の身体も斬りつけた。


「ぐあっ」


服を貫通し肌を斬りつけ、身体は仰け反り、そのまま地面に叩きつけられた。


「かはっ」


肺が押し潰される。息ができない。


そんなもがき苦しむ豪健を、水無月は哀れむように見下ろす。

静かに剣を構えながら豪健のもとへと歩く。


苦しんでいる暇は無い。


生命の危機を感じた豪健は、痛みを無視して地面に転がった。


手に何か掴んだ。

短剣だ!

これを拾って、反撃を。


「終わりだ、豪健」


ああ、しかし水無月の足音が耳元で聞こえた。

満月に光った長剣が目に入った。

終わった。


「剣を構えなさい。豪健!」


頭上から女の人の声。

とっさに掴んだ短剣を胸元に持ってくる。


キンッ、と振り下ろされた長剣が短剣に当たった。

耳の奥まで響く金属音。

しかし、長剣の勢いはを完全に殺された。

手負いで寝転んだまま無我夢中で差し出した短剣によって。


「どういうことだ?」


水無月も目を見張って驚く。


「どうやら間に合ったみたい」


頭上で再び女の人の声。

それに反応して、水無月は二歩引いた。

豪健が身体を起こして声の主を見た。

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