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異世界魔獣戦記  作者: がちゃむく
第2部 学園生活編
35/89

第25話 激闘

前回も書きましたが、活動報告に頂いた、本作のヒロイン「リリア・ガーネット」の絵を掲載しています。よかったらご覧ください。

 敵の攻撃から体を強固に守るはずの黒い甲冑が継ぎ目ごとにバラバラになり、機敏な動きで巨大な蜂の周りを飛び回る。

 もともと、対魔獣殲滅兵器(ABER)の攻撃をものともしないほどに、堅固な盾として機能していた甲冑は、速度が与えられたことで、樹齢何十年という太い幹をした巨木を一撃でなぎ払うほどの威力を持った矛にもなった。


 もちろん、この世界に存在する全ての女王機蜂クイーンホーネットにこの能力が備わっているわけではなく、今、湊たちが対峙している固体だけが、他の同種の魔獣にはない能力を発露させた亜種だからこそのものだが、そんなことは湊たちにとって何の慰めにもならない。


『勘忍してや、みんな……。完全にウチの読み違いや……』

『いやいや。魔獣と戦うかもしれないって想定をしてただけでも十分だ。さすがに、相手が亜種かもしれないってのは誰も予測できねぇって……』

『アッシュ先輩の言う通り、です。こんなのを予想できた人がいたのなら、むしろその人が何を企んでるかを疑う、です』

「それにたぶん、これはリリアも予想外だと思うよ?」


 悔しそうに歯噛みするアリシアを、けれどチームの誰も責めるようなことはしない。


『…………ほんま、ありがとな……』


 仲間たちに聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いたアリシアは、大きく深呼吸をして気分を入れ替える。


『ともかく、や! 相手が亜種で、あの鎧みたいなんがバラバラに飛び回ってても、やることは変わらへん! むしろ鎧が外れたからこっちの攻撃が当たりやすくなる! あの飛び回っとる小さいのに注意やで!? あれは当たったら痛いで!』

「痛いじゃ済まないよね!?」

『下手しなくてもこっちの装甲が一発でおしゃかだな!』

『整備課のみんなに怒られる、です!』

「怒られるどころか、下手をしたら死ぬからね!?」


 律儀にツッコミを入れつつも、しっかりと武器を構える湊の横で、年下の天才少女(ユーリ)がハンドガンを構え、女王機蜂へ向かって引き金を引いた。

 吐き出された弾丸は、湊と違ってまっすぐに女王機蜂へ向かって飛んでいき、しかし、輪郭が霞むほどの速度であっさりと避けられ、女王機蜂の後ろにあった樹に当たって、その幹を深く抉る。


 銃弾があっさりと避けられたことに、ユーリは落胆しない。

 なぜなら、自分が銃を撃つと同時に、魔獣が避ける方へ向けてすでに攻撃態勢に入っていた頼もしい仲間(アリシア)がいたからだ。


『そうくると思っとったで!』


 叫ぶと同時にハンドレバーのトリガーを引き、バックパックからマルチミサイルを大量にばら撒く。

 高速で移動したら、突然目の前にミサイルが大量に飛んできたのだ。当然、避けられるはずもなく、女王機蜂は自らミサイルの大群に突っ込んでいった。


 炎が弾け、煙が巻き上がって魔獣の姿を覆い隠す。

 これで仕留めらるとは思ってないが、少なくとも女王機蜂クイーンホーネットの動きは止まった。その瞬間。


『今や!』


 アリシアが短く叫び、待ってましたとばかりにアッシュが銃の引き金を引いた。

 弾倉内の紫獣石ビスダイトから生成されたエネルギーが光の筋となって銃から飛び出し、アリシアと湊の間をすり抜けて、狙い違わず女王機蜂がいるところへ突き刺さった。


『やったか!?』


 油断なく銃の照準を合わせながらも叫ぶアッシュの視線の先で、ゆっくりと爆煙が晴れていく。


 誰もがかたずをのんで見守る中、ほどなくして煙の向こうから現れたのは、傷などどこにもなく、悠然と羽ばたく女王と、その女王を脅威から護る堅固な壁となった黒い甲冑だった。


