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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第六章 文化祭デート二日目編
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七不思議特集

「俺もお前達の相手ばかりはしていられん。手短に説明する」


水無月はため息をつきながら二本指を掲げた。


「まず、うちは大きく分けて二つの出し物がある。

占いの館と学園七不思議特集だ」

「どっちも面白そうだな」

「当然だ。占いの館は、仕事、お金、恋愛、将来、何でも占うことができる」

「す、凄いわね。さすが青組オカルト部」


美雪が感心している。

そんなに青組オカルト部は有名なのか。

まあ、学園のNPCから尊敬されていないと動き辛いんだろうけど。


「占いなんて怪しいもんだけどな」

「本当に怪しいモノかどうか、詳しいことはそこで聞け。

もう一つの学園七不思議特集はガチャガチャ様を筆頭に

写真や絵をふんだんに使って作成した記事を貼り出している。

この学園で起こっている摩訶不思議について、造詣が深まるだろう」


説明は終わりだと言わんばかりに、水無月は踵を返して去って行った。

声をかける暇もない。


「登場も突然なら、退場もあっさりしているな」

「ねえ、豪君はどっちから見ていく?」


手を繋いだまま、美雪が聞いてくる。

恐らくは、この後すぐにモッチーナと勇者が来る。

それを観察するのに打ってつけなのは、ある程度自由に動ける展示物。


「じゃあ、学園七不思議特集から見て行こうか」

「うん!」


元気の良い美雪の返事に笑いかけて、豪健は教室の扉を開けた。


 教室の中は想像どおり、薄暗かった。


「さあて、七不思議ちゃんの記事はどこなのかな~」


美雪が教室内を見回す。

窓は完全に黒幕(布の方)で覆われており、

天井の白い蛍光灯は点いておらず、橙の電球の明かりが遠くでおぼろげに見える。


「こう暗いと分からないな。水無月も相変わらず説明不足の嫌いがある」

「豪君はその、水無月っていう青組の生徒のこと良く知っているの?」


不思議そうに美雪が聞く。薄暗くて顔は良く見えない。


「ん? まあな。腐れ縁? 幼馴染み?」

「どうして疑問系なのよ」


ぷっ、と噴き出す美雪。

笑われてしまったが、イマイチ上手く関係を説明できない。

今は完全に敵だし。


「まっ、あいつは昔から不器用で、口下手で、良く勘違いされていたよ」

「えーそうなの? 第一印象はクールで、何でもできちゃう、

世渡り上手なヤツって感じだったけどお」

「そんなヤツが、あんなヘンテコな組織に入るわけ……」


あっ、これを言っちゃうとややこしくなるよな。


「うん?」


美雪が小首を傾げている。

こほんと豪健はわざとらしく咳払いをした。


「とにかく、説明下手なんだよ水無月は。

おかげで手探りでこの暗闇を歩くしかない」

「まあまあ。とりあえず、あの明かりを目指してみない?

明かりがある場所には何かがあるはず」


美雪になだめられる。

そこまでヒートアップして水無月のことを言ったつもりは無かったけど。

ぎゅって手を握られるし。


美雪は橙のおぼろげな明かりを目指して歩き始める。

豪健を引っ張って。

結局、美雪にエスコートされる形の豪健。


次第に明かりが大きくなっていく。

幾つもの丸い橙色の明かりが灯っていた。


床に自立している掲示板には、何枚もの記事が間隔を空けて貼り付けられており、

記事一枚につき、一つの橙色の丸い明かりでライトアップされている。

とても丁寧で見やすい印象。


「どうやらここが、学園七不思議特集みたいだね。雰囲気あるな」

「うん。青組の生徒さんはやっぱり凄いんだね~。こういう遊びも本気だよお」


美雪が感嘆しながら記事の一枚に近づいた。

遊びも本気、か。

本当にこれらは"遊び"なのだろうか。


「七不思議その二、ガチャガチャ様の神隠し」


美雪が記事を読み上げる。


「いつか宮下や友塚が言っていたヤツだな」

「学園生徒は時々、学園で過ごした日々の記憶を失くしてしまうことがある。

彼らはガチャガチャ様の神隠しに遭ったと言い伝えられているが、

それ以前の記憶は本当に無いのか。我々はある人物の取材を行った」


そこには黒い目線入りの写真があった。

教会のシスターが着るような、髪の毛をすっぽり埋める青色の頭巾を被っている。


Q1,文化祭準備期間よりも前の記憶が無いと言う事ですが、それは本当ですか?

