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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第五章 文化祭デート一日目編
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ぎこちないデートを融解させろ

 ぎこちなく秘密兵器のモチアイスを食べる二人を眺めていると、

美雪が小型のホワイトボードとペンと文字消しのセットを持ってきた。


「お客様、ご所望の書く物をお持ちしました」

「おっ、ありがとう美雪」

「あと美雪とおもちちゃんで作ったスイーツも」


ことり、と白くて丸くてぷにっとしそうなおモチを豪健のテーブルにも置く。

そうして豪健の耳元に急接近。


「これは美雪の奢りだからね」


息がかかって、背筋がすんとなる。


「あ、ありがとう」

「頑張ってね。デートも楽しみにしているわ」


小さなウインクを残して美雪は去っていく。

親父のデートの心配ばかりしていられないな、

と思いながら隣席の勇者と夏目の観察を再開した。


「こ、これは、どうやって食べるのかな?」

「さ、さあ。存じませぬ」


美雪とのやり取りを間に挟んだのにも関わらず、

会話の進展がまるで見られない。


まずいな。

このまま白けたムードが続けば、デートは早々に終わってしまう。


そうなれば勇者はガチャガチャに頼ることとなり、

現実世界の過去の親父が伝説の剣を売ってしまう。


伝説の剣を売ることはすなわち魔王復活の現在へと繋がり、

親父は殺され、世界滅亡へと一直線だ。


くそっ、デートを見ているこっちまで緊張してきた。

豪健はペンを握り締める。


ここは一刻も早く夏目にリードをして貰わないと。

ホワイトボードに文字を書いていく。


ナイフとフォークで食べるよう提案!


勇者の背中側に位置する豪健は、

文字の書いたホワイトボードを夏目に見えるように掲げた。


ホワイトボードを見た夏目は、心得たとばかりに頷く。


「勇者氏、ナイフとフォークでこのスイーツは食べるみたいですぞ」

「な、なんとそうであったか」

「友塚氏、ナイフとフォークをくれませんかな」


夏目は近くに居た友塚を呼び寄せる。


「えーと、ナイフとフォーク?」

「確か、調理室にあったはずですぞ」

「わかったけど」


友塚が豪健の方をちらりと見やる。

豪健は高速で何度も頷き、教室の外を指差した。


「と、取ってくるね」


戸惑いながら友塚は教室を出て行った。


「し、しかし、まさかナイフとフォークで食べるものだったとは」


勇者も驚き戸惑っている。


「我輩の仕入れた情報に間違いはございませんぞ」

「さすが、毎回ラジオで文化祭情報を仕入れているだけあるな」

「はは、そう言って貰えると照れますなあ」


おおっ、良い雰囲気が出てきたじゃないか!

このコンビは昼と放課後に毎度ラジオをやっている仲。

デートであることを意識しすぎなければ、自然な会話が成り立つのだ。


「今回の文化祭で、夏目のお勧めの出し物はあるかな?」

「個人的にはオカルト部の出し物が気になっていますな」

「ほう。オカルト部」

「学園内の非現実的な事象を取り上げているらしく、

そういう探究心をくすぐられるモノが我輩は大好物ですぞ」

「ははは、面白そうだな。俺も是非行ってみたいぜ」


良い! 良い流れ来てる!

オカルト部の出し物という部分で不安を覚えるが、

そのまま次のデート先まで決めちゃえ!


「でしたらこの後、我輩と」

「お待たせしました。ナイフとフォークになります」


タイミング悪く友塚が帰ってきた。


「お、おう、ありがとう友塚」

「あ、ありがとう友塚氏」


間の悪い空気に押され、二人ともぎこちなさを取り戻してしまう。

くう、と豪健は唇を噛み締めて

ナイフとフォークを渡して戻ろうとする友塚を手招きした。


「おい、良い雰囲気だったのに、どうしてくれるんだ」


小声で友塚に抗議。


「良い雰囲気って、そんなの知らないよ」

「せっかく、自然な流れで次のデート先が決まろうとしていたのに」

「大体、どうしてあの二人がデートしているのよ。

しかもごうちんはそれを応援してるし」


友塚も負けじと小声で反論してくる。


「そ、それには深いわけがあってだな」

「まさか二人とも両想いで、その恋愛を手助けしようとか?」

「違う違う。そういうんじゃなくて……」


煮え切らない豪健の態度に、友塚はむうと口を結ぶ。


「ま、何だって良いけどね」


そう言って去ろうとする友塚を、豪健は呼び止めた。


「あっ、ちょっと待って」

「何よ」


不機嫌に返事をする友塚。


「後で手伝って欲しいことがあるんだけど」

「手伝って欲しいこと?」

「美術部が廃部の危機らしくて、それを救うために」

「ごうちんはそっちの応援もしているってこと?」

「そういうことになるかな」


まったくもう、と友塚は呆れてため息をついた。


「全然、自分が楽しんでいないじゃん。せっかくの文化祭なのに」


世界が滅亡しかかっている時に楽しめるわけがないよ!

と豪健は心の中で叫んだ。


「どわっ、中から黒いどろっとしたモノが溢れ出て」

「こ、これは何事ですかな!」


友塚と話している最中、勇者と夏目の慌てる声が聞こえてきた。


「ナイフでおもちを切ったか。よしっ、次の段階だ」


豪健はホワイトボードの文字を消して新しく文字を書き出す。


「とにかく、折り紙をできるだけたくさん用意しおいて欲しい」

「もう、ごうちんはお人好しなんだから」


仕方なく微笑んで友塚は豪健のテーブルにもナイフとフォークを置いた。

そして、その場を後にする。


違うよ友塚。僕は僕の世界を守るために応援しているだけなんだ。

心の中で豪健は呟きながら文字を書き殴る。


モチをチョコアイスに付けて食べる


掲げたホワイトボードを見て、夏目はおおっと納得した顔になる。


「慌てるなかれ勇者氏。この溢れたチョコアイスにモチを付けて食べるのですぞ」


夏目は一口サイズにナイフで切り出したおモチをフォークに刺し、

それをお皿の上に溢れたチョコアイスに付ける。

窓からの日差しで、アイスは輝いて見えた。


「うーん、美味ですぞ!」


口に運ぶと目を輝かせる夏目。

それに習って、勇者もおモチをチョコアイスに付けて食べた。


「おっ、美味いなこいつは」

「ひんやりしたアイス。中はまだ温かいおモチ。

このコラボレーションがたまりませんな」

「だな。チョコアイスがちょっと甘すぎるけど、

それをおモチで中和していて、バランスも丁度良い」


二人とも頬を紅潮させながら、おモチアイスを堪能している。

日差しに照らされ、和やかな雰囲気。


「ねえ、メイドさん。あのテーブルで食べているデザートを下さい」

「あっ、私もそれが良いなって思っていたの」

「俺も俺も。美味そうなんだよな」


勇者と夏目が美味しく食べる様子を見て

他のテーブルに座っていた生徒も同じデザートを頼み始めた。


「我輩達が流行の中心に居るみたいですな」

「ああ。心が弾むようだ。

これも情報収集の得意な夏目のおかげだよ。ありがとう」

「そそ、そんなことはないですぞ。もったいないお言葉」


勇者に褒められて夏目は顔を赤くして下を向いてしまう。


む、何だか予想以上に良い雰囲気になったな。

本来なら喜ぶべきところなんだけど、何でか素直に心から喜べない。

応援していたのに、これは親父だからか? それとも……。


豪健はもやもやしながらおモチを口の中でもぐもぐさせる。

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