「完璧なタイミングだったのに……」

『俺も確かに手ごたえを感じたんだがな……』

『……です。私も、あれは「やった」と思った、です』

『どうやら、敵さんの飛び回るアレは、本体と同じくらいのスピードを持っとる、ちゅうことやろな……』

「さて、どうする?」


 そう湊から投げかけられた問いに、アリシアは必死に頭を巡らせた。




◆◇◆




 リリア・ガーネットはモニタを見ながら、深い柘榴石色(カーバンクル)の瞳に不安の色を浮かべ、眉根を寄せる。

 そこには、危なっかしい戦闘を繰り広げる訓練生たちの姿が映し出されている。


 いくら何度もシミュレーターによる訓練を重ねたといっても、実際に魔獣と戦闘をするのは今回が初めてなのだ。

 想定外のことなどいくらでも起こりえるし、目の前の魔獣が発する覇気や濃密な殺意に中てられて、シミュレーターほどの動きができていない訓練生も少なくない。それどころか、パニックを起こしている訓練生もいるくらいだ。


 本当なら、今すぐにでも訓練を中止にして助けに行きたい。

 特に湊たちのチームは、通常ですら厄介な女王機蜂クイーンホーネットの、さらに他の個体にはない特殊能力を身に着けた亜種が相手なのだ。

 事実、モニタの向こうでは、その特殊能力を発現させた女王機蜂クイーンホーネットが湊たちに向けて、硬く黒い甲冑を殺到させている。

 今は何とか凌いではいるものの、いつその凶悪な一撃が湊たちのABERの装甲を抉るかわからないほど、危険な状態なのだ。


 そんなリリアの心配を察したかのように、湊たちのチームを監視していた教官から連絡が入る。


『ガーネット先生! あの女王機蜂クイーンホーネットは亜種です! 彼らにはまだ荷が重すぎる! 救援の許可を!』


 訓練生を無為に死なせたくないのは、この教官も、そしてリリアも同じだ。今すぐ「お願いします」と叫びたい。

 しかし、リリアは強く拳を握りながらその衝動をぐっとこらえると、マイクに向かってこう言った。


「許可は出せません……!」

『……っ!? どうしてですか!? 相手は亜種なんですよ!?』

「分かっています!」


 強く言う。


「私だって何度も亜種と戦っていますので、どれくらい厄介なものなのかは十分に理解しています!」

『だったら……!』

「それでも、です!」

『…………?』

「今、彼らに救援を出すことはできません。なぜなら…………」


 そこで一度言葉を区切って、リリアは湊たちが奮闘するモニタに目を向ける。

 強く握りしめた拳に爪が食い込み、皮膚を破って血が流れるのも構わずに、モニタに移る映像を見続ける。


「なぜなら、彼らはまだ諦めていないからです。今、この場を切り抜けることを……、生き抜くことを……、そして戦うことを……彼らは諦めていません。必死でこの課題をクリアしようとしている。そんな彼らの決意を挫くような真似を、私はできません……」


