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第13話 その3

 夜も更けて……城へ帰る途中の出来事。


 騒がしい物音と共に暗がりの中にある人影。怒鳴り声。


 何があったのかと、その声のする方へと近付いてみると……その中には先程話に上がっていた男、フェリドの姿と、その彼に言いがかりを付ける町民の姿。


 あれは……酔っ払っている?


 酔っ払った町人が3名と、それに囲まれているフェリドの構図……これはマズイ。


「ちょっと、そこのあなた方! 何をしているのですか!」


 一旦、大きな声でその集団に声をかける。大きな声というのは実は結構効く。人は突然の大きな音だとか声には否応無しに驚く。この驚きをそのまま利用して「なんだ?」と考える間を与えないうちに更に言葉を続けると驚いた印象のままその声を聞く事になるので、怯んでしまうのだ。


「ここは町内、しかもこんなお城の近くで何か揉め事ですか?!」


 俺が女王様の代理人である事ももちろん効果的に使う。これは向こうが勝手に気付いてくれたので別段こちらから仕掛けるような事はしなくて済んだが。


 ……酔っ払いどもは「女王騎士かよ」「けっ」等と絵に書いたような酔っぱらいの路線のまま、その場を立ち去っていく。


「お前は……女王様の代理人殿ではないか?」


「ええ、その通りです」


「丁度いい、話したいと思っていたところだ」


「私とですか……?」


 珍しいものだ、興味を持たれていたなんて……。そして声のトーンから察するに、これは敵意じゃない。今までの貴族の代理人等からのやっかみのような視線や態度ではなく、純粋に興味をもって話しかけていると分かる。


「ああ、この国の事も含めて少し聞きたいのでな」


「答えられる事なら答えますが」


「では聞きたい、ここはどこの国だ?」


「ええ? ジパンヌという島国のエチゴ国ですが……」


「そうか……俺は何者に見える?」


「……質問の意味がよく分かりませんが……」


「どうも、俺は他の人間と違うらしい」


「あのぉ、どういう意味ですか?」


 質問して来てるはずなのに、結局は逆に聞き返す事となった。会話がイマイチ繋がってないような気がしたからだ。


「ふむ、どこから話せば良いのかのう……まずな、ここは俺の知ってる国じゃないんだ」


「え? じゃあ誰かに召喚された……訳じゃない?」


「ああ、どうも俺は全く別の世界から来たらしい」


「……そりゃあ凄い……日本から来た、新しく日本から来たって事ですか?!」


「いや、そうじゃない、ニホンもジパンヌも知らない……」


「な、そんな事……あるのか……?」


「信じられんかもしれないが……異世界ってやつはいくらでもあるらしい」


「俺、私はそれは、なんと言っていいか、しかし……」


「あはははは! いやあ、すまん。困らせるつもりじゃなかったんだ」


「それじゃ、あなたは、どこから来たと言うんですか?」


「俺は東の……そう、ニホンに近い世界から来た」


「東? まあ、日本はだいたいRPGでは東の国って言われるけど……まさか、更に違う世界とは……」


「ここには結構、俺以外にも居るみたいなんだ、そういうのは」


「私にそれを話したところでどうしようもないのですが……」


「どうしようもない事はないだろう、女王様の側近で代理人なんだから」


「……あ、ああ、そうでしたね」


「まあ、俺がこの大会で勝てれば……直接女王と話す機会が出来る、俺のような流れ者が集まりやすいこの世界で、流れ者を優遇する、そういう国造りを提案したいんだ」


「そんなの、難しいでしょう」


「俺以外にもこの世界に流れてきてる流れ者は多いんだ。俺はそんな人間全員が、安心して暮らせるような場所を提供したい」


「それを、ひとりでやろうって思ってるんですか……?」


「この世界は、冒険者として召喚された者には優遇されるが、そうじゃなくて迷い込んだものには厳しすぎる」


「……不死の冒険者とは、確かに違う待遇が待ってそうですね……」


「ああ、力のない者が流れ着いたなら……その時点で悲惨な人生しか待ってないんだ、この世界は!」


「なるほど、あなたは単に武芸者ではない……迷い込んだ者、漂流者を守りたいと考えているんですね」


「……そういう事だ。だから勝ち上がる! だが、もし俺が負けた時は……お前にそれを頼みたい」


 なるほど、封建社会に流れ着くという事がどれほどの苦難なのか、それは俺には想像出来ないような事だ。俺なんてエリシェが召喚してくれていたから、こうして何も不自由なく旅を続けられる……。


 でも、そうじゃない漂流者に対しては……。


 俺はそんなところには目が向かなかった。街の治安だとかそんなものもある程度貢献して来たつもりだったが、もっと大事な部分というか……。


 困ってる人が、そんな形でこの世界に散らばって居るなんて……。


「あなたは、漂流者の代表、という事なんですね」


「頼めるか?」


「今すぐにハイとは言えないですが……心に留めて置きます」


 素性は知れないかも知れないが、だからこそ町人や貴族からは疎まれる。もし目の前の男の様になんの力もなくこの世界に迷い込んでしまったら……?


 俺は……全く何も出来ないんじゃないか?


 だが、このフェリドという男は違った。自分の武芸を活かし、そして他の漂流者達をも救おうと考えているなんて。俺とは器が違いすぎる……。


 こんなの、俺よりずっといい男じゃんか!


 女王様、もしかしたら女王様にふさわしい男かも知れませんよ、この人。



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