表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第三章 ゲームと現実の混同編
36/104

ゲーム世界での授業風景

些細なことでも厳しいことでも、

感想を残して頂けると励みになります!

わくわくどきどき楽しんで貰えたら幸いです。

 リアルヒューマンライフ、通称RHLと呼ばれるゲームの世界へ来て

四日目の午前授業を迎えていた。


今日は木曜日。来週の月曜日が終わるまでにこの世界から脱出できなければ、

RHLの世界の住人となってしまう。永遠に。

現実世界の人たちを楽しませる、NPCとなってしまう。


なんと理不尽なことか、と豪健は心の中で嘆く。


「なあ、さっきからため息ばっかりついて、大丈夫か?」


右隣の席の勇者が心配そうに声をかける。


「大丈夫なわけ……。お前こそ、大丈夫か?」


豪健が右を向くと、頭にウサギを乗せて黒板の文字をノートに写す勇者が居た。


「俺か? 俺はいつも通り、ばっちり良い調子だぜ!」

「そうじゃなくて、頭の」

「俺の天才的な頭脳がどうしたって?」

「いや、その空っぽの頭の上に乗っているウサギはどうしたんだ?」


ああこれか、と勇者が頭の上に手をやる。


「ピョン吉って言うんだ。可愛いだろう? あげないぞ」


黄緑色のウサギは、勇者の頭の上からずり落ちないように、

後ろ足を後頭部にしっかりかけて、凛々しく座っている。


「虎丸はどうしたんだよ。あんなに大切そうに撫でていたじゃないか」

「あいつはどこかへ行ってしまった」

「薄情な」

「そうよね。ゆうちんはそうやって、女の子もすぐに捨てちゃうんだから」


前の席の友塚が、振り向いて勇者に非難をする。


「い、いや、捨てていないぞ。ただどこかへ行ってしまっただけだ」

「うんうん。悪いのはいつも相手をしている女の子の方だもんね」

「お~い豪健、ともちんがいじめてくるよお」


ウサギのような目をして、助けを求めてくる勇者。もとい親父。

そんな情けない眼差しを息子に向けないでくれと、豪健は手で払った。


「親父、じゃなくて、勇者はいじめられていた方が輝いているよ」


現実世界で、母さんに踏まれている親父の姿を思い出す。


「え、そうなの? 俺っていじめられている時が輝いてる?」

「うわあ、勇者って変態なのね」


友塚が苦い顔を作って引いている。


「ま、待て、違う、はず」


勇者は手を伸ばして否定しかけ、

しかしその伸ばした手を自分の胸にあてた。


「しかし、何故だろう。この胸のときめきは」

「うわあ」


これには豪健も引くしかなかった。

見ていられないと、顔を背けると

左隣の席の宮下が一生懸命にノートを書き綴っている


今が授業中だということを思い出した。

罪悪感を覚える豪健。


「悪いな宮下。騒がしくしちゃって、迷惑だったか?」

「ううん。迷惑じゃない、かも」


顔を振って否定する宮下。


「そうか。勉強の邪魔になるようだったら言ってくれな。

しっかり勇者をつまみ出すからさ」

「止めてください」


ノートに走らせていたペンをぴたりと止めて、

珍しくハッキリした口調で宮下が言う。


「あ、あれ?」

「あっ、そうじゃなくって、ええっと、勇者さんの、参考になるかもだから」


話し声の語尾の方は消え入りそうで、

宮下自身も消えてなくなりたいと思っていそうなほどに

赤く染まった顔を隠すように俯いて、身体を縮める。


何だか悪いことをしてしまったと、豪健は頭をかいた。


「そっか。とにかく僕は、応援しているから。

何か手伝えることがあったら言ってね」

「う、うん」

「いいなぁ、美雪のことも応援して欲しいよお」


宮下の後ろの席の美雪が、駄々っ子のように足をぶらぶらさせて言ってきた。


「お、応援って何をすれば良いんだ?」

「それは、もちろん。ちゅーしてくれれば」


ピンク色の唇を突き出す美雪。

その眼前に、短剣が振り下ろされた。

金色の前髪が揺れる。


「ダメッしょよー。あんまり悪さをしちゃあ」


美雪の右隣の席の望月が、椅子に座ったまま短剣を突き出していた。

目を見開いて一瞬驚く美雪。

だが、すぐに笑みを作って望月を見やる。


「あらあ、悪さをしているのはそっちじゃないかしら。

授業中にそんな物騒なモノを持ち出して」

「関係ないっしょよ。あたいは剣で食べていますから」

「面白いことを言うなあ、おもちちゃんは。

その剣は美雪の恋の邪魔をしているんじゃなくって?」

「そろそろ余計なことを言う口は、叩き斬ってしまうっしょねー」

「わ~んごうく~ん、おもちちゃんが美雪のこといじめるよお」


甘えた声で助けを求めてくる美雪。

豪健はため息をついた。


「モッチーナ、剣をしまえ」

「けんちゃん!」

「武器も持たない一般人に刃物を向けるなんて、見損なわせないで欲しい」

「でも、この、この人は、この人達は!」


上手い言葉が喉から出てこず、必死に美雪に指を差し続ける望月。

豪健は顔を横に振った。


「早くしまうんだ。そうして、謝れ」


美雪は勝ち気な笑みを浮かべて望月を見る。

唇を噛み締め、渋々短剣を懐に仕舞った。


「ごめんなさい」


喉から搾り出すように望月は言う。


「ごうくんに免じて許してあげるわ。美雪は心が広いので」

「くっ」


悔しそうに涙まで滲んでいた。

豪健は不安で頭を抱えたくなる。

どうして、もっと仲良くできないんだ。モッチーナ……。


「なあ、俺が助けを求めた時と態度が違くないか?」


空気を読まずに勇者が話しかけてくる。


「お前が僕を助けろ」


親父なのだから、と心の中で付け足す。


「はあ? 女の子にモテまくっているお前の何を助けるってんだ?」

「えっ」

「ピョン吉、俺も負けてられないな。俺を巡って修羅場になるように、

今度ガチャガチャ様に頼んでみようかな」


頭上のウサギを愛でるように撫でながら、愚痴る勇者。

思わず剣を懐から抜きそうになった豪健であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