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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第四章 インディゴカジノで魔王再誕編
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十三連ガチャの目的

「モッチーナ」

「けんちゃんの気持ちは痛いほどわかるっしょ。

だけど、ここで飛び出したらみんなの反感を買うだけです。

それこそが、向こうの狙いっしょよ」


……確かに。モッチーナの言うとおりだ。

今、観衆をかき分けてガチャガチャを破壊しようものなら、大きな反発を受ける。

僕がこの国の王子だと知られれば、民衆の不満もうなぎ上り。

というか、親父も一緒になって非難してきそうだ。

一際大きな声で叫ぶ姿が目に浮かぶ。


そうなれば、このRHL熱で正気を保っている僕を孤立させられる。

これ見よがしにディメンジョンソードの隣にガチャを設置したのもそのためか。


「まさかモッチーナにたしなめられる日が来ようとはな」

「あたいは冷静さも売りにしているっしょよー」


暗闇で見えなくても、えへんと威張っている顔が見えるようだ。


「冷静さとは無縁のヤツが何を言っているんだ」

「むう。そういう意地悪を言うと、偵察に行ってあげないっしょよ?」

「偵察?」

「あたいはここのバニーガールっしょ。しかも小柄なこの体型!

人ごみの中を突き進んで様子を見るぐらい余裕っしょよ」

「だったら僕になんて構っていないで、早く行ってこい!」

「むむむう。せっかくけんちゃんの危機を救いに来たってのに」


ふてくされながら、モッチーナが移動する気配を感じた。


「ごめん。ありがとうな」


その方向に向かって言ってやる。


「おモチを、いつものお店で奢るっしょよ」

「わかったよ。百個でも二百個でも奢ってやるさ」

「そういう非現実的な数字を言われると、ちゃんと奢られない気がします」


モッチーナがこちらに戻ってきた気配を感じる。


「良いから! ちゃんと奢るから! さっさと様子を見てこい!」

「いくつ? いくつっしょか?」

「五個! 五個奢るから!」

「アイスお汁粉を五個にするっしょよー」

「わかった、アイスでもラーメンでも五個奢るよ!」


約束っしょよー、と今度こそ本当に行ってくれた。

まったく、奢るなんて言うんじゃなかった。


まあ、俺もせっかちだったか。早く行けだなんて。

もうちょっと構ってやらないとな。


「やっぱり面倒くさい枠」


ぼそっと、背後から至近距離で言われた。

息が耳にかかって、ふほんと鳥肌が立つ。


「おい、たんぽぽ」

「……」

「いきなりびっくりするわ! そして近いわ!」

「暗いから距離感が掴めない」


ドンッ、と背中に頭突きされる。


「お前、今のはわざとだよな? ちゃんと僕だってわかってからやったんだよな?」

「あれ壊さなくて良いの?」


たんぽぽは僕の肩の上に腕を乗せて、ガチャガチャを指差した。

こいつはまた、人の話は無視して自分のことだけを。


「今壊したら、僕の名声が下がるからダメなんだ」

「人間のゴミらしい回答」


腕に体重をかけてきた。肩が重い。痛い。

その腕を丁寧に払った。


「うるせえ。そういうことを考えないと平和は守られないの」

「モンスターの平和は守れなかったのに」

「仕方ないだろう? 僕らは何も知らなかったんだ」

「モンスターだって、何も知らないうちに潰されて殺された」


たんぽぽは憎々しげに言った。

いつもの淡々とした口調ではない、感情をあらわにした声だった。


「やっぱり、お前も怒っていたんだな。それでお前もここに潜入して」

「一人でも多く破産に追い込んで人間のゴミ掃除をしたかった」

「おい! 目的おかしいだろう!」


思わず声を荒げてしまう。

当然ながら動揺していない、平然とした雰囲気が伝わってくる。


「ここにはRHLプレイヤーがたくさん来ている。モンスター殺しの元凶。

破産に追い込めば生きていけない。法律に引っかからない、現代のゴミ掃除方法」


どこかラップ調に聞こえるのは気のせいだろうか。

言っていることは狂気だが。


「あのなあ。気持ちはわかるが、そんなことをすればここのカジノが潤うだろう?