 本当はいの一番に駆けつけて、助けてあげたいのを必死に押さえつけるリリアの覚悟を見て取ったのだろう、教官はしばらく沈黙した後で、絞り出すように口を開いた。


『分かり……ました……。ただし、こちらで彼らにはこれ以上無理だと判断した場合には、すぐに介入します』

「……よろしくお願いします……」


 ぷつり、と通信が切れたのを確認して、大きく息を吐き出す。


「どうか……無事に帰ってきてくださいね……、ミナト……」


 桜色の唇から漏れたその呟きは、けれど彼らには届けられない。




◆◇◆




 一方そのころ、湊たちは殺到する黒い甲冑の群れを必死になって避けながら、アリシアの作戦の説明を受けていた。


『ええか! これまであのちっこいのの分析をしてて分かったことがある。……っと! どうやらあれは、それほど複雑な動きをしてへん!』

「どういうこと!? っとりゃあっ!」


 自分に向かってきた小さな甲冑の一つをハルバートで打ち返しながら問い返す湊。


『たぶん、あいつ自身もあれだけの数を細かく、制御できない、です!』

『そういうことや! あのちっこいのは命令を与えられなければ、女王の周りをぐるぐる回る! 攻撃の時はある程度の方向指定はできるみたいやけど、ただ一直線に飛んでくるだけ! 防御はちっこいのを集めて壁にするくらいや! さすがにあれだけの数やから、一つ一つに細かい命令を与えることはできんとちゃう? その証拠に、あれだけの数がありながら、ウチらの攻撃を防ぐんと、余ったちっこいので攻撃と、同時にやっとらん!』

『なるほどな! ということはそこに付け入るスキがある、ということか!』

『その通りや! ほんなら改めて作戦を説明するで! まずはアッシュは今まで通り、あいつの攻撃範囲外で待機して狙撃や!』

『おう! 任せとけ!』

『ほんで、ウチらは三人であいつを取り囲むように移動する! 少なくとも必ず一人はあいつの後ろにいるようにや! 今までの攻撃パターンからして、あいつは正面から多少角度をつけた程度しか、あのちっこいのを飛ばさへん! せやから、あいつが誰かに攻撃を仕掛けた瞬間に、残った二人とアッシュであいつに一斉攻撃すれば、当たるはずや!』

「なるほど! 分かった!!」

『了解、です!』

『ほんなら、いくで! 次にあいつがちっこいのを飛ばしてきたら、それが合図や! 下手こいて当たるんやないで!?』

「それを言うならアリシアこそ!」

『いざとなったら、俺がサポートしてやんよ!』

『アッシュ先輩のサポートは信用ならない、です!』


 いつものように軽口を叩いていると、ぐるぐると女王の周りを飛び回っていた黒い甲冑が一斉に女王の前に並び、鋭い切っ先を湊たちに向けてきた。そして。


 ――ギシャアアァアァアアッ!!


 金属が擦れるような、耳障りな女王の咆哮を合図に、働き蜂たちが一斉に湊たち目掛けて飛来する。

 事前にその攻撃の予兆を察知していたアリシアの合図で、湊たちが一斉にその場から飛びのいた直後、それまで湊たちがいた場所を黒い働き蜂たちが、樹や岩などの障害物も纏めて薙ぎ払いながら輪郭が霞むほどの速度で通過した。


「危ないなぁ! まったく!!」

『ほんまやで! 当たったらどないしてくれんの!?』

『魔獣相手に訴訟なんてできねぇだろ……』

『馬鹿ばっか、です!』


 魔獣相手に言いたい放題言いながらも女王機蜂の隙を突いて、それぞれが配置についた、その時だった。

 女王機蜂クイーンホーネットが湊に針を向け、そこからビームを撃ち出した。


「っ……!?」


 アッシュの狙撃に匹敵するその一条の光を、湊はとっさに機体を伏せさせることでかろうじてやり過ごす。

 ABERの装甲を掠めながらも、遥か後方へと流れていく光の筋に、ほっとしながら前へと視線を向けた瞬間、湊は確かに女王機蜂クイーンホーネットが、その鋭い顎を開いて「ギチリ」と嗤うのを見た。

