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剣を売ってガチャるな!  作者: 原 すばる
第二章 リアルヒューマンライフ没入編
29/104

腕に脳みそがあったら赤子になるレベル

 お昼休みが終わった。ほんのりとした温かさと寂しさを胸に残して、

たんぽぽは教室を出て行った。


「たんぽぽのヤツ、どこのクラスなんだろうな」

「さあ。どこだって良いっしょよ」


豪健と望月が話している中で、

つばきは何かを心配するように教室の扉をいつまでも眺めていた。


 午後の授業も何事も無く過ぎていく。授業中、四匹のウサギの行動は、

白ウサギのラビちゃんは望月の膝の上か、机の上に乗ってずっと遊ばれていた。

黒ウサギのクロちゃんはつばきの元で、こちらもずっと付きっきり。

茶色と白黒の縞々ウサギは、好き勝手に徘徊し、好き勝手に可愛がられていた。


「ほんなら、ガチャガチャ様の所へ行くべ」


放課後になって、つばきが黒ウサギのクロちゃんを抱きかかえて立ち上がる。


「もしかして、ウサギ小屋を作って貰うつもりなのか?」


足元を走っていた茶色のウサギを抱えて、豪健は尋ねた。


「んだ、四匹とも持ってけえることはできねえがら」


困ったように笑うつばき。


あんまりガチャガチャ様に頼って欲しくないなあ、と豪健は思う。

それはつまり、現実世界でダンジョンガチャを回しに行くことに

繋がるのではないか、と。


「僕が作るのを手伝うよ。だから、ガチャガチャ様は待って欲しい」

「えっ、良いのか?」

「もちろん。人手が多ければすぐだよ。モッチーナもどうだ?」


豪健が振り返って聞くと、望月は眉間に皺を作ってうーんと唸っていた。


「あたいはー」

「はいはーい、美雪にも手伝わせて欲しいなあ」

「そういうことなら、あたしも手伝っちゃうよー」


望月が答える前に、美雪と友塚が立候補してくる。


「おおっ、二人ともありがとう。助かるよ」

「私も、参加する」


にゅう、っと豪健の机の上にいきなり顔を出すたんぽぽ。


「うおっ、たんぽぽ! どこから出てきたんだ!」

「地面」

「さあて下校イベントは、って、おおっ見たことない可愛い子ちゃん!」


右隣の勇者がたんぽぽを見てテンションを上げている。


「ね、ねえ、どどど、どこのクラスなの、き、君は?」


身体をぴんと伸ばして、後ろ頭をかいて、どもりながら尋ねる勇者。

初対面の女の子にそこまで挙動不審になるのか。


「人間のゴミが、口聞かないで」


ゴミを見るような眼差しを送るたんぽぽ。

はふんっ、と勇者は嬉しそうな悲鳴を上げて鞄を持った。


「はふん?」

「で、では、さらばだ諸君」

「あっ」


止める暇も無く、勇者は教室を去った。


「ごめんなさい、私も」


その後を追うかのように、宮下も教室から出て行く。

勇者が来なければ、やっぱり宮下も無理か。

机に顎を乗せているたんぽぽに向き直る。


「お前なあ、人手を減らしてどうするんだよ」

「その分、時間をかけて作れば良い」

「その時間が僕達にはないって。あっ、そうだモッチーナは?」


返事を聞きそびれていたと、振り向く。

望月は目をつぶって立ち上がった。


「あたいは剣の練習をするっしょ。今日は一度もしていませんでした」


言いながら、逃げるように教室を出て行ってしまう。

うーん。最近のモッチーナの様子が変だ、と豪健は思う。


元来、何事にも呑気に構えてのほほんとしているようなヤツが、

こっちの世界に来てからは、深刻な顔つきで、時々切ない影を見せて。

あまり輪の中にも入ろうとしない。


どうする、ここは追うべきか。


「放課後の時間も限られているし、とっとと準備しましょうよ!」


美雪が腕を組んできた。

こ、この弾力のある、柔らかい感触は!


「んだな。屋上の森の中に、ウサギ小屋を立てるべ」

「よーし、レッツゴーだね。って、みゆちんくっつきすぎ!」


友塚が引き剥がそうとするのを、美雪は堪えて腕にしがみつく。

はふん、何だこの、これは!