A1,えーと、その、すみません。まだ頭の中が整理できていなくて。

恐らく、無い、気がします。


Q&A形式での取材が載せられている。

しかし、この人も文化祭準備期間の頭にやって来た人なのか。

僕と同じ立場の人? と豪健は興味が湧いた。


Q2,神隠しに遭ったばかりなのに、取材を急がしてしまってごめんなさい。

服装が学園制服ではありませんね? 制服着用は任意ですが。

A2,これは前に居たところで着ていたモノなのかも……。すみません。


Q3,前に居たところ、というのは神隠しに遭う前ということでしょうか。

A3,たぶん。


Q4,あなたは神隠しに遭う前もこの学園に居たはずですが?

A4,そのはずだったかも。でも、別の場所に居た気も。

ああ。(彼女は頭を抱えてうずくまってしまった)


取材はこれにて断念。

やはり、ガチャガチャ様の神隠しに遭った生徒に

それ以前の話を聞くのはタブーのようだ。

他の学園生徒は絶対に真似をしないで頂きたい。


七不思議その二の記事はこれで締めくくられていた。


僕がこの世界に来たのは文化祭準備期間の最初。

それより前にはこの学園に居るはずがないのだが、

どうも周りの話を聞いていると、

変わりない日常をこの学園で過ごしてきたみたいで。


つまり、僕の知らない

僕の過ごしてきた日常について突っ込まれると都合が悪いのだが、

この記事を見ると、ガチャガチャ様の神隠しに遭った生徒に対して、

以前のことを聞くのはタブーとされているようだ。


これのおかげで、僕はほとんど不自由なく文化祭準備と文化祭を

過ごせているのかもしれない。

段々と、この七不思議特集の趣旨が見えてきたぞ、と豪健は頷いた。


「美雪は、僕が神隠しに遭ったことは、知っているんだよね?」

「う、うん」


ぎこちなく頷く美雪。握る手も強張っているようで。

さっそくこの記事の効果が出てきている。


「僕もこの記事で取材されている人と同じでさ、

文化祭以前の記憶が曖昧なんだ。だから、それで不自由させちゃったら、ごめん」

「今更だよー。豪君が謝ることはなしなし」


美雪が明るく言って記事から離れる。


豪健はもう一度取材を受けた人の写真を見た。

黒い目線が入っているけど、この修道服の女性。

僕は現実世界で会っているのだろうか。

教会のシスターとか、あんまり良いイメージは無いんだけど。


「あっ、ウサギちゃんのことも書いてあるよ!」


美雪は気分を変えるように、七不思議その四の記事に駆け寄った。

増え続ける学園ウサギ、というタイトルの記事。


記事の中身は、色と模様の組み合わせで同じ個体は二つ存在しないこと、

色と模様のバリエーションは無限大で、毒々しい色のウサギも居ること。

ただし、見た目以外はどのウサギも普通のウサギと変わらず、毒なども無いこと。


そして、ウサギの色模様がタイプ別に特集されていた。

野菜タイプには、キャベツ、ニンジン、トマト、ぴーまん、などの

野菜を連想される色合いのウサギが写真付きである。


「わあ、この動物タイプのヒョウ柄ウサギ、カッコいいね~」


美雪が興奮しながらウサギの写真を眺めていた。

それを微笑ましく見守っていると、遠くで教室の扉が開く音が聞こえた。

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