 一体何がおかしい? という湊の疑問に、その後すぐに聞こえてきた少女二人の悲鳴が計らず答えた。


『きゃあっ!?』

『うぐぅっ!?』

「アリシア!? ユーリ!?」


 悲鳴を上げた本人たちも、湊も一体何が起こったのか理解できなかった。

 ただ、女王機蜂が撃ったビームが外れたと思ったら、突然アリシアとユーリが後ろから攻撃を受けたということだけは理解できた。

 幸い、二人とも思ったよりも損害は軽微で済んだものの、何が起きたのか解らなければ、同じような攻撃を何度も受けてしまうことになる。

 そんな中、唯一、離れたところにいてすべてを見ていたアッシュが、信じられないといった様子で口を開いた。


『おいおいおいおい……。マジかよ……』

「アッシュ……?」

『あの甲冑……、ビームの分割と反射もできるのかよ……』


 アッシュの説明によると、湊の機体を掠めたビームはそのまま真っ直ぐに進んで甲冑に当たり、突如、二手に分かれながらその軌道を変えたらしい。

 そうして、跳ね返ったビームは途中の甲冑を何度か経由して、いつの間にか後ろに回り込むように配置された甲冑から、アリシアとユーリに直撃したのだ。

 二人とも損害が少なかったのは恐らく、分割され、さらに何度も反射を繰り返したことで、エネルギーが減衰した結果だろう。


「それはまた……反則級じゃん……」

『なんぼ、亜種言うても、やりたい放題しすぎとちゃうか?』

『いい加減にしてほしい、です!』

『けど、まぁ……。来るいうんが分かっとるなら、話は別や! あいつがビームを撃った方向にあるちっこいのの角度から、いつ、どこから来るかは分かる!』


 そういって、さっそく黒い甲冑の位置をレーダーで探り、データを打ち込み始めるアリシアに、アッシュが疑問を挟む。


『けどよ……。ビームを反射できるとなると、ますますあいつに近づけねぇんじゃねぇのか? どうやってあいつを足止めするよ?』

「ちなみに、アッシュの狙撃はどうなの?」


 湊がそう訊ねた数瞬後、空気を切り裂きながら飛来した光がまっすぐに女王機蜂に突き進む。そうして、そのまま当たるかと思われた瞬間、素早い速度で女王と光の筋の間に割り込んだ数枚の盾によって、あっさりと防がれてしまう。

 それを見たアッシュは特に落胆した様子もなく、言う。


『まぁ……なんとなく分かってたことだけど、だめだな……』

『やっぱり隙を突くしかない、です』

『問題はそこなんよな……。ビームをいろんな角度から当てられるっちゅうことは、ますますウチらは近づきにくくなる言うことやし、かといってアッシュの狙撃は簡単に防がれる……。いくら損傷は少ない言うても、当たり続けられるもんでもないし……。どないしたもんか……』

「う~ん……」


 隙を突く方法が見つからず、頭を悩ましていると、再び女王機蜂クイーンホーネットが巨大な針からビームを、今度はユーリのほうへ向かって撃ちだす。

 すぐさま機体を操作して避けたユーリの後方へ飛んで行ったビームは、そこに控えていた働き蜂の一つに当たり、今度は三本に分かれながら、角度を変えて飛んでいく。


『おいでなすったで! ちっこいのの位置から見て、ユーリはまた後ろから! ミナトは右横からくるで!』


 黒い甲冑の位置と角度から、弾道の飛来する角度を計算したアリシアの言葉に従い、湊とユーリはすぐさま機体をその場から移動させる。


『ほんでもって、ウチも後ろから来る……っと!』


 高機動モードで機体をスライドさせた横を、細くなったビームが駆け抜けていき、やがて力尽きたように消える。

 そのタイミングに合わせるように、アッシュが銃の引き金を絞るが、やはり盾となった働き蜂に防がれ、攻撃が当たる様子はない。


『チッ!』


 アッシュが焦れたように舌打ちをする中、ふと湊が閃いた。


「ねぇ……。あの小さいのの位置と角度は分かるんだよね?」

『……? そうやけど? それがどないしたん?』

「……だったらさ、逆にそれを利用できないかな?」

『どういうことだよ?』

「だからさ……、あいつがビームを反射できるんだったら、逆にそれを利用するんだよ。あの小さいのの角度を僕らで調整して、飛んできたビームが逆にあいつに当たるようにする……とかさ……」