豪健がだらしなく鼻の下を伸ばしていると、たんぽぽと目が合った。


「ゴミみたいな顔」


ぽつりとそれだけ言って、屋上へ向かうつばきの後を追った。

豪健はこほんと咳払いをして、いやーんとトーン高く叫ぶ美雪を引きずりながら、

屋上を目指した。廊下を歩く生徒に何事かと見られては、笑われた。


 屋上に着く。つばきが森の前でじっと森を睨みつけていた。

西日を浴びた森が、薄らと照れている。


「よぐ考えたら、ウサギ小屋の作り方、知らねえべなー」


その呑気な物言いに、頭からダイブしそうになる豪健。


「そういうのは事前に調べておくとか、準備をしておけよ!」

「馬小屋なら作れるがな!」


わっはっは、とお叱りを意に介さずに笑うつばき。


「馬小屋、ナイトメアちゃん、思い出す」

「んだ、たんぽぽちゃんもナイトメアちゃん飼っているべなー」


振り返って満面の笑みで聞くつばき。

うん、とたんぽぽは小さく頷く。


「良く、柵を壊す」

「そうそう、うちのもわんぱくだべなー。娘と良くコンコンて直してやったべ」


コンコンとハンマーで打つ真似をしてみせる。

友塚が眉間にしわを寄せた。


「あたし達学生なのに、娘って。つばちん何言ってるの?」

「いやーん、つうくん、隅におーけーなーい。美雪も頑張ろ!」


美雪はさらにわがままおっぱいを豪健にくっつけていく。


「あんれー。ワシ、なーに言っちょるけえ。ガチャガチャ様のノイズけえ」

「つばちんが増えるウサギを頼んだからだよー」


友塚が両脇に抱えた縞々と茶色ウサギを見せる。

つばきは胸に居る黒ウサギの顔を覗き込んで、めっと叱る顔を作った。


豪健は美雪の感触に頭の中がピンク色に染まっていく中で、

努めてつばきの発言を考えようとする。


ウサギを頼んだから、ガチャガチャ様のノイズが起こっただなんて、

そんなあやふやなモノじゃない。


先ほどのは紛れもなく、現実世界で操作しているプレイヤーの発言、

たんぽぽのお父さんが言ったはずなんだ。


豪健と同様にたんぽぽも確信していた。

目の前の男子生徒の向こう側に、自分のお父さんが居ると。


「あの、おとう……」

「あらあら、こんな所で皆さん。何かお困りですか?」


たんぽぽが何かを言いかけたところで、

森の中から耳の奥までとおる滑らかな声が聞こえてきた。

青い蝶ネクタイが目に留まる。


「ん、お前さんは誰だべ?」

「これは、申し遅れました。私、青組の有泉セーラと言います。

以後、お見知りおきを」


ぺこりと礼儀正しく頭を下げる有泉。


「なんだあ! 青組の生徒さんとは知らず、失礼したべ」

「嘘、青組の生徒の前で、美雪ったらはしたない」


美雪がぱっと豪健の腕から離れた。

あー、と名残惜しそうに腕を撫でながら豪健は尋ねる。


「青組って何?」

「学園で特に品行方正、成績優秀な生徒が選ばれるクラスだよ。

人数が少なくて、滅多に会えないんだよね」


友塚が声をひそめて説明してくれる。


「そういう僕らは、何組?」

「どぶネズミ組」

「は?」


蔑称かな? と冗談っぽく笑みを作るが、

友塚は真面目な顔を崩さない。


「だから、私達からしたら青組の生徒は雲の上の存在なんだ」


羨望の眼差しまで向けている。

だからって、どぶネズミ組は無いと思うのだが。


「百歩譲って、ネズミ組だろう」

「人間のゴミ組」

「お前からしたら、全てのクラスがその名前だろうな!」


豪健が声を荒げる。

ふふっと、頬をピンクに染めて照れている。


「その反応はおかしいよ!」

「あの~、そろそろ良ろしいしょうか?」


困り顔の有泉に、いんやーすまんねえとつばきが率先して謝った。


「実はワシらあ、ウサギ小屋作りたいんがな。作り方知らんくて困っていたべ」

「あら、そういうことでしたら、とっておきの商品をご紹介させて頂くわ」


ようやく本領発揮と、有泉が妖しい笑みを浮かべた。

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