その金は青い鳥の活動資金に充てられて、

よりRHLが繁盛するってもんじゃないのか?」


その前提として、カジノで勝ってお客を破産に追い込めるお前の才能が怖い、

と突っ込みたかったが、調子に乗りそうなので止める。


「その時は、大元から討てば良い。あなたが」

「人任せかよ!」

「諸悪の根源を討つのはあなたの仕事。私はゴミ人間を排除するのが仕事」

「結局、好き勝手に動いているたんぽぽさんと

たまたま目的が重なっているだけなのね」


僕がげんなりしながら何気なく言う。

しかしたんぽぽは、あっ、とか、うーん、とか珍しく歯切れ悪く言い淀み始めた。


「ん? どうした、たんぽぽ」

「人間はゴミだから、誰かのために動けはしない。結局、それは自分のため。

あなたはあなたの守りたいモノのために、動けば良い。それで……」

「それで?」

「それで、ゴミ人間が減るなら、私も、その、力になる」


暗闇のせいだろうか。

たんぽぽらしからぬ、しおらしいセリフ。

それに元気付けられる。


「ありがとう。やっぱり青い鳥は許せないもんな」

「うん。ゴミ人間製造機は解体すべき」

「力強い名前だね、それ」


怒りの共有は喜びをもたらさないが、勇気をくれる。

悪を討つための勇気を。


「大変! けんちゃん! 大変なことになっているっしょ!」


そんなことを思っていると、ガチャガチャの方からモッチーナの叫ぶ声がした。

身体が反射的に動く。


人にぶつかり、その隙間に身体を捻じ込み、腕や脚を使って押しのける。

怒号、怒声が飛んでくるが、まるで聞こえない。


人ごみなんて知ったことか。

モッチーナが大変というからには、緊急事態なのだ。

一秒でも早く、ガチャガチャの方へ。


よしっ、ガチャガチャと伝説の剣が見えてきた。


「あらあ、ダメよお兄さん。順番は守らないと」


そんな声がしたかと思うと、突然左手首を後ろに引っ張られた。


「いてててて」


左腕の関節が無理な方向に曲げられる。

そちらに気をとられていると、右手首を今度は掴まれ、後ろに回され

一瞬で両手首を鉄輪でくっつけられた。


一歩を踏み出す間の、一瞬の出来事だった。


「な、何をする!」

「順番を守らない悪い子へのおしおきよ」


背後から身体に絡みつかれ、首元に何かを当てられる。


「これ以上悪い子になるなら、死んで貰うわ」


内緒話をするように、有泉が耳元で楽しそうに話しかけてくる。


「そ、それは」

「これ?」


つんつん、と首の皮をつついてくる。

冷たく尖った感触。


「マッスルサソリの牙よお。贔屓にしてくれる盗賊から買い取ったの。

私がほんの少し指に力を入れるだけで、あなたの人生はお終いだわ」

「くっ、どうしてこんなことを」

「決まっているじゃない。十三連ガチャイベントを成功させるためよ」


ふふっ、と堪えきれずに有泉は笑っている。

それは勝利を確信しているようで。


ガチャガチャの方を見る。

白衣に水色の翼を纏った博士が、RHLをガチャガチャに取り付け人を捌いている。


「そんなにRHLのイベントが大事なのか」

「とおっても大事よ。誰にも邪魔はさせないわ。あなたの可愛い彼女さんにもね」

「そうだ。モッチーナは、どこに行った?」

「大丈夫よ。あいが相手をしてあげているから」


視線を走らせてガチャガチャ回りを探していく。


居た! 伝説の剣が飾られているガラスケースの向こう側で、

床に組み伏せられている。水無月に拘束されて。


「もっとも、あちらも一方的みたいね」

「そんな、モッチーナがそう簡単に」

「呪縛魔法を予め詠唱していたみたいだけどね。

我々は、あなた達の邪魔が入ることも予想済みなのよ」


不味いな。

綿密過ぎる。徹底し過ぎている。

それはつまり、この十三連ガチャが重要な意味を示す裏返し。


目の前でRHLプレイヤーが意気揚々とガチャガチャを回していく。

それが青い鳥にとっての重要なこと。


うん? あのガチャガチャの箱から、管のようなモノが出ている。

それを辿っていく。

ガラスケースの下を潜って、伝説の剣の柄に取り付けられていた。


「ガチャガチャが伝説の剣と繋がっている。まさか」

「やーねー、気付いちゃったのね」


その時、ガチャガチャを十三回引き終わった人が退いて、

見覚えのある人物の番が回ってきた。

親父だった。

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