『……確かにそれができたら楽なんやろうけど……。せやけど、どうやって角度を調整するん? ウチは計算するだけで精いっぱいやし、ミナトたちも近づけへんやろ? …………ってそうか!』

『アッシュ先輩の狙撃ならできる……です!』

『その通りや! まぁ、それでも角度を調整するいうんは至難の業やと思うけど……。アッシュ……、自分、できるん?』


 挑発を含んだその言葉に、アッシュはにやりと笑って見せる。


『はっ! 誰に言ってやがるんだよ! それよりもお前こそ、計算ミスるんじゃねぇぞ?』

『さっきのセリフ、そのまま返したるわ……。ウチはそんなミスせぇへんわ!

 ……ほんなら作戦は決まりやな! ウチは計算、アッシュは角度の調整。そんでもって、ビームを跳ね返したらミナトとユーリであいつをたたく。あいつも、まさか自分が撃ったビームがそのまま自分に跳ね返ってくるとは思っとらんはずやから、必ず隙ができる。その隙を突いて、翅を破壊するんや。いけるようやったら、そのまま仕留めたり!』

「了解!」

『任せとけ!』

『やってやる、です!』


 活路が見えたことで、気合十分の湊たち。

 その気迫が伝わったのか、女王機蜂クイーンホーネットが、針にエネルギーを収束させる。


『敵さんが攻撃態勢に入ったで! 針の位置から方角はミナト! そっちにある小っこいのの場所と角度を算出! ビームを返却するのに必要な小っこいのの位置と角度は…………! ……出たで! データをアッシュに送る! 外すんやないで!?』


 素早く必要なデータを揃えたアリシアが、反撃の狼煙になるデータをアッシュに転送する。


『おっしゃ! 任せとけ! ミナトとチビっ子も頼むぜ!』

「分かってるよ!」

『チビっ子いうな、です!』


 すぐさま射撃体勢に入ったアッシュが、データで表示された黒い甲冑に狙いをつけ、引き金を絞る。

 まっすぐに飛んで行った弾丸が、見事に標的を直撃。その角度をわずかに変えて、明後日の方向へ飛んでいく。

 それと同時に、女王機蜂から撃ち出されたビームが湊を掠めて、アッシュが狙撃した働き蜂に当たる。

 本来ならば、何本かに分かれながら、他の働き蜂を経由して湊たちを強襲するはずだったビームは、角度を変えられたことで別の方向へと反射する。

 ビームを撃った女王本人へと。


 まさか自分の攻撃が、そのまま自分に跳ね返ってくるとは思ってもみなかった女王機蜂クイーンホーネットは、それでも咄嗟に近くを飛んでいた働き蜂を呼び戻して、盾にする。

 そうして、ビームを再び弾き返すことはできなくとも、どうにか防ぎ切った直後だった。


「今だ!」

『行く、です!』


 一気に距離を詰めた湊とユーリが、それぞれの武器(ハルバートと剣)を、思いっきり女王機蜂へと叩き付けた。

 鎧を自ら外して働き蜂とし、思わぬ反撃で体が硬直した女王へと繰り出された二人の一撃は、見事に女王機蜂の翅を捕らえ、地面にたたき落とした。


そうして女王機蜂クイーンホーネットに、決定的な隙ができた瞬間だった。


 アッシュの膨大な熱量を持った光の筋が、アリシアのバックパックに残されたすべてのミサイルが、ユーリの鋭い斬撃が、そして湊の力強く振られたハルバートが、一斉に女王機蜂クイーンホーネットに襲い掛かる。


 ――ギシャアァァアアアァァァアッ!


 耳障りな断末魔を最後に、赤々と灯っていた複眼の光が消え、亜種の女王機蜂クイーンホーネットはついに絶命した。


「…………やった……!」

『うっしゃぁぁあああっ!』

『勝ったで!』

『やりました、です!』


 湊たちの渾身の雄たけびが、演習場に響いた。

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