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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第三章 ゲームと現実の混同編
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メイド喫茶メニュー採用戦 前編

メイド喫茶、メニュー採用戦の組み分けは以下の通りとなった。


美雪、豪健チーム。望月、たんぽぽチーム。

友塚、勇者チーム。宮下、つばきチーム。


「やったあ、美雪はごうくんとペアね。もう勝ったも同然だわ!」


美雪は豪健の腕に身体を絡ませた。

腕が溶けそうな柔らかい感触に、豪健は頭がピンク色に染まっていく。


「やあ、はっはっは」


望月と目が合う。

ふん、とそっぽを向かれてしまった。はは、と乾いた笑いに変わる。


「ぽぽちゃん、あんな邪な連中に負けないっしょよ」

「余裕っしょよ」

「あたいの真似は禁止です」


たんぽぽにチョップをかましている望月。

何だかんだで仲が良いんだよな、あの二人。


「あんた、ちゃんとあたしのサポートをしなさいよね」

「おっけい! 俺のパーフェクツな味見で友塚を勝利の美酒で酔わせてやるよ」

「くれぐれも邪魔だけはしないように」


勇者に釘を刺している友塚。

この二人は言い争いが絶えない。


「良いなあ。私も、勇者さんに味見して欲しかったかも」

「まあまあ、心配無用だべ。ワシはいつも宮下のおはぎ食うちょるけえ。

ちゃんとメニューに採用されて、勇者に食べさせてやりゃあええ」

「うん」


羨ましそうに眺めていた宮下を、つばきが励ます。

ここは安定してそうだ。


「ところで、料理に使う材料はどうするんだ?」

「もちろん買出しで手に入れてくるわ」

「買出しって、学校の外に出るのか?」

「当たり前じゃない」

「あんまり歩きたくない。人間はゴミだから」


椅子に座っていたたんぽぽが、眠そうに白いテーブルへ身体をべたっと放り出す。


「調理の時間が無くなっちゃうから、歩かないで瞬間移動をしましょう」

「スタミナ使っちゃうけど、仕方ないわね」


事も無げに言ってのける友塚と美雪。

豪健は頭にクエスチョンマークを浮かべる。


「瞬間移動? スタミナ?」

「時間経過で溜まるスタミナのことよ。それを使って移動時間を短縮できるの、

って、ガチャガチャ様の神隠しに合うとそんなことまで忘れちゃうのね」

「あ、ああ」


豪健と同じく、望月も戸惑った様子だ。

他の人はおかしなことなんて無いと言った、平静の態度だ。

ちなみに豪健と同じく何もわかっていないはずのたんぽぽも、

表情ひとつ変わっていない。


「それじゃあチーム毎に買出しってことでいいかしら?」

「いや、ちょっと待て。望月のチームは誰も瞬間移動できないんじゃないか?」

「え? ぽぽちんはできるんじゃないの?」


友塚が不思議そうに小首を傾いだ。


「いや、たんぽぽもガチャガチャ様の神隠しにあっている」

「えー! そうだったの?」

「うん。神に隠された女」


無駄に謎めいたことを口にするたんぽぽ。


「いつも通りだったから、気が付かなかった」

「いつも通りの態度がおかしいんだけどな。それで、どうするんだ? 歩くか?」

「いや、1チームでも遅くなったら瞬間移動を使う意味も無くなっちゃうから」


うーん、と友塚が腕組をして唸る。


「えーと、ゆうちん」

「え、なに、俺?」


突然呼ばれて、勇者がぽかんと口を開けたまま自分を指差した。


「あんたはスタミナ使い放題なんだから、

もっちんのチームの分も買出しに行くこと」

「えー、そんな。使い放題って言ったって、ダンジョンに潜らないとだし」

「良いわね?」


もごもごと口答えする勇者に被せるように友塚が語気を強めて聞く。


「……はい」


しゅん、と大人しくなる勇者。

スタミナってダンジョンで手に入るのか?

