マイアーという第四ステージ
では、マイアーはどうでしょう。いつもにこにこ笑うマイアー。『半月』の項でも触れたように、これは第四ステージの人間のサインみたいなものです。
私は前に、第四ステージの人間とは第三ステージをピックアップする人のことだと言いましたが、ここでの第四ステージはそのような形では登場してきません。マイアーという不死者はまぎれもない第四ステージの人物なわけですが、彼の思想が垣間見える台詞が作中にはあります。
マイアー「この先『不死』を広めたとして……それが世界に浸透すれば、この世の倫理観や宗教、法律は一変するぞ。そのうちに、こんな考えも出て来るだろう……『相手の全知識を受け入れたのならば、その者は自分の内に生きていると言えるだろう』とな……。私は、未来が自然にそういう世界になるというのならそれも構わない。だが、自分がその原因を作るのは御免だ。私は、この世界が好きだからな」
この、「未来が自然にそういう世界になる」のは構わないが「自分がその原因を作る」のは嫌だという思想は、現今のサブカルチャーにありふれた「変革」を否定するかのように発されている。つまりマイアーは、あるいは作者は、人がステージを違えることを基本的にはよしとしていないのだ。だからこそこの物語は、ステージを違えてしまった物乞いによって調合師が殺されたところから寓意的にスタートしているのだとも読めるのです。人が個々に違うのは当たり前なのであり、人が人をわからないというのも当たり前なのだから、その当たり前の連鎖する世界を見て、好きになろうとする思想……それこそ、単世界論者の見方なのかもしれません。いや、私は成田良悟の思想がなにも単世界論なのかどうかまでは知りませんが、少なくともこのマイアーは単世界論者であり、私の言うところの第四ステージに相当します。笑顔がそのメルクマールにして、トレードマークです。まあ、これがフィーロの騙り話なのだとすると、マイアーではなくて、フィーロの思想になってくるのかもしれませんが。




