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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第三章 ゲームと現実の混同編
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メイド喫茶メニュー採用戦 プロローグ

豪健は勝手に立ち上がっていた。


「みんな! これから文化祭まで、勇者にガチャガチャ様に頼らせない。

というのはどうだろうか?」


出て行こうとする勇者の足が止まった。

教室はしん、と静まりかえる。

どう反応すべきか、困惑した空気が漂う。


「良いんじゃないっしょか?」


どうでも、と望月は誰にも聞こえない小さな声で付け加える。


「そうね。ガチャガチャ様に頼らないなら、馬鹿の一人でも居た方が賑やかよ」

「人手が足りなくなるのも困るわ。美雪はごうくんと一緒にさぼりたいもん」


友塚と美雪が仕方なしと勇者の背中に声をかける。


「やれやれ。やっぱり俺がいないと文化祭は始まらないからな!」


威勢よく振り返った。

頭から振り落とされたピョン吉を、おっとと胸でキャッチする勇者。


「二十秒で立ち直ってるし」

「立ち直りの早さも相変わらずっしょね」


ため息をつきながらも、豪健はどこかで安堵していた。


 勇者が席に戻ったところで、教卓の前に立つ女生徒が口を開いた。


「えーでは、ここからは各チームに分かれて作業に入りたいと思います。

まず装飾チームは……」


チーム毎に大雑把に仕事が割り振られ、各々が好きなチームへと入っていく。

どのチームもメイド喫茶の立ち上げには欠かせない。

豪健はどこでも良い心持ちだったので、空いたところにでも入ろうと思っていた。


「けんちゃんけんちゃん」


後ろから肩をちょこちょこ叩かれる。

振り返ると、望月の顔が近くにあった。


「な、なんだよ」

「調理チームに入りたいっしょ」


珍しく望月が文化祭に積極的だった。


「どういう風の吹き回しだ?」

「メニューをおモチだらけにするっしょよ」


ふっふっふ、と悪戯っ子のような笑みを浮かべる望月。


「お前なあ、さっきの勇者を見ただろう? 自分勝手に動くとどうなるか」

「関係ないっしょよ。ここはゲームの世界。

何をしたってあたい達の生活には何の支障もきたさないっしょ」

「そういう問題じゃないって何べん言わせれば」

「なになに、二人で何の相談をしているの? 美雪も混ぜてよー」


顔を寄せ合って話していると、隣の席から美雪が顔を突っ込んでくる。


「愛の相談をしているっしょよー」

「へぇ~。だったら美雪は、ごうくんとの愛の相談をするわ。

おモチちゃんは、おモチ愛の相談でもずっとしていてね」

「おモチ愛の相談なんて、するわけ……。していたっしょ」


肩を落とす望月。

美雪は勝ち気な笑みを浮かべた。


「ねえ、この際だから白黒ハッキリつけましょう?」

「白黒っしょか。わかりきった勝負ほど、つまらない勝負はないっしょ」

「自信満々ね。負けたら学園に顔を出せなくなるわよ?」


にやにや笑う美雪に、望月はため息をついた。

そのため息の意味を豪健は手に取るようにわかる。口には出さないが。


「あなたご自慢のおモチ料理と美雪の作った特製アイスパフェ、

どっちがメイド喫茶のメニューに採用されるか、勝負するのはどうかしら?」

「ちょっと待った! あたしも、その勝負に参戦するわ!」


火花を散らしている間に、友塚が割って入った。


「心のこもったメニューなら、あたしだって負けないよ」


言いながら、ちらりと豪健を見やる。


「決まりね。誰のメニューが採用されるか、楽しみだわ」

「そうっしょね」

「そうね」

「そう、かも」

「人間はゴミ。グルメだから」


参加を表明していない約二名の女子生徒の声も聞こえた気がした。


「いやあ、タダでご飯が食べられるけえ。生ぎでて、よがったなあ」

「皆、俺のために甘いスイーツを作ってくれるのか。

ガチャガチャ様なんてなくても、俺はできる男なのか?」


酷い勘違いを起こしている約二名の男子生徒の声もはっきりと聞こえた。

豪健はまだ入ってもいない調理チームの先行きが不安になった。


 教室を出て、家庭科室へと移動する。道はわからないので友塚が先導する。

結局、いつものメンバーが調理チーム入りとなった。


家庭科室に着く。室内には白くて大きなテーブルと蛇口付きのシンクがセットの

調理場所が複数個並んでいた。乾いたタオルのにおいが、薄っすら漂う。


「さてと、もう一度整理しましょう? 誰と誰が戦うのかを」


先陣を切っていた友塚が振り返って不敵な笑みを浮かべた。


「あたいっしょ。最後に勝つのはおモチに決まっています!」

「そうは問屋がおろさないわ。美雪の特製アイスパフェで粉砕してあげます」

「二人とも何にもわかっていないのね。メイド喫茶に必要なのは可愛いさよ?

見た目の可愛いメニューを作れるあたしが一番勝利に近いってこと」

「見た目だけじゃダメ、かも。誰かを想う気持ちを込めないと」


と、最後に呟いたのは宮下だった。


「おっ、みやちんも参戦するんだね。競争相手は多い方が気合い入るよ」

「どれだけ参加したって、美雪の勝ちに揺るぎはないわ」

「ん? たんぽぽは参加しないのか?」


女子で一人だけ声をあげないたんぽぽに聞く。


「材料を提供してくれるモンスターがいなければ、いい」

「モンスター?」


美雪や友塚を始めとするRHL組が首を傾げる。


「モンスターってほら、あれだ、たんぽぽの夢の中に出てくる怪物の話の」

「ここが夢みたいなものっしょが」


慌てて説明している豪健の横で、ぼそっと望月が呟く。


「相変わらず不思議ちゃんね。たんぽぽちゃんは」

「えっと、じゃあスイーツ対決をするのは、もっちん、みゆちん、みやちん

そしてあたしの四人ってことね」

「ワシらは、出来た料理を食べるだけでいいけえ?」


つばきが呑気に尋ねる。

そんなわけないでしょ、と友塚が呆れた眼差しを送った。


「勝負に参加していない男子三名女子一名は、一人ずつお手伝いに入って貰って、

出来上がった料理の審査もやって貰うからね」

「なるほどね。俺達の審査で、メイド喫茶のメニューが決まるわけか」

「ちゃんと公平にやりなさいよ? 特にゆうちん」

「わかってるわかってる。大船に乗ったつもりで任せてくれよ!」


とん、と胸を叩く勇者。

不安そうにため息をつく友塚を横目に豪健は手を挙げた。


「あの、誰が誰のお手伝いをするとかは?」

「そこの黒板を使って、あみだくじで決めましょう」


友塚の提案で、黒板に四本の線を引き、下には参戦組、上にはお手伝い組の名前が

書かれていった。皆で思い思いにデタラメな横線を引き、最後に線を辿っていく。

ある者は祈りながら、ある者は呑気に線が示す道順を眺めていった。


「結果が出たな」

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