と豪健は勇者が口走った言葉に引っかかりを覚える。


「それじゃあ、もっちんは買出し品を決めたらあたしに言ってちょうだい」

「わかったっしょ。まあ、そんなに必要ないと思いますが」

「余裕そうね。いつものおモチだけで勝てるなんて、甘くはないわよ」


美雪が余裕の笑みで挑発する。望月は冷たい眼差しで見つめ返した。


「あんたの甘過ぎる料理におモチは負けないっしょ」

「あらあ、嫉妬しているの? ごうくんをとられちゃって」


再び美雪は胸を押し付ける。


「お、おい」

「そうやってへらへらしていればいいっしょ。後悔させてやります」


ぽぽちゃん、向こうでメニューを考えるっしょ、と寝ていたたんぽぽを

引きずるように連れて行く。


「あんまりモッチーナを挑発するなよ」

「えー。ごうくんはやっぱり、おモチちゃんの味方なの?」

「……まあな」


少し考えて豪健は答える。

ふーん、とつまんなそうに言って美雪は腕を放した。


「でも、今だけは、美雪の味方で居て欲しいな」


美雪らしからぬ自信のなさそうな小さな声。

その切なげな問いかけに、どきっ、と一瞬胸が高鳴った。


「う、うん。できる限り手助けをしたいと思う」


どぎまぎしながら頷くと、ぱあっと笑顔が戻った。


「それじゃあ美雪たちも、メニューを考えましょう!」


声を弾ませて豪健の手を取り、調理台に誘導する。

苦笑いをしながらも、豪健は美雪に従った。


 暖かい日差しが窓から照る。各チーム、買出しのメニューが決まった。

友塚が望月からメモ用紙を受け取った。


「もっちんのチームの品はこのメモに書かれた品ということで」

「よろしく頼むっしょ」

「それじゃあ、行ってくるね」


美雪が軽く手を振った。おう、と豪健は振り返す。

そうして、美雪の身体が足元から消えていった。


うおっとその姿に面食らう。

じわじわと膝、太もも、お腹、胸、首と消えていき、口元が消える寸前

くしゃっと無邪気に笑った。跡には、暖かな日の影が残るだけ。


「瞬間移動って、校門を出た時の生徒みたいな消え方なんだな」

「そうっしょね。それよりも、けんちゃん。食用おモチが欲しいっしょ」

「おモチを? さっきのメモに書かなかったのか?」

「うん、持ってきた食用おモチもダメになる前に全部食べきりたいっしょ」


望月らしい、おモチもったいない精神。

わかった、と豪健は頷いた。


「大袋を教室に置いてきたから、持ってくるよ」

「よろしく頼むっしょ。ついでに家庭科室のウサギも戻してくるっしょ」


家庭科室には、つばきとたんぽぽに良く懐いている黒ウサギのクロちゃん、

望月にこれも良く懐いている白ウサギのラビちゃんが居た。


「たすかに、足元を走りまわられちゃ、危ないべな」


クロちゃんを抱きかかえてつばきが立ち上がる。

それを見て、たんぽぽも望月に寄り添っていたラビちゃんを取り上げて立った。


「私も、手伝う」


普段はマイペースに動くたんぽぽだが、小走りでつばきに駆け寄る。

現実世界では死んでいる父親と一秒でも一緒に居たい想いが、

唐突に伝わってきて、目頭が熱くなる。


「モッチーナも一緒に教室に戻るか?」


気分を紛らわすために顔を振って、豪健は望月に聞いた。


「いや、あたいはちょっと疲れたっしょ。戦いの前にここで休みます」


たんぽぽみたく、だらっと机の上に身体を放り出す望月。


「わかった。おモチ料理、期待しているぞ」

「けんちゃんは自分のチームのことだけ考えればいいっしょよ」


そう言ってふて寝をする望月。

やれやれ、と豪健はため息をついてから家庭科室を出た。

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