英雄と黒鍵
「というわけで、ショッピングに来ました!」
俺はアオナに連れられ最初に立ち寄った街に来た
「何から見ようかしら、…あ、あそこのお店」
アオナは女性のアクセサリーショップに向かった
俺はやっぱりと思った、どこの宇宙・銀河・星でも女の子というモノは誰かのためにショッピングに行こう!とか言っても来てみたら盛り上がって目的・本題を失い自分のことに走ってしまう、そしてノコノコついてきた男は最期…荷物係に徹する…
「ねぇねぇ昇梨、こんなのどう?似合う?」
始まりました!始まりましたよ!女性特有の特徴のどちらが似合うか似合わないか選手権!……本当にこれは苦手だ…なぜなら、「似合うよ!」と言った体にしよう「えー、そう?こっちの方が似合ってない?」こうなります、もし「もう片方の方がいいと思う」などと答えてみよう「えー、なんで?似合ってるじゃん」こういう返答が返ってきます…俺はこの時思います…無意味すぎるやりとりだ!時間の無駄だ!と、でも反応しなければ何度も聞いてくる可能性もあり最悪気分を害し面倒なことになるかもしれないので一応反応します
「その指輪アオナによく似合ってるよ色もアオナの瞳と同じよう綺麗に澄んだ青色だし、アオナにしか似合わなそうだよ、他の人にはもったいないくらいだと思うよ」
ふぅ、褒めて共通点も入れてこれ以上完璧な返答があるか!?
「え、じゃあ、やめる」
…なんで!なんでだよ!
「なんでやめるんだよ!せっかく似合ってたのに!」
おかしいだろ!なんか俺のコメントに変な部分あったか?
「だって今日は昇梨のためのショッピングじゃない、私は似合うか聞いただけで買うなんて言ってないわよ」
・・・俺の考え抜いたコメントを返せ
そんでわかってんなら最初から俺のための武器屋とかに行けよ!
「だったら最初から武器屋とかに寄ってくれよ」
と俺が言うと、アオナはちょっと寄りたかっただけなのにという顔をして歩き始めた
「あーあ、せっかくテンションあげて来たのに駄々下がりね、誰かさんのせいで」
物凄い大きな声の独り言ですね、というかもう絶対に俺への当て付けだよな…
俺らはこれから修行する、ということなのだが俺は修行のための装備ももはや武器すらも持っていない、言わばこの世界でいうただの一般人に過ぎない、だからこの女王様が俺に買ってくださるようだ
「まぁ、遊びに来たわけじゃないし昇梨もノリ気じゃないからすぐ本題に入ってさっさと帰ることにしましょうか」
言い方…言い方がなんか「私は昇梨のために来たわけで遊びに来たわけじゃないから、洋服屋とかには絶対よらない」と自分に言い聞かせてるようにしか聞こえない、(あくまで俺の解釈だが)
少し歩くとあの大羽と過ごした、アオナが紹介してくれた宿屋があった、俺は立ち止まり少し見てはまたアオナの後に続いて歩き始めた
それから少しすると昔からありげなボロついた店の前でアオナは止まった
「入るわよ」
俺はその一言に驚きを隠せなかった今まで歩いてきた道のりには人が盛んに集まってたりそこら辺に貼られていたチラシの店もあった
なのになんでこんな、空き家のボロ家みたいなところなんだ、と俺が考えに浸っているとアオナが早く早くと言わんばかりに手招きをしてきたので俺はされるがままにその店に入った
「いらっしゃい、…あらまぁ、これはまた珍しいお客さんで」
声をかけてきたのは優しげなお婆さんだった、それより俺は店内を気にしたとてもいい武器があるとは思えないほどのボロさであるからだ
「お久しぶりです、お婆ちゃん」
「え、何、アオナの祖母なの?」
と俺が聞くとなんでそうなるのよ、お婆ちゃんぽいからお婆ちゃんって呼んでるのよとため息を吐かれた
「それでアオナちゃん、なんのようだい?」
「あのね今回はこの私の後ろにいる男の子に装備を買いに来たの」
男の子とは俺のことか…
「すまないねぇ、アオナちゃん、今は防具は売り切れなんだよ」
「なんで?どうしたの?」
と聞くとお婆ちゃんは話の流れをカクカクシカジカで伝えた
「闇税金屋ね、取り戻してくるから安心して」
とアオナが胸を張った
「ほんとかい、ありがとうねぇ、でも危険なことはやめてくれよ、お嬢様なんだから」
とお婆ちゃんが言って、指をならすと店内が揺れ始めデカイタンスなどがゴタガタ音も鳴らし始めた、がアオナは全く動じていない
「アオナ!何が起きるんだ!」
俺がワタワタしながら大声を出すとお婆ちゃんがもう一度指を鳴らした
ガタガタガタガタガタガタガタガタ…ガタンッ!
音が鳴り終えるとデカイタンスの場所には剣が何十本も吊らされてあり、他の場所も剣や魔法の杖らしきものに変わっている
「どう昇梨?あんたがボロそうと思って見ていた店内があのお婆ちゃんの指鳴らし1つでこんだけ変わるのよ」
あのお婆ちゃん、何者?
「アオナちゃん、あと坊や思う存分見ていき、時間はあるから」坊や呼ばわりなのは気にくわないけど、絶対このお婆ちゃんタダ者じゃないよな
「お婆ちゃん、あれでいいわ」
アオナが指差したのは、お婆ちゃんの座っている畳の下だった
「ありゃ!アオナちゃんには敵わないねぇ」
「昔からお婆ちゃんが隠し場所を変えないのがいけないんでしょー」
そんなやり取りをしながらお婆ちゃんは自分の下の畳を開けて剣を取りだしアオナに渡した
「それは黒鍵という黒色の剣だよ」
「これも誰か英雄が使ってたの?」
お婆ちゃんは同じ場所に座り直し話を始めた
「黒鍵はある16歳くらいの男が使っていた、その男は愛する者のために黒鍵振るい強くなった、いずれ男はその黒鍵でこの世界を救った、それも魔法もない時代で…」
俺はその話を聞いてアオナから剣をとり背中に背負った
「よし」
「お婆ちゃんありがとね、お金は城から出すから」
「まだ話は終わってないのじゃが…」
お婆ちゃんその細い声は静まった店内で悲しく響いた
「防具はまた今度になるわね」
明後日の方向を向きながらアオナが独り言のように言う
俺はそんなアオナの独り言じゃないような独り言よりあの店を知っていたことに疑問を持った
「それより、なんでアオナはあんな店を知っているんだ」
「それはね…」
とアオナの昔の話をしながら俺らは街を後にした