第12話 その7
日の暮れる頃にはエチゴに到着し、女王様の元へと謁見に来ていた。
前回来た時とは違ってスムーズに城内に入り、大広間を抜けた先にある謁見の間へ通された。やはり女王様自らが呼び出した客人なのだ。これくらいは当然だったのか。
人払いをし、「よく来てくれましたね、リョウタ」と声をかけてくれる女王様。
リョウタ
「ええ、私のような者へのご招き、ありがたく存じます」
女王
「……わらわの前では、素のままで良いと言いたいところですが……このところ貴族達の動きがあまりよくありませんので、確かにそのままの言葉遣いであったほうが良いのかも知れませんね」
エリシェ
「女王様、どうして闘神祭をやろうなんて思ったのですか?」
女王
「わらわも考えているのですよ……この世界の事を、悪しき冒険者やサマナー達、これらが元凶であり、根絶する為にはどうすれば良いのかと」
リョウタ
「どういった事をお考えなのですか?」
女王
「闘神祭で優勝するという事は、わらわを后に、そして女王騎士団の団長という名誉が与えられます、これは悪しき意思を持った者なら必ずこの期を逃すような事はないと考えたのです」
エリシェ
「それじゃあ……その、悪しき意思を持つ人を集める為に闘神祭をやるって事なんですか?!」
女王
「わらわはこの闘神祭が好きではありません……貴族達の派閥というものがより強固になってしまうようで……」
リョウタ
「それじゃあ、どうして行うことを決めたんですか?」
女王
「私が決めた訳ではありません、昔からのしきたりで近年中に行う予定だったのを繰り上げたのです」
リョウタ
「でも、その、私には女王騎士等という身分は大きすぎますし……全国から集まる猛者に勝てるかどうかも、確信というものはありませんよ?」
女王
「リョウタに勝てるような相手であれば……わらわも納得出来る気がするのですが、参加して貰えませんか?」
リョウタ
「私で良ければ……参加はします」
女王
「ああ、良かった……その返事が聞けただけで……」
エリシェ
「リョウタさん……?」
リョウタ
「ん? あ、でも勝っても后にするって事は出来ません」
女王
「ええ?! そんな、……もしかしてあなた達はもう恋仲なのですか」
リョウタ
「ええ、まあその通りです」
こんな女王様に向かってエリシェとの仲の事を公然と宣言して良いものだろうか……? と、エリシェの方へ顔を向けると、照れた顔のまま、なんだか微妙な顔をしている。
さっきの、勝ったら后になるというのはもしかしたら撤回しようもない事実なのか? エリシェの表情を見る限り、今の選択は間違ってない。つまり、どうしても結婚するという事実は変わらないのだろう。だとしたら、本当にとんでもない事を決めてしまう事になるぞ?!
エリシェ
「女王様、もし結婚がイヤだというのなら代理人を女王として立ててみてはどうですか?」
リョウタ
「代理人? 少し事情に疎いもので……すみませんがその代理人というのは……?」
エリシェ
「そうですね、まず、騎士団長という事以上に女王様の元へ婿入りする事は、これ以上ない程の名誉なんですよ。それを蹴るような真似は女王様の名を汚す事になりますので、それが認められる筈がないのです」
リョウタ
「そうでしたか……、それで代理人というのは?」
エリシェ
「代理人というのは貢献度の高い貴族が武勇に優れている訳ではないので、代わりに闘神祭で戦う人間の事を代理人と呼びます。貴族達が立てる代理人についてはどうしようもありませんね……」
リョウタ
「私をそんな大役に?! なんという責任重大な……」
女王
「わらわの婿になってくれれば一番なのですが……それが叶わない以上は代理人にくらいはなって貰いますよ」
リョウタ
「人の為に戦うのは……良いですけど、これは結婚なんていう大事をこんな風に決めるなんて事……」
他人の結婚を決める戦いだなんて、ちょっと重すぎないか? しかも女王様だなんてさ……。だが、話の落しどころが見えなくなってしまう。これ以上はもう妥協出来ないのだろう。
アルカナサバイバル――闘神祭――
女王様の結婚を賭けた戦い。これで全国各地に散らばっているであろうダークサマナー達からノームの力を取り上げる事に成功すれば、確かに大きな戦果ではあるが。
だが、俺が負けたら結婚が決まってしまうという女王様の事を思うと複雑な気分になってしまう。とは言え、なんだかんだ勝つ事が出来れば丸く収まるというのはお約束なのかね。




