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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第二章 リアルヒューマンライフ没入編
31/104

失敗は成功の母

姿勢良く歩いてきて、部屋中央にある椅子の横に立つ。


「どうぞ、お座り下さいなのです」


博士に言われたところで、座る水無月。

背筋をぴんと伸ばして礼儀も正しい。


「筆記試験は満点だったのです。なかなか見込みがありそうなのですよ」

「それはどうも」

「ではさっそく。あなたが青い鳥に入団するために、

求めていることは何なのですか?」

「あの、俺は師匠を求めているのであって、青い鳥に入団とかは」


すみません、ちょっと待ってください、と博士に手のひらを向けて中断させる。

そうして振り返り、こちらのカメラに向かって話しかけた。


「おい、何だこの面接は?」


小声で文句を言ってくる水無月。


「弟子の資格があるかの面接よ」

「でも、青い鳥だって」

「素晴らしい指導者は、組織の一つや二つを持っているのは当たり前だわ」

「だとしても、あんなに小さな女の子が師匠? 馬鹿にするな」

「人は見た目によらないわ。あんなに小さな女の子でも、大きな組織を動かし、

数々の偉大な発明品で人々を救っては、脅かしてきたの」


清水が流れるように、すらすらと滑らかな説明をしていく有泉。


「うそつけ」

「あら、私が嘘をついたことがあって?」

「海ほどあるわ」


唾を吐きかけるように言い放って、

水無月は仕方なく、博士の方に向き直る。


「俺は師匠を求めて、ここに来た」

「その師匠に望むことは何なのですか?」

「強さだ」

「強さとは、何の強さを指すのですか?」

「もちろん、戦いの強さに決まっている」


当たり前だと言わんばかりな口調に、博士はため息をついた。


「そんなものを求めて、行き着く先は何なのですか? 自己満足なのですか?」

「いや、俺は自分の身だけではなく、俺の大切な人を守れるような強さが欲しい」


水無月は握り拳を作った。

ほほう、と博士は感心して頷く。


「志は高いようなのです。しかし、青い鳥は革命組織。

時には非情を持って、正義を貫かなければいけない場面があるのです。

あなたにそれができるのですか?」

「ふん、余裕だ。自分の守りたい人の為なら、その他大勢の犠牲はいとわない」

「心意気はご立派なのですが、口だけではなんとも」


腕組みをして、うーんと唸る博士。


「どこでもツクールの出番よ」


小声で有泉がアドバイスを送る。

何かに気がついて、藍色ローブの懐からカナヅチを取り出した。


「これで、俺の確固たる意志と共に、そこの板へと釘を打ちつけた」


博士は机に置いてあった板を立てかけて、眺める。

小さな指で、釘の一つ一つに触れていく。


「綺麗に打ち付けた何本もの鉄釘。強い意志は、物に意思を与えるのです。

表現されたこの文字が、まるで息遣いがあるようにウネウネと」


ぴょこん、と釘が飛び出た。

長机の上を這い回る。ウネウネと土を探すそれは。


「ミミズなのですか!」


椅子をひっくり返して、飛びのく博士。


「おい、これは何だ?」

「それはこっちのセリフなのです! 一体、どうしようと」


その時、水無月の持っているカナヅチから、白い羽が生えた。

ぱたぱたとはためかせて、水無月の手から離れる。


「は?」


白い鳥に変わったそれは、綺麗な弧を描いて

長机でうねっているミミズを、さらっていった。

一瞬の出来事だった。


「これは……。素晴らしい!」


華麗に、美しさすら覚える一連の流れに、博士は目を輝かせた。

今や白い鳥は、博士の頭の上で優雅にミミズを食べている。

あは、と無邪気に笑いながら、白い羽をそっと撫でる博士。


「水無月藍、わたしと一緒に世界を征服するのですよ!」

「はあ。それは、どうも」


イマイチ状況を飲み込めていない、水無月。

そこに、カメラの外から出てきた有泉が駆け寄った。


「あいちゃん、無事に就職先を決めたわね!」

「何の話だ?」

「師匠を失い、自分の居場所を捨て、路頭に迷った彼を救ったのは、

どこでもツクールでした」


カメラ目線で有泉が語っていく。


「あなたにも、欲しい物はありませんか? このどこでもツクールで、

あなたの明日を作ってい、いふぁっいふぁ!」


水無月が後ろから、有泉の両頬を引っ張る。

いあいあ、と横に口を開けられ目に涙を浮かべている。


「また下らない商品のために、俺をダシに使ったな」


ぐるんぐるん、と縦に横に引っ張ってから、パッと手を離す。

赤く腫れた頬っぺたをさすりながら、恨めしそうに水無月を見る。


「違うわ。落ち込んでいる、あなたを想ってのことなの」

「ふん、どうだか」

「もういいわよ。これでおしまい。

青い鳥の人も、ご協力ありがとうございました」


そう言いながら、不機嫌そうにカメラを止めに来る有泉。


「お前は、青い鳥に入団しないのですか?」


カメラに手がかかったところで、博士が話しかける。


「私が? ただのしがない、商人だわ」

「ほんとにな」

「あんたが言うんじゃないの!

これでも、セールストークには自信があるんだから」

「どんな珍品も売りつけてしまうからな」

「一見、役立ちそうでない物にも、良さがあることを教えているだけよ」


ぱちぱち、と拍手が聞こえた。


「素晴らしいのです。失敗は発明の母という言葉があるのですが、

どんなに失敗品のガラクタでも、必ず良さがあったりするのですよ」

「そうねえ。実際に、あなたの発明の失敗作が流れてくることもあるわ」

「青い鳥に入団すれば、もっと沢山の発明品を扱うことができるのですよ?

わたしは発明家なのですから」


博士は椅子の上に立って、胸を張る。

顎に手を当てて、考えを巡らせている有泉。


「わかったわ。あいと一緒に私も青い鳥に入団する」

「ちょっと待て。俺はまだ、入団すると決めたわけでは」

「おお! 素晴らしい。心より感謝したい、同志よ」


腕を広げて、迎え入れる準備万端な博士。

有泉は、行くあてなく宙ぶらりんになった水無月の手を強引に取る。

そして、広げられた博士の手を握った。


「わわっ」

「ほら、あいもそっちの手を握って」

「なんで、こんなことに」


不服そうにしながらも、もう片方の手で博士の手を握る水無月。


「こうして、どこでもツクールのおかげで、

あいは新しい師匠を作ることができました。あなたも、希望の明日を作ろう!」


急に振り返って、カメラ目線になって最後の語りを入れる有泉。

画面がフェードアウトしていく中で、水無月の文句の声が聞こえた気がした。


タブレットがリピート再生画面になっている。

映像が終わったようだ。


「なんづか……。感激したべな!」


つばきが、鼻をすすって目をごしごししている。


「美雪も! どこでもツクールは、愛を作れるのね」

「校長先生まで登場して、リアリティのある映像だったよ」

「リアリティというか、ノンフィクションだと思うけど」


豪健が小さく呟く。

つーか、今の映像のどこに感激要素があったんだ。

ただの水無月が騙されて青い鳥に入るまでの軌跡ではないか。


「なあ、たんぽぽも感激したのか?」


豪健がたんぽぽの姿を探して辺りを見回すと、

背後で座り込んで、三匹のウサギを並べて順番に撫でていた。

ウサギは一様に、気持ち良さそうに眠っている。


「って、お前はまた人の話を聞かずに!」

「ウサギが全てを語ってくれる」

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