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物乞い・マフィア・チンピラという第一ステージ

ちょうど面白いことにこの小説には、第一から第七までのすべてのステージの人たちが登場してきます。これもまた、奇遇といえば奇遇。ステージ理論は私が考案したものだというのに、この小説にぴったり符号するというのは、いやはや偶然ですね。無論、成田良悟と私の思想は異なります。成田良悟は世界を七つには区分していないでしょう。むしろ彼は、私には理解し難い単世界説を採用していて、だからこそこのような七つの世界入り乱れての小説が書けたのかもしれません。これもまた、深く読まねば――否、深く酔わねばわからないということでしょうが、まずはともあれ、『バッカーノ!』の中から第一ステージを記述してみましょうか。


私の考える第一ステージというのは、既にお気づきかと思いますが、「取って食べる」段階にあります。それはつまり、イノシシを追っかけたりマンモスを貪ったりする、そういう原始人の段階をコインの裏=第一ステージと私は呼んでいるわけですが、では科学の進歩めざましい近現代において、未開の民族はさておけば、このアメリカを舞台とする小説では誰がこの第一ステージにあてはまるかといえば、ノッケから登場してきますね。つまりホームレスです。フィーロに花を渡そうとし、紙袋の中からナイフを取り出したこの乞食の男は、間違いなく「奪って食べる」生活者です。その意味で、フィーロ達カモッラも、人から奪って食べている人達でしょうから第一ステージといえるでしょうし、ろくに一度も盗みをはたらいたことの無い愉快な泥棒二人組――アイザックとミリア――も、分別のうえでここに組み入れられるかもしれません。


ただしマフィアの中でもコンタユオーロだけは除外されるかもしれません。なぜというのも次の甄別で語りますが、出納係ないし会計係などというのは第一ステージの職掌ではないように思われるのです。ならば暴力こそ第一ステージの証なのかといえば、そうではありませんね。アイザックとミリアは車に轢かれこそすれ、時には車で撥ねこそすれど、暴力なんかちっともふるいません。さらに言うなら、不死の酒を調合していた雇われ人を殺したという乞食にしたところが、そういう行いをするようになってしまった契機はダラス達にあったのです。


ダラス『今は物乞いより強盗の方が儲かるんだぜ』


この「儲かる」という言葉は、私の分別では第二ステージに登場する言葉なのですが、ゆえに「儲け」を追及して物乞いの男が調合師やフィーロを襲ったと読むのであれば、彼は第二ステージの人間だと読むことも可能なわけですが――一概に、その人がどのステージに在るのかは判断できない場合が多いのです――ここでは明らかに、皮肉としてダラス達によって「儲け」という言葉が使われているので、私は乞食の男をダラス達ともども第一ステージに分類します。尤も、乞食が調合師を襲うきっかけになったのが上のダラスの台詞であり、それまで彼はおそらく恵みを施してくれた人に花で報いていたわけでしょうから、その意味において私の条件づける「取って食べる」は成立せず、「花」という、交換可能な物品――彼からしてみれば等価物であった物品――で布施者に応じるからには、彼は第二ステージであったといえるかもしれません。私がコンタユオーロを第二ステージに区分する理由はそこにあります。


ダラス「今ごろ本当に強盗になってたりしてな」


つまり、ダラスの取った不用意な行動と言動によって、乞食はステージを落とされてしまい、その結果調合師を殺すのであり、はからずも物語を始動させる重要な役割を担うことになるのでした。ステージの転落が、このお話を支えているのでした。


そう、私のいうステージとはいつでも前の段階に転落することがありうるのです。もちろんこれは成田良悟の思想ではなく、私が私なりの『バッカーノ!』の読みに、私の思想をあてがっている一人よがり……言ってみればこれは、妄想なのですが……あまりにもそれがフィットしているので、この先も各ステージを登場人物たちにあてはめて行きたいと思